労働審判制の積極的活用を訴えるアピール
2005/11/5
アピール – 労働審判制の積極的活用を訴えるアピール
いよいよ来年(2006年)4月1日から、労働審判制がスタートする。
労働審判制は、司法改革推進本部・労働検討会での議論を踏まえて立法化されたものであるが、労働裁判改革のひとつとして労働参審制の実現を求めたわれわれの立場からすれば、妥協の産物として産み出された側面を否定することはできない。
しかし、労働審判制は、(1)3回以内の期日で結論が出され(調停を試みるとともに、調停が成立しない場合には審判が下される)、(2)職業裁判官とともに、労使から選出された非職業的な審判員が手続、判断に関与するという、これまでのわが国の裁判制度には見られない極めて大きな特徴を有する制度である。また、(3)調停が成立しない場合、紛争当事者を拘束する審判が下されることになっている(当事者が異議を出せば、審判の効力は失われるが、その場合には自動的に通常訴訟に移行するので、審判を受容する確率は相当に高くなると期待される)。すなわち、労働審判制には、単なる話し合いのあっせんの場に過ぎない労働局のあっせんなどのADR(裁判外紛争処理制度)とは大きく異なり、適正かつ迅速な紛争解決機能が付与されている。
さらに、解雇事案について当事者が望む場合には金銭解決の審判を出すことも可能と解されているなど、司法判断と異なり、権利関係を踏まえたうえで労使間の実情に即した柔軟な解決を可能とするものである。 雇用や労働条件を破壊するリストラがますます加速し、派遣労働者など非正規雇用労働者の労働問題が多発する昨今、労働審判制は、、極めて迅速かつ労使関係の実情に即した適正な内容で個別的労使紛争を解決する機能を発揮するものと大きく期待されるものである。
このような労働審判制への期待を絵に画いた餅に終わらせず、実効性ある労使紛争の解決手段として定着させるとともに、真に労働者の権利擁護に資する制度とするために、弁護団員はもとより、労働相談に取り組む労働組合が労働審判制を活用するよう訴える。
2005年11月5日
日本労働弁護団 第49回全国総会