公契約法及び公契約条例の制定を求める決議
2012/11/10
公契約法及び公契約条例の制定を求める決議
近年我が国では、国・地方自治体を問わず、厳しい財政状況を背景に、歳出削減の観点から、一般競争入札を原則とする入札制度の改革や、多様な公共サービスについての外注化が広く行われてきた。そして、行き過ぎた歳出削減要請から、一般競争入札でのダンピングが広がり、公共工事や公共サービスに従事する労働者の低賃金・労働条件の劣悪化や、公共サービスの質や安全への懸念が指摘されている。
このような中で、近時、野田市・川崎市・多摩市・相模原市などで相次いで公契約条例が制定され、さらにこれに続き全国各地で、公契約条例制定に向けた運動が進められている。
このような公契約条例の制定は、労働者の賃金水準の向上による貧困・格差の解消、官製ワーキングプアの解消だけでなく、自治体の発注する業務に従事する労働者が低賃金であることにより生じる公共サービスの質の劣化を防いで、市民生活を守る重要な意義がある。特に、東日本大震災からの復興のため、多くの公契約が締結されている。復興事業に尽力する労働者が、低賃金など劣悪な労働条件の下での就労を強いられるのは許されず、被災地での公契約条例制定による規制が強く期待される。
また、公契約規制の目的設定によって、不当労働行為を行ったり、労働基準法などに違反した事業者(使用者)を公契約から排除することで、不当労働行為、長時間労働、過労死抑止など、様々な労働法規違反を抑制する労働者保護の社会政策も実現できる。
このような公契約に対する規制として、1949年にILOで「公契約における労働条項に関する条約」(第94号)が採択されている。この条約は、人件費が公契約入札企業の間で競争の材料となっている状況を排除するために制定され、すべての入札者に対して最低限の基準を守ることを義務づけるとともに、公契約により賃金・労働条件の引き下げ圧力がかからないよう公契約に基準条項を盛り込むことを内容としている。既に世界で50カ国以上がこの条例を批准しているが、我が国は同条約に未だ批准していない。国は、一日も早くこのILO94号条約を批准したうえ、公契約法を制定することで、全国的な公契約規制を実現することが必要である。
日本労働弁護団は、このような重要な社会的意義を有する公契約条例制定に向けて、全国各地で、労働団体のみならず、弁護士会など多様な運動体と連携を強め、一層積極的な取り組みをすすめるとともに、国に対しては、ILO94号条約を批准し公契約法の制定を求める取り組みを行う。
2012年11月10日 日本労働弁護団第56回全国総会