企業再生支援機構によるJALの労働組合への支配介入に抗議する
2010/11/29
企業再生支援機構によるJALの労働組合への支配介入に抗議する
1 更生会社株式会社日本航空インターナショナル(以下、「日本航空」という)の客室乗務員を組織する日本航空キャビンクルーユニオン(以下、「CCU」という)は、日本航空が本年11月15日付で発表した同社の客室乗務員に対する整理解雇の決定に関連して、その撤回を求めて、11月22日まで争議権確立に向けたスト権投票を行い、圧倒的多数の賛成で争議権を確立した。一方、日本航空の運航乗務員を組織する日本航空乗員組合(以下、「JFU」という)は、11月26日まで同じく整理解雇の撤回を求めてスト権投票を行っていたが、同月22日をもって投票を中止した。
2 このスト権の確立に関連して、2010年11月16日、CCU、JFUとの事務折衝において、株式会社企業再生支援機構(以下、「支援機構」という)の担当者は、争議権の確立は労働者の権利として尊重すると発言する一方で、争議権が確立され争議権が行使された場合には、運航が停止して事業価値が毀損するリスクが極めて高くなること、更生計画(2010年11月30日をもって認可される予定)が認可された後、争議権が行使されるリスクが顕在化している場合には公的資金をリスクに晒すことはできないことを理由に、争議権が確立された場合、それが撤回されない限り、更生計画案で予定されている3500億円の出資はしないと発言した旨報道されている。
3 支援機構は、日本航空他2社の管財人の立場にあり、会社更生法72条に定められた「更生会社の事業の経営並びに財産の管理及び処分をする権利」を専有している。日本航空の会社更生手続が、いわゆるDIP型会社更生手続にて運用されていても、管財人が使用者たる立場にあると言うべきである。したがって、支援機構及びその担当者は、使用者として労働組合法の遵守が求められている。
4 ところが、上記支援機構担当者の発言は、労働組合が争議権を確立する手続を進めている中、支援機構が3500億円を出資しないことを示唆することで、労働組合の争議権確立手続に不当に支配介入する意図をもって行われたものと言わざるを得ない。争議権は、憲法28条で保障された労働者の基本的人権であり、争議権を行使するか否かは、組合員が自らの自由意思に基づき自主的に決定すべき事柄である。支援機構が日本航空の管財人であり、日本航空の労働者の雇用その他の労働条件を実質的に左右しうる権限を有していることからすれば、上記発言は、労働組合の意思形成すなわち団結自治に違法に介入する不当労働行為(労働組合法第7条第3号)に該当すると言わざるを得ない。また、支援機構は、自ら行動規範を発表しているが、その中には「コンプライアンス遵守の徹底」を挙げている。会社更生手続においても、労働基本権が尊重されなければならないことは当然であり、上記発言は自らの行動規範にも反するものである。
5 われわれは、支援機構に対し、上記発言に抗議するとともに、今後、憲法及び労働組合法で保障された労働者・労働組合の権利を侵害する行為を繰り返さないよう強く求めるものである。
以上
2010年11月29日
日本労働弁護団
幹事長 水 口 洋 介