派遣規制の更なる緩和に反対し、派遣規制の一層の強化を求める決議
2007/11/10
派遣規制の更なる緩和に反対し、派遣規制の一層の強化を求める決議
- 労働者派遣制度の在り方に関する議論が熱を帯びている。
日本経団連は、本年6月29日に発表した「2007年度日本経団連規制改革要望」の中で、派遣禁止業務の解禁、派遣受入期間の制限のない26業務の拡大、派遣労働者への雇用契約申込義務の撤廃、派遣可能期間の制限の撤廃、事前面接の解禁、派遣と請負の事業区分に関する基準の見直しなど11項目の規制改革を求めている。政府の規制改革会議も、5月29日、再チャレンジワーキンググループ労働タスクフォースの意見書を公表し、その中で、派遣期間の制限撤廃、派遣禁止業務の解禁、派遣と請負との事業区分の見直し、紹介予定派遣の期間延長と事前面接の解禁などを提言している。
他方、各労働団体は、派遣規制の抜本的見直しを求めている。 - 規制改革を求める側は、派遣労働は“良好な雇用機会の提供”、“働き方の選択肢の多様化”など労働者側のニーズに適うものと主張する。
しかし、多くの派遣労働者は、好んで派遣という働き方を選択しているのではない。正社員への採用・登用の途を閉ざされ、半ば希望を失ったまま、派遣という働き方を強いられている。しかも、正社員との格差は放置されたままであり、年収200万円未満の派遣労働者の割合は50パーセントを超えている。
さらに、スポット派遣と呼ばれる日雇労働が急速に拡大している。明日の仕事の保証がない、その日を生きていくことさえやっとというネットカフェ難民に象徴される若年・中年労働者が、大都市ばかりでなく地方でも増加している。
専門能力を活用できる新しい働き方であったはずの労働者派遣は、今や、労働者とその家族の生活を破壊している。派遣規制の緩和が、この状態を増々加速させることは明らかである。 - 弁護団は、前回の法改正が議論された際、派遣期間、対象業務の緩和は、派遣労働が常用雇用の代替とならないようにするという労働者派遣法の趣旨をないがしろにするものであり、常用雇用正社員のリストラを一層促進させ、派遣労働者の雇用や労働条件を悪化させるものであることを指摘した(03年1月23日声明)。状況は我々が危惧したとおり、さらには予測を越えて深刻化している。
- 今こそ派遣規制の在り方が抜本的に見直されなければならない。
派遣労働者と正社員との格差を解消するため均等待遇の実現を追求し、派遣先における派遣労働者の正社員化の拡大、派遣可能期間の上限規制の強化など派遣労働者の雇用不安を解消する法整備を進め、常用代替の防止の趣旨を徹底し、対象職種や導入事由の厳格化、登録派遣の原則禁止など派遣規制のより一層の強化を求めるものである。
2007年11月10日
日本労働弁護団 第51回全国総会