(意見書)(意見書)労働訴訟における敗訴者負担についての意見書(その2)
2003/6/20
司法制度改革推進本部司法アクセス検討会
座 長 高 橋 宏 志 殿
司法制度改革推進本部労働検討会
座 長 菅 野 和 夫 殿
労働訴訟における敗訴者負担についての意見書(その2)
2003年5月30日
日 本 労 働 弁 護 団
幹事長 鴨 田 哲 郎
当弁護団は、標記の件に関し、本年3月7日付で意見書を貴検討会に提出したところであるが、同意見書で指摘した「労働訴訟において勝敗の見通しは極めて立てにくい」(1の第4)との点及び「法創造機能が阻害される」(2の第2段落)との点につき、具体的な事実を摘示して意見を補充する。
第1 勝敗見通しの立てにくさ-同一事件についての判断の変転の例
1 就業規則改訂・制定による労働条件の不利益変更事件-最高裁係属事件
〈変転する理由〉
不利益変更事件は、高度の必要性と変更の合理性の有無により判断するとの判例法理が定着しているが、裁判所はその合理性の有無を、「就業規則の変更によって労働者が被る不利益の程度、使用者側の変更の必要性の内容・程度、変更後の就業規則の内容自体の相当性、代償措置その他関連する他の労働条件の改善状況、労働組合との交渉の経緯、他の労働組合又は他の従業員の対応、同種事項に関する我が国社会における一般的状況等を総合考慮して判断」(後記⑦第四銀行事件最高裁判決他)するとしており、「総合考慮」=個々の裁判官の「価値判断」次第で結論が変わることによる。
① 大曲市農協事件(合併に伴う退職金切下げ事件)
事案 |
1973年8月1日に7農協が合併し、74年3月29日に新規程発表(73年8月1日に遡及して適用)。新規程により退職金減額。例えばAは、1978年提訴(1172万円のところ178万円減) |
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労働者側敗訴 秋田地裁大曲支部 1982.8.31 |
勝訴 仙台高裁秋田支部 1984.11.28 |
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敗訴 最高裁 1988.2.16 |
② みちのく銀行事件(高年齢労働者の賃金減額)
事案 |
1986年に専任職制度導入し、手当等カット(第1次変更)。87年、専任職の業績給50%カットなど(第2次変更)。88年提訴 |
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第2次変更のみ無効。537~32万円認容 |
敗訴 仙台高裁 1996.4.24 |
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勝訴 破棄差戻(全体として無効。金額算定のための差し戻し) |
③ 羽後銀行事件(時間外賃金相当額請求事件)
事案 |
1988年銀行法改訂による完全週休2日制移行につき、89年1月31日、平日10分、特定日60分の所定時間延長を就規変更。翌日実施。89年提訴 |
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労働者側敗訴 秋田地裁 1992.7.24 |
29人4年分2 |