雇用機会均等法等の実効性ある改正を求める決議

2005/11/5

雇用機会均等法等の実効性ある改正を求める決議

86年4月に施行された均等法は、施行後20年を迎えようとしている。しかし、現状は、男女平等の実現にはほど遠く、パート・派遣など非典型女性労働者の増加やコース別・複線型雇用管理などにより、逆に、差別は拡大すらしている。また、妊娠・出産を理由にした不利益扱いも多発している。性差別は重大な人権侵害である。当弁護団は、次期通常国会において、以下の内容を含む実効ある均等法たりうる法改正が行われることを強く求める。

  1. 均等法の理念に「仕事と生活の調和」を規定すること
    均等法において求める平等は、男女とも「仕事と生活の調和」の上での平等である。その旨を基本的理念(2条)に規定し、均等法解釈の基本とすべきである。
  2. 実効ある間接性差別禁止規定を導入すること
    改正問題審議中の厚労省労政審雇用機会均等分科会では、何が差別かの「予見可能性」を高めるため「間接差別を原則禁止しつつ例外を設けるポジティブ・リスト方式」や「間接差別として禁止されるものを制限列挙するネガティブ・リスト方式」が示されるなど、限定化・固定化した間接差別禁止規定を導入しようとの動きが強まっている。
    しかし、これでは、間接差別禁止規定は常に現実の後追いにすぎないものとなり、また、枠外とされた差別を法的に許容する有害な規定となる。間接差別禁止の意味は、その時代・状況によって様々な形で発生する一方の性(女性)にとっての不合理な障害について、それを見い出し除去していくことにある。間接差別禁止の対象や適用を限定すべきではない。
    間接差別禁止は、今後の差別是正の重要な要の一つである。外国からの批判を免れるための形だけの導入は差別是正に有害であり、絶対に許されない。
  3. 妊娠・出産及びそれに起因する症状を理由とする不利益取り扱いを禁止すること
    妊娠・出産は心身の変化を生じ、一時的な就労不能(出産休暇)や「就業能力低下」(ペースダウン等)を伴うことも多い。しかし、妊娠・出産は社会的機能でもあり、また、それに起因した症状の保護も図られて初めて、女性にとっての実質的な平等が可能となる。妊娠・出産を理由とする不利益取り扱いも含め禁止すべきである。
    併せて、ILO母性保護(103 号)条約の批准とそのための国内法整備が行われなければならない。
  4. 包括的差別禁止規定を新設すること
    現行法は、「仕事の与え方」や「雇止め」等の差別が対象となっていない。不合理な性差別が禁止されることは確立した判例であり、包括的な禁止規定を設けるべきである。
  5. ポジティブ・アクションを義務化すること
    行動計画の作成義務など、ポジティブ・アクションの義務規定を設けるべきである。
  6. 指針の「雇用管理区分」を廃止すること
    「雇用管理区分」に法的正当性はなく、差別の温床となってきた。廃止すべきである。
  7. その他
    男女双方への差別禁止、セクシュアル・ハラスメントの禁止規定化、実効性ある救済のための諸制度、同一価値労働同一賃金規定等、実効ある改正が行われるべきである。

2005年11月5日

日本労働弁護団 第49回全国総会