安倍政権による憲法改悪に反対する声明~平和と労働運動を守るために!
2018/10/25
安倍政権による憲法改悪に反対する声明
~平和と労働運動を守るために!
2018年10月25日
日本労働弁護団
幹事長 棗 一郎
自民党総裁の安倍首相は、臨時国会に自民党の憲法改正案(改憲4項目)を単独で提案し、両院の憲法審査会で議論するとしている。与党公明党や日本維新の会、希望の党など改憲支持野党が審議に応じることになれば、与党と改憲野党の共同で憲法改正原案が可決されることは必至である。そうなれば、来年の7月に行われる参議院議員選挙の前に両議院の3分の2以上の賛成で憲法改正発議、国民投票を強行してくる危険がある。
安倍政権は2014年7月1日の閣議決定により、それまで歴代の自民党内閣が国際法上の集団的自衛権(国連憲章51条)の行使は日本国憲法9条に違反しできないとしてきた憲法解釈を勝手に変更して一部合憲としたうえ、2015年9月には多数の国民の反対の声を押し切って安全保障関連法案を強行採決し、自衛隊が海外で武力行使できる道を開いた。日本国憲法を改正できるのは主権者たる国民だけであり(憲法96条)、国民の承認を得ない一方的な解釈改憲は国民主権を踏みにじる暴挙であった。このような安倍政権にそもそも憲法改正を提案する資格などない。
安倍首相は、現在の憲法9条はそのままにして9条の2を創設し「憲法に自衛隊を明記する」だけであり何も変わらない、「違憲と言われる自衛隊員がかわいそうだ」としている。しかし、何も変わらないなら憲法を改正する必要はないし、自民党改憲案は新たに緊急事態条項も創設するのであるから、「武力攻撃災害」も想定しており、何も変わらないことなどありえない。まして「かわいそうだ改憲」などと情緒的な理由で国のあり方の根幹を規定する憲法を改正せんとするのは立憲主義に対する挑戦である。
今回の自民党改憲案の真の狙いは、9条の2に「前条の規定は、わが国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。」との条項を設けることにより、戦争の放棄、戦力の不保持と交戦権の否認を規定する憲法9条1項2項の空文化を狙うものである。すなわち、自衛隊の憲法明記は、集団的自衛権の行使が違憲ではないことを憲法上明確にする趣旨であり、これまで国是としてきた専守防衛、非核三原則などの変更にもつながっていくものである。このような憲法改正を許せば、日本が“戦争をする国”すなわち軍事大国への道を突き進むことになる。
ひとたび戦争が始まれば、真っ先に多大な犠牲を強いられるのは労働者である。自衛隊員はもとより、医療、土木建築工事又は輸送を業とする者や国・地方公共団体、指定公共機関として各種独立行政法人、日本銀行、日本放送協会、日本郵便、放送業者、鉄道業者、電気通信事業者、旅客・貨物運送事業者等の労働者、自衛隊の基地労働者、さらには報道や教育に従事する労働者などあらゆる職場で働く労働者が戦争への協力を強制されることになり、生命・身体の安全を犠牲にされ、基本的人権が侵害される。
わが国の戦前の歴史が物語っているように、かつて日本の労働運動は、戦争遂行のための国家総動員体制の下で、労資一体となって「皇国」に報いるとする産業報国運動と労働組合は相いれないという政府の圧力により解体し消滅させられた。1940年、多くの労働組合が解散・消滅して大日本産業報国会に統合させられ、日本の労働運動は壊滅したのである。そして、日本は太平洋戦争へと突入していった。今回の憲法改悪を許せば、この悲惨な歴史を繰り返すことになりかねない。
戦後の労働運動は、「平和なくして労働運動なし。」というスローガンを掲げて再出発した。改めて我々は歴史の教訓に深く学び、二度と戦争の惨禍を繰り返さないために、そして、働く者にとってかけがえのない労働運動を守るために、安倍政権による憲法改悪を断じて容認することはできない。
日本労働弁護団は安倍政権による憲法改悪に断固反対するとともに、日本の全ての労働組合と労働者に対し、憲法改悪を阻止する運動に立ち上がることを呼びかける。平和と民主主義を守る重要な砦は労働運動である。日本労働弁護団は全ての労働者、労働組合と団結し、平和を求める市民運動とも連帯して、安倍政権による憲法改悪を阻止する運動に全力で取り組むことをここに宣言する。
以上