「活かそう!改正労働契約法!!」集会アピール

2013/3/1

          「活かそう!改正労働契約法!!」集会アピール          
                                    
 昨年8月,有期労働契約に関する労働契約法一部改正の法律案が成立した。既に「雇止め法理」の法定化規定は施行され,本年4月1日には,5年を超える有期契約労働者に無期転換権を付与する規定(新18条),有期契約であることを理由とした不合理な差別の禁止の規定(新20条)が施行される。
 この改正法は,これまで日本労働弁護団が繰り返し求めてきた「入口規制」を導入しなかった点など不十分な内容ではあるが,有期契約労働者の雇用の安定と不合理な処遇改善に向けて実践的に活用できる法律である。今後,労働者,労働組合と日本労働弁護団が連携し,改正法の正しい運用と積極的な活用を進めていくことが求められている。
 とりわけ,有期契約であることを理由とした不合理な差別の禁止規定(新20条)は,これまで対応が困難であった有期契約労働者の賃金,通勤手当,食堂の利用など様々な処遇改善に向けて,格差是正のために実践的に活用できる法的根拠となる。この法改正を契機に,各職場の有期契約労働者の処遇を見直し,労働組合が中心となって,待遇改善に向けた取り組みを進める必要がある。
 また,5年を超える有期契約労働者に無期転換権を付与する規定(新18条)の趣旨は,有期契約労働者の雇用の安定を図ることにある。労働者,労働組合としては,かかる法改正の趣旨の趣旨を踏まえて,5年の期間を待たずに,早期に無期雇用へと転換する制度を各職場に設けさせるべく,積極的な取り組みが必要である。
 そして,このような改正法を活用した積極的な取り組みを進める上で必要となるのは,多くが労働組合に加入していない有期契約労働者の組織化である。言うまでもなく,有期契約労働者の地位は不安定であり,未組織労働者が雇い止めによる報復という不安を抱えながら,改正法を活用していくのは,自ずと限界がある。改正法の活用を契機に,有期契約労働者の組織化へ結びつくように,労働組合が取り組みを強める必要がある。
  他方,使用者が新18条の無期転換ルールを避けるために5年到達前に有期契約労働者を雇止めにするとの危険が懸念される。しかし,労働者の雇用の安定を図ろうという改正法の趣旨から,このような雇止めが許されないのは明らかである。かかる脱法的な対応を許さないよう,改正法の正しい理解を広く使用者にも周知徹底し,危惧される弊害を生じさせないように監視と対応を強める必要がある。
 また,新18条2項のいわゆる空白期間の規定を悪用して,就労実態に変化がないにもかかわらず,無期転換申込権の発生を免れる意図をもって派遣や請負形態を偽装しても,通算契約期間の計算上は,同一の使用者の間で労働契約が継続していることになる。労働者,労働組合は,このように空白期間の規定が悪用されないよう,使用者に対して周知徹底していく必要がある。
 以上のとおり,日本労働弁護団としては,労働者,労働組合と連携を密にし,多くの有期契約労働者が労働組合に結集してこの改正法を積極的に活用できるように,有期契約労働者の権利擁護のための活動を進める決意である。
 最後に,有期契約労働者の雇用の安定を真に実現するためには,有期労働契約締結に客観的合理的な理由を要件とする契約締結事由規制(入口規制)の導入が必要不可欠である。われわれは、今後も引き続き,入口規制導入などさらなる実効性ある有期労働契約法制が実現されるよう強く求めていくものである。
2013年3月1日
            日本労働弁護団主催「活かそう!改正労働契約法!!」集会アピール