【全発言要旨】「高プロ・裁量労働制の規制緩和に反対し、真に実効性のある長時間労働の規制を求める院内集会」
2017/2/11
2017年2月10日(金)、「高プロ・裁量労働制の規制緩和に反対し、真に実効性のある長時間労働の規制を求める院内集会」を衆議院第一議員会館にて開催しました。
300人収容の会場でしたが、会場に入りきらない350名を超える参加者の方々にお集まりいただきました。かなり遠方からお越しいただいた方もいらっしゃいます。お集まりいただきました皆さま、ご参加いただき発言を下さいました国会議員の皆さま、誠にありがとうございます。深く御礼申し上げます。
また、会場に入りきれなかった方や、資料が十分に行き届かずご不便ご面倒をおかけしましたことを深くお詫び致します。
集会の全発言要旨をご紹介します(不正確な点もあると思いますがご容赦下さい)。また最後に集会アピールも掲載しました。是非ご一読下さい。
【棗幹事長開会あいさつ】
安倍政権は労働時間の上限規制の月最大100時間の例外を認めようとしている。過労死基準に該当するようなことではとても容認できない。
現在継続審議となっている労基法改正の中身はホワイトカラーエグゼンプションに他ならない。24時間働かせ放題。危険極まりない。裁量労働制の拡大も極めて長時間労働につながりやすい。労災申請もできない。
一方でこのような制度を提案しながら上限規制を入れるという政策的矛盾。破綻している。この矛盾を解消して、真に長時間労働を規制できる法制を作ってもらいたい。
【川人博弁護士による基調報告】
労働時間規制の必要性は明確。まつりさんは病気発症の直前は深夜労働の繰り返し、徹夜。38時までの勤務。このような状況で極度の睡眠不足に陥り、うつ病に。生前、ツイッターでは「一日睡眠時間2時間はレベルが高すぎる」「本気で死んでしまいたい」とつぶやいていた。
彼女の死は、会社による過重な労働強制が最大の原因だが、放置した行政、法の不備にも問題があった。高橋さんの事件を通じて、労働時間の厳重な規制が求められることが改めて明確になった。過労死を発生させないレベルまで上限規制を作るべき。今回の電通事件を通じて明らかになった教訓である。インターバル規制の問題。インターバルは、過労死防止の極めて有効な緊急措置である。EU並みのインターバル規制があれば過労死のほとんどは防ぐことができる。規制こそ求められる。これを緩和させるような法律などあってはならない。現時点でも数多くの労働時間規制緩和が行われている。
1月26日の衆議院予算委員会において塩崎大臣は、過去5年間で企画業務型裁量労働制による労災認定はない、と述べたことに対して、それは間違っていると答弁した。
2012年6月13日に死亡した被災者は、企画業務型裁量労働制の対象者として長時間労働を続けていた。死亡の40日前にマネージャーに昇格したため、裁量労働からは外れていただけである。厚労大臣の言い分は詭弁である。裁量労働制の対象者で死亡し労災認定された例は少なからずある。国が実態を直視してほしい。現実は、実働10時間以上でみなし労働8時間とされている。
高度プロフェッショナル制度は労働の破壊そのものといってよい。長時間労働を繰り返していては本当にプロの仕事もできない。経営者が本当にそう思っているなら実例をみせてほしい。命と健康を守ると同時に、そのような経営によって日本経済が成り立つのか。
【電通過労自殺・高橋まつりさんお母様からのメッセージ(全文)】
はじめまして。髙橋幸美と申します。
亡き娘まつりの過労死について、多くの励ましの言葉をいただき、ありがとうございます。
この場をお借りして、厚く御礼申し上げます。
娘は、たくさんの夢を抱いて社会に出てから間もなく、望みを叶えることなく、亡くなってしまいました。
母である私は、会社から娘を守ることができませんでした。悔しくてなりません。
娘は、一日2時間しか、一週間に10時間しか眠れないような長時間労働の連続でした。この結果、疲れ切ってしまい、うつ病になり、いのちを絶ちました。
娘のように命を落としたり、不幸になる人をなくすためには、長時間労働を規制するための法律が、絶対必要だと思います。
36協定の上限は、100時間とか80時間とかではなく、過労死することがないように、もっと少ない残業時間にしてください。
また、日本でも、一日も早く、インターバル規制の制度をつくり、労働者が、睡眠時間を確保できるようにして下さい。
残業隠しや36協定違反などの法令違反には厳しい罰則を定めるのが大事だと思います。
逆に、労働時間の規制をなくす法律は、大変危険だと思います。
高度プロフェッショナル制や裁量労働制など、時間規制の例外を拡大しないでください。
24時間365日、休息を取らずに病気にならないでいられる特別な人間など、どこにもいないからです。人間は、コンピューターでもロボットでもマシーンでもありません。
娘のように仕事が原因で亡くなった多くの人たちがいます。それが日本の現実です。
経済成長のためには、国民の犠牲はやむをえないのでしょうか。
今の日本は、経済成長のために国民を死ぬまで働かせる国になっています。
娘は戻りません。娘のいのちの叫びを聞いて下さい。
娘の死から学んで下さい。死んでからでは取り返しがつかないのです。
ぜひ、しっかりと議論をして、働く者のいのちが犠牲になる法律は、絶対につくらないでください。
【議員からの挨拶】
・蓮舫議員(民進党)
