大阪市における職員・職員組合バッシングに抗議し、職員の政治活動の自由・労働基本権の保障を求める決議

2012/11/10

     大阪市における職員・職員組合バッシングに抗議し、職員の政治活動の自由・労働基本権の保障を求める決議
    
橋下徹市長は、就任した2011年11月から、「庁舎内での政治活動はいっさい認めない」、「組合事務所は庁舎内から出て行ってもらう」、「ギリシャを見て下さい。公務員、公務員組合をのさばらしておくと国が破綻する」と繰り返し述べて、市職員や職員組合が政治的な発言をすることを攻撃を加えた。翌2012年2月9日には、市長選挙への市当局・市職員の関与を調査した「『行政と政治の分離』についての見解」を明らかにすると、これと並行して、野村修也・市特別顧問に委託して、同月10日から、「踏み絵」・「赤狩り」まがいの職員アンケートを強行した。
 大阪市は、1月18日には、労働組合がロッカーや印刷機等を保管しているスペースの使用許可(行政財産の目的外利用の許可)を一方的に取り消し、各組合から市役所地下の組合事務所の使用についての申請を許可せず、各組合に明渡しを迫った。また、職員の給与削減を打ち出す一方、職員を相対評価による競争と職務命令による恫喝で管理し、民営化等によるリストラや賃金の引き下げを容易にする職員基本条例案を市議会に提出し、可決成立させた。さらに、職員が規制される「政治的行為」の範囲を国家公務員並みに拡大する「職員の政治的行為の制限に関する条例」や、管理運営事項(地方公務員法55条3項)について意見交換すら禁止し、当局が一方的に職員組合等の活動に介入する権限を付与し、便宜供与を全面的に否定する「労使関係に関する条例」を市議会に提出し、可決成立させた。
 これら一連の政策に共通するのは、橋下市長自身の推進しようとする政策への異論を許さない環境を市役所内外で構築しようとする姿勢である。これは、住民との共同によって、住民の福祉の増進するという地方公共団体の本来の役割を果たさせるべく活動する職員組合等の活動に打撃を与え、住民との分断を図ろうとするものである。しかし、職員の思想・信条の自由を蹂躙し、政治活動の自由を過度に制約し、労働基本権を剥奪することは、到底許されない。これら一連の政策に対し、日本労働弁護団をはじめとする法律家団体や労働団体がこぞって批判し、大阪府労働委員会が思想調査というべき職員アンケートについて不当労働行為であるとして中止を勧告したのも、当然のことである。
 よって、日本労働弁護団は、大阪市及び橋下市長に対し、このような人権侵害・不当労働行為に抗議するとともに、職員基本条例、職員の政治的行為の制限に関する条例、労使関係に関する条例等の条例を廃止し、職員の政治活動の自由や労働基本権が保障される市役所づくりを通じて住民の福祉の増進するという地方公共団体及び首長としての本来の役割を発揮することを求めるものである。
                          2012年11月10日  日本労働弁護団第56回全国総会