新型コロナウィルス感染症対応休業支援金・給付金の抜本的改善を求める声明

2022/2/17

新型コロナウィルス感染症対応休業支援金・給付金の抜本的改善を求める声明

2022年2月17日
日本労働弁護団 幹事長 水野英樹

 

 日本労働弁護団は、本年1月19日、小学校休業等対応助成金の個人申請の拡充を求める声明を発出した。

 この声明は、現在、10代以下の新型コロナウィルス感染者数が今までになく増加し、新型コロナウィルス感染症対応休業支援金・給付金(いわゆる小学校休業等対応助成金の個人申請。以下「休業支援金」という。)の給付を希望している保護者も増加しているにもかかわらず、その要件が労働者にとって非常に厳しいものとなっており、申請ができる労働者は極めて少数にとどまると考えられるため、その要件を緩和することを求めるものである。

 すなわち、休業支援金の要件は、次のとおりである。

① 労働者が労働局に小学校休業等対応助成金の相談を行い、労働局が事業主に助成金活用・有給の休暇付与の働きかけを行ったものの、事業主がそれに応じなかったこと

② 新型コロナウィルス感染症への対応としての小学校等の臨時休業等のために仕事を休み、その休んだ日時について、賃金が支払われていないこと

③ 休業支援金の申請にあたって、当該労働者を休業させたとする扱いとすることを事業主が了承すること。また、休業支援金・給付金の申請にあたって、事業主記載欄の記入や当該労働者への証明書類の提供について、事業主の協力が得られること

  日本労働弁護団は、休業支援金を実効性のある制度にするため、①及び③の要件を廃止し、②の要件を変更すべきであるとの意見を述べた。

 本年2月8日、厚労省が、休業支援金の要件を一部緩和することを発表した。その内容は、次のとおりである。

・ 現在、休業させたことの確認が事業主から得られなければ、休業支援金による個人申請を行えない運用となっているのを改め、労働局はまずは保護者の申請を受け付け、引き続き事業主に休業させたことの確認を行うこととする。

・ 小学校休業等対応助成金や休業支援金の活用について、事業主との相談を経ずに、労働者から労働局に相談することも可能であることを改めて周知する。

 これは、上記③の要件について、労働者が使用者から事業主記載欄の記入や証明書類の提供を受けなければ申請すらできなかったのが、これらがなくとも申請自体は受け付け、申請後に労働局から使用者に休業させたことの確認を行うというものであり、休業支援金の申請時の要件が一部緩和され、実効性のある制度に一歩近づいた。

 しかし、これでは依然として不十分であり、申請すら思いとどまる労働者はなお少なくないと思われるため、さらなる改善が求められる。

 今回の改正で上記③の要件が緩和された後も、労働局から使用者に対し、休業させたことの確認を行うこととなっている。

 これは、上記①の要件により労働局から使用者に対し特別有給休暇[1]を取得させるよう働きかけがあることとも相まって、使用者によっては、特別有休休暇を創設しないということを労働者が公的な機関に告げ口し、そのために公的な機関から注意を受けたと受け取る可能性もあり、労働者はそれをおそれて申請すらできないことになりかねない。
労働者は、継続的に働き続けるために、使用者と円滑な関係を維持すべく、非常に気をつけて行動している。このことに十分配慮して制度を修正すべきである。

 この観点から、要件③は緩和ではなく廃止し、養育する子の小学校等が休校等したことを証明できる書類、養育する子が新型コロナウィルスに感染したことのわかる診断書等、その期間の出勤状況の分かる出勤簿やタイムカード等で、給付要件の審査を行うべきである。
 これに加え、労働局に赴いて申請しなければならないとなると、平日に所定休日のない労働者は、申請のために年次有給休暇を取得しなければならず、すでに休業を強いられている保護者に対し、さらなる負担を強いることになる。
 そのため、オンライン及び郵送による申請も可能にすべきである。

 新型コロナウィルスを理由とする休園や休校、療養は、1週間程度の長期に及ぶことが多い(濃厚接触者の待機期間は、短縮に短縮を重ねてきたが、それでも5日である)。保育園や小学校に通う子がいる労働者にとって、特別有給休暇の取得ないし休業支援金の給付を受けることは非常に重要である。小学校等の休校の可能性が高まる現時点では、迅速かつ滞りのない給付がなされるべき要請はますます高い。また、第6波が収まったとしても、再度第7波、第8波が起き、今後また現在のような事態が起きる可能性は十分にある。

 今回の休業支援金制度の改善は、実効性のある制度に一歩近づけようとするものであるが、それでも微修正にとどまっており、改善の効果は限定的に過ぎる。

 真に支援を必要としている人に届く制度にするためには、本年1月19日声明及び本声明に沿った抜本的な改善が必要である。

[1] 新型コロナウィルス感染症に関する対応として臨時休業等をした小学校等に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇、及び、新型コロナウィルス感染症に感染した又は風邪症状など感染したおそれのある、小学校等に通う子どもの世話を保護者として行うための有給休暇のこと。