国際労働基準に合致した公務員制度改革を求め、公務員労働者の雇用・労働条件の引下げに反対する決議
2005/11/5
国際労働基準に合致した公務員制度改革を求め、
公務員労働者の雇用・労働条件の引下げに反対する決議
- 政府は、今年6月21日に公表した「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2005」(“骨太の方針2005”)において、平成18年度までの2年間における最重要政策課題の1つとして“小さくて効率的な政府”の実現を掲げ、そのために必要な変革として、市場化テストの本格的導入等による公務の徹底的な“民間開放”、民間企業における賃金体系改革の動向を踏まえた給与体系の見直し、定員の純減目標など明確な目標を掲げての公務員の総人件費削減を行うものとした。9月28日には、この方針に基づき、平成18年度以降の公務員総人件費削減を図るため、人件費改革の基本方針を今秋中にも策定し、その中に、民間委託等による行政合理化、公務員給与への地場賃金反映のための官民給与比較方法の検討、公務員の定員純減といった諸措置を盛り込むとしている。既に、公務の独立行政法人化、指定管理者制度が推進され、増大する非常勤公務員の権利はないがしろにされたままである。
公務員制度改革大綱(2001年12月25日閣議決定)に基づく公務員制度「改革」関連法案の国会上程は、昨年12月、当面見送られることとなっていたが、小泉構造改革の総仕上げという位置づけのもと、公務員制度の根幹に関わる諸政策が装いを変えて打ち出されようとしている。国民に安心・安全な生活を保障すべき公務サービスは危機にさらされているといっても過言ではない。また、公務員の雇用・労働条件の内容が民間に及ぼす大きな影響力を看過するわけにはいかない。 - 政府は、公務員の雇用・労働条件を大きく左右することになるこの重要な政策方針を、公務員制度改革大綱策定時におけるのと同様、公務員労働者の意見を十分聴取することなく一方的に決定している。しかも、政府は、公務員労働者の労働基本権については、現行の制約を維持するという方針を公式には変えておらず、むしろ逆に、地方公務員について、その政治活動の禁止に刑罰まで導入するという地方公務員法の「改正」まで企図している。公務員の労働基本権、政治活動の自由の軽視には甚だしいものがある。
- 公務員制度の抜本的改革を図るのであれば、何よりもまず、ILOで確立されている国際労働基準に沿って、公務員の労働基本権を回復し、公務労働者が賃金・労働条件の決定過程に参加できる労使関係を確立することこそ先決である。対等な立場での労使協議を重ねることにより、真に国民に必要な公務員制度の改革とは何かを確認できるはずである。
私たち日本労働弁護団は、2004年2月2日、「公務員制度の改革に関する意見書」を公表し、真に国民本位の行政の実現を図る公務員制度の改革を行うには、憲法と国際労働基準であるILO条約の保障している公務員労働者の労働基本権を回復して近代的労使関係を確立する改革でなければならず、公務員労働者の労働組合との交渉と協議の上で行われなければその実現はあり得ないことを指摘した。
今回、給与改革、定数削減を中心にした新たな公務員制度「改革」が議論される状況において、改めて、公務員労働者の労働基本権を保障することを前提とした真の改革が実現されるよう強く訴えるとともに、公務員労働者の雇用・労働条件の一方的な引下げに強く反対するものである。
2005年11月5日
日本労働弁護団 第49回全国総会