正規・非正規の格差是正の実現を ~パート有期法全面施行に際して~

2021/4/21

正規・非正規の格差是正の実現を
~パート有期法全面施行に際して~

2021年4月21日
日本労働弁護団
幹事長 水野英樹

2021年4月1日、短時間労働者及び有期雇用労働者の雇用管理の改善等に関する法律(以下「パート有期法」)が中小企業にも施行されて全面施行となった。

 非正規労働者の全労働者に占める割合は年々増加し、今では約4割に達している。正規労働者と非正規労働者の賃金格差は大きく、年間平均給与額では前者が504万円であるのに対し、後者はわずか179万円である(国税庁平成30年民間給与実態統計調査結果)。生涯賃金の格差が甚大であることは想像に難くない。賃金格差は年金格差の原因ともなり、格差は生涯続くこととなる。非正規に占める女性労働者の割合は約7割である。格差は、男女間の賃金格差をも反映している。

 非正規労働者が増加し、正規労働者との賃金格差が大きい理由のひとつとして、非正規労働者であるがゆえに賃金が低額でもよいという誤った考え方があることを指摘できる。パート有期法は、このような誤った考え方を否定し、差別的な取扱いを禁止し(9条)、不合理な待遇を禁止した(8条)。

 使用者は法を遵守し、速やかに格差是正を実現すべきである。パート有期法8条は、職務内容等が同一である場合に待遇を同一とすることだけではなく、職務内容等に違いがあっても違いに応じて待遇も均衡にすることを求めている。使用者は均衡待遇をも実現すべきである。

 労働者・労働組合も積極的に格差是正を求めることが重要である。パート有期法は、労働者から求めがあった場合には、使用者に待遇差について説明する義務を課した(14条2項)。労働者・労働組合は、この使用者の説明義務を活用し、格差の理由について説明を求め、格差是正を求めることが重要である。労働者・労働組合が声を上げることによってこそ、格差是正が実現できるのである。

 特に労働組合の役割は大きい。労働組合であれば、団体交渉権に基づいて、パート有期法14条2項に限定されることなく、待遇についてさまざまな事項の説明を求めることができる。また、労働者が個人で使用者に説明を求め、格差の是正を求めることはハードルが高い場合も想定されるが、労働組合であれば容易なはずである。格差を是正し、労働者に適正な賃金を支払わせることは労働組合の重要な使命であろう。労働組合には、使用者に対し積極的に格差是正を求めることを期待したい。

 正規・非正規労働者の大きな格差を存続させることは社会に大きなゆがみを生じさせる。日本社会の持続的発展のためにも、非正規労働者の低賃金構造や雇用形態別の雇用差別を是正することは、喫緊の課題である。日本労働弁護団は、格差是正に取り組む労働者・労働組合を全面的に支援することをここに宣言する。