働き方改革関連法案の採決強行に対する抗議声明
2018/7/3
働き方改革関連法案の採決強行に対する抗議声明
2018年7月3日
日本労働弁護団
幹事長 棗 一郎
本年6月28日の参議院厚生労働委員会において、政府・与党は、日本のほとんどの労働組合と組合員及び過労死を考える家族の会などの市民団体をはじめとする多くの国民が反対し、日本弁護士連合会や過労死弁護団、日本労働弁護団など法律家団体の多くが反対する中で、『高度プロフェッショナル(高プロ)』制度創設を含む働き方改革関連法案の採決を強行し、同月29日の参議院本会議において同法案を可決成立させた。
国会の会期を延長し、もっと十分な審議時間があったにもかかわらず、法案の問題点や疑問点が多数残されたままで審議を尽くすことなく、野党の多くが反対するのを押し切って採決を強行したことに対して強い怒りをもって抗議する。高プロ制度を望む労働組合や労働者など誰もいないのである。
高プロ制度は、労働基準法に基づく労働時間規制を全て外してしまい、使用者が対象労働者に対して際限のない長時間労働をさせることが可能となるという意味で、労働基準法による労働者保護規制の破壊であり、わが国で働く労働者に取り返しのつかない弊害をもたらすものである。改正法は政府与党が説明するような「労働者が自らの意思で柔軟な働き方を選択できる」制度ではなく、「時間ではなく成果で評価され賃金が支払われる」制度でもない。だからこそ、過労死を考える家族の会や私たち法律家団体は、高プロ制度は“長時間労働を助長し、過労死を増加させる危険が高い”と批判し、“定額の固定賃金で働かせ放題”になると批判してきた。政府が働き方改革関連法案で掲げる長時間労働の是正の目的と高プロ制度の本質は完全に矛盾するものであり、このような“労働者の命と健康を犠牲にする”法律は断じて作ってはならない。
日本労働弁護団は、労働基準法の労働時間規制を破壊する改正法に断固として反対し、政府与党に対し、速やかに高プロ制度を創設する法律を撤回することを求める。それとともに、全ての労働組合と労働者に対して、それぞれの職場で働く労働者の命と健康を守るために、高プロ制度の導入に反対し、この制度を使わないまま廃止させることを強く呼び掛ける。今後、もし、高プロ制度を導入する企業があるならば、当該企業は『ブラック企業』の烙印を押され、社会的な批判・非難の対象となることを免れ得ないであろう。