働き方改革、実態はどうか。本当に大事なのは、規制の強化。政府の法案はまやかし。すでに長時間労働規制法案を出している。正しい改革をしてほしいと全力で挑んでいきたい。全力でがんばっていきたい。
・山井和則議員(民進党)
どれだけ多くの家族が犠牲になったか。今度こそ、二度と過労死を出さないために立法のために頑張っていきたい。
・長妻昭議員(民進党)
若い人たちの気持ちが踏みにじられる。これを法律できちっと明確に規制しなければならない。
・大西健介議員(民進党)
上限つくればなんでもいいのか。そうではない。過労死ギリギリまで働かせることに法律がお墨付きを与えることになる。集中審議を求めがんばっていく。
・泉健太議員(民進党)
生活を、命を取り戻すことがよっぽど大事。月100時間の残業、耐えられるでしょうか。36協定、大幅に見直す必要がある。
・井坂信彦議員(民進党)
政府のやろうとしていることは「働かせ方緩和」である。虫を捕まえようとしているときに網に穴を開けようとしているようなもの。
・田村智子議員(共産党)
労働時間管理の責任は使用者にある。これが明確にされたのは1991年の電通過労死事件が契機。にもかかわらず、労働時間の規制がかからない法案をだしてくる。こんなバカな話はない。政府の労基法改正案は何としても廃案に。残業規制をみなさんとともに勝ち取りたい。
・高橋千鶴子議員(共産党)
「夜景は長時間労働が作っている」というまつりさんのメッセージ。ネオンが長時間労働により成り立っていることについて改めて気づかされた。厚労省と詰めているが、上限規制、政府は「検討中」と繰り返すだけ。どこの時間に規制をかけるのかが問題だが、特別条項にキャップをかけるのか、と聞いても答えられない。規制の届く取り組みをしたい。
・吉良よし子議員(共産党)
悲劇は二度と繰り返さないと政府はいう。しかし、残業上限100時間、抜け穴だらけの働き方改革でどうして二度と繰り返さないといえるのか。会社から娘を守ることができなかったなどというそんなことをお母さんに言わせるのはどうしたって許されない。すべての労働者を守る責任があるのは国であり政府である。本当の規制を作り上げるために頑張りたい。
・長尾敬議員(自民党)
過労死防止対策推進法が成立したとき私は落選していた。これからその法律に魂を入れていくとき。
思いっきりアウェーだが、自然な成り行きでここでマイクをもっている。皆さまが勇気をもって、この運動に取り組んでいることは承知している。与党の議論でも、過労死を推進しようという議論はないことを、皆さまの仲間としていいたい。様々な意見、見え方はあると思う。企業の多様性のある働き方のなかで、いくつかの懸念されている選択肢の一つではあろうかと思います。無我夢中での働き方もあるかもしれない。でも、正常なもののあり方が前提だとおもっている。みなさんの意見は政府与党でも受け止める。これほど話題になったことはない。公務員が労基法の対象にならないということの問題もようやく議論が始まった。
・福島みずほ議員(社民党)
政府の労基法改正案は、労働時間規制が一切なくなる労働者を生む、初めての法案である。どんなことがあっても誕生させてはいけない。過労死促進法案、子育て崩壊法案。健康管理時間を設けるから大丈夫と厚労省はいうが、365日働き続けても違法にはならない。すさまじい働き方をする人が増えてくる。自己申告制になったら、正直に書くだろうか。今国会でホワイトカラーエグゼンプションを廃案に追い込みたい。過労死という言葉が亡くなるように、がんばっていきたい。
・牧山ひろえ議員(民進党)
街頭活動をしている。一般の方々に自分たちの権利を知ってもらう。長時間働いていても、それが普通と思っている人が多い。引き続きがんばっていきたい。
・阿部知子議員(民進党)
希望ある社会にしたい。一緒にがんばっていきましょう。
【当事者の方からの発言】
・息子を過労死で失った遺族の方の発言。
上司に命じられて残業時間を少なくさせられたり、直されたりしていた。労基法が守られていればこんな被害はなかったはずと思い弁護士に聞くと、36協定の抜け道があると教えてもらった。一つの法律の中に、労働者を守る中身と企業の言い訳を許す中身がある。
アメリカのメディアに取材された。記者は、過労死を英語に直そうとすると一語や二語では足りない、だからカローシを英語にしたといわれた。
労基法の改悪が法律で通されるようなことがあれば、息子のような過労死を出すことになる。手塩にかけた息子をなくすことがどんなにつらいものか、みなさんはわかりますか?
私の様な苦しみを持つ人をこれ以上生まないでほしい。労基法改悪案には断固として反対します。
・三菱電機で長時間労働の末うつ病を発症した被害者の方の発言
残業時間の過少申告を命じられ、逆らえなかった。激務によって2014年7月に病気休職となり、労災認定された。
若者がほんの数年で会社に使いつぶされているのをみて、そのままにしておけないと立ち上がった。研究者には昼夜研究に没頭すべきという価値観が蔓延している。
今でさえ研究者の心身は守られていないが、労基法が改悪されれば大変なことになる。
労働者を守ることで素晴らしい成果を上げる会社もある。更なる成果を上げるためにも労働時間管理が必要。
私の様な苦しみを抱える人を生まないでほしい。真に実効性のある働き方改革を実現してほしい。
・過労死家族の会・寺西さん
全国から仲間が参加している。繰り返される過労死に歯止めをかけたいという思いで1991年に結成、毎年厚労省に過労死予防を要請してきた。減らないどころか増え続けている。歯止めをