有期労働契約を規制し、非正規労働者の地位・労働条件の改善を!(第55回日本労働弁護団総会決議)

2011/11/12

日本労働弁護団は、有期労働契約について、昨年の総会で「有期労働契約の法規制を求める決議-雇用の安定と均等待遇実現のために-」を決議し、①有期労働契約締結事由の規制(入り口規制)、②無期契約労働者・有期契約労働者間における均等待遇の実現、③有期労働契約の利用可能期間制限の導入と違反の場合の無期雇用へのみなし規定、④判例上確立している雇止法理の法文化の4点について一刻も早い法制化を求めた。また、日本労働弁護団は、労政審において有期労働契約に関する審議が始まるに際し、「労働者保護の有期労働契約法制の見直しを求める意見書」を発表し、労政審が「有期労働契約の不合理・不適正な利用を防止する」との立場にたち、真に有期契約労働者の労働条件の向上を図る方向での建議をなすように求めた。

2011年8月3日、労政審は、「有期労働契約に関する議論の中間的な整理」を発表したが、その内容は、労働者側、使用者側のそれぞれの主張を併記したものであり、有期契約労働者の雇用安定に向けた内容となっていない。また、パート労働法についても、2011年9月15日「今後のパートタイム労働対策に関する研究会」による報告書が発表され、これを受けて、労政審が開催され、現在、審議が続いている。

2008年秋、いわゆるリーマンショックが起き、非正規労働者が大量に職を失った。さらに、2011年3月11日に起きた東北地方太平洋沖地震によって生じた景気悪化の際も、真っ先に雇用を打ち切られたのは非正規労働者であった。

本来労働契約は期間の定めのない契約が原則であり、有期労働契約は有期であることが必要な労働に限り、認められるべき雇用形態である。雇用調整弁として利用したり、賃金の抑制のために利用したりすることはあってはならない。ところが、現状は、有期労働契約を悪用し、不安定な雇用状態や労働条件が不当に低い状態が生じている。そして、それに対し何らの規制も存在していない。

有期労働契約は、フルタイム、派遣、パートなど、非正規雇用の形態を問わない横断的かつ根本的な問題であり、非正規労働者の安定した雇用の確保、労働条件の改善を実現するためには、有期労働契約に対する規制は不可避なものである。

日本労働弁護団は、有期労働契約の悪用を許さず、冒頭で示した4点の法制化を強く求め、有期労働契約の規制を実現し、有期契約労働者の雇用の安定と労働条件改善を図るものである。また、併せて派遣法改正の早期実現にも取り組む。

日本労働弁護団は、非正規雇用問題の抜本的解決を目指し、非正規労働者の労働条件改善のために、引き続き全力を尽くすものである。

                     2011年11月12日 第55回日本労働弁護団総会