小学校等休業対応助成金の個人申請の拡充を求める声明

2022/1/19

小学校等休業対応助成金の個人申請の拡充を求める声明

2022年1月19日
日本労働弁護団
幹事長 水野英樹

 新型コロナウィルスの感染が再度拡大し、第6波が到来し、10代以下の感染者数が今までになく急増している。これにより、小学校等が休校し、その保護者が休業せざるを得ない事態が生じている。
 その場合に重要になるのが、小学校等休業対応助成金である。
 当初、小学校等休業対応助成金は、2020年2月27日から3月31日までの間に休暇等を取得した保護者を対象としていたが、その後も新型コロナウィルスの感染拡大がとどまらなかったため、終了していた時期をはさみ、2022年3月31日まで延長されている。

 保育園や小学校が休園・休校した場合や、子どもが新型コロナウィルスに感染した場合、その保護者は仕事を休んで子どもの世話をせざるを得ない。一方、年次有給休暇には限りがあり、長期間仕事を休むことによる経済的負担は非常に大きい。
 小学校等休業対応助成金は、その経済的負担を一定程度補填するものであり、このような取り組みは労働者の生活支援の面から非常に重要である。

 しかし、小学校等休業対応助成金は、対象期間内に、年次有給休暇とは別に、以下のいずれかの有給休暇を取得しなければ、給付を受けることができない。

ア 新型コロナウィルス感染症に関する対応として臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇

イ 新型コロナウィルス感染症に感染した又は風邪症状など感染したおそれのある、小学校等に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇

 すなわち、小学校等休業対応助成金が基本的に想定しているのは、使用者が上記特別有給休暇制度を創設し、それを労働者に取得させ、この有給休暇の補填として使用者が小学校等休業対応助成金の給付を受けるというものである。
 しかし、使用者が特別有給休暇制度を創設しなかった場合には、労働者が経済的負担を負ってしまうため、例外的に個人申請を行うこともできることとされている。その要件は次のとおりである。

① 労働者が労働局に小学校休業等対応助成金の相談を行い、労働局が事業主に助成金活用・有給の休暇付与の働きかけを行ったものの、事業主がそれに応じなかったこと

② 新型コロナウィルス感染症への対応としての小学校等の臨時休業等のために仕事を休み、その休んだ日時について、賃金が支払われていないこと

③ 休業支援金・給付金の申請にあたって、当該労働者を休業させたとする扱いとすることを事業主が了承すること。また、休業支援金・給付金の申請にあたって、事業主記載欄の記入や当該労働者への証明書類の提供について、事業主の協力が得られること

 つまり、労働者が個人申請を行うためには、労働局に相談に行く必要がある。そして、労働局から使用者に働きかけを受けたにもかかわらず、特別有給休暇を取得させないと回答した使用者に対し、申請書類の事業主証明欄の記入をしてもらい、証明書類を提供してもらわないといけない。また、助成金の給付を受けるまで、休業した期間について年次有給休暇を使うことができず、その期間の経済的負担を引き受けなければならない。
 率直に言って、この個人申請を行うことは労働者にとって極めて困難であり、それができる労働者は極めて少数であろう。

 小学校等休業対応助成金を実効性のある制度にするためには、迅速かつ容易に支援が届くようにすることが必要である。そのためには、個人申請の要件(上記①~③)を利用可能なように緩和することが求められる。
 まず、労働局に相談に行くことを個人申請の要件とすべきではない(要件①の廃止)。
 また、年次有給休暇を取得したとしても、小学校等休業対応助成金の給付が決定した後に、遡及して年次有給休暇を取得しなかったという扱いにすれば足りることから、②の要件は、「新型コロナウィルス感染症への対応としての小学校等の臨時休業等のために仕事を休み、その休んだ日時について、賃金が支払われていない場合、又は、賃金が支払われないこととなった場合」と変更すべきである。

 ③の要件についても、事業主証明欄の記入以外の方法で給付要件を満たすことを審査できることから、事業主証明欄の記入を要件とすべきではない。たとえば、養育する子の小学校等が休校等したことを証明できる書類、養育する子が新型コロナウィルスに感染したことのわかる診断書等、その期間の出勤状況の分かる出勤簿やタイムカード等でも、給付要件の審査は可能である。事業主証明欄の記入の協力を得られない場合には、それらの書類でも足りるという扱いをすべきである。

 上述のとおり、保育園や小学校に通う子がいる労働者にとって、小学校等休業対応助成金の給付を受けることはもとより非常に重要である。新型コロナウィルス感染の第6波が到来し、10代以下の感染者数が今までになく急増している。東京都では2022年1月18日に10代以下の感染者数が過去最多を記録した。同日時点で、長野県飯田市では全小中学校28校中11校が休校しており、沖縄県豊見城市及び和歌山県岩出市では全小学校が休校していると報道されている。小学校等の休校の可能性が高まる現時点では、迅速かつ滞りのない給付がなされるべき要請はますます高い。小学校等休業対応助成金を、真に支援を必要としている人に届く制度にすることが、強く求められている。

以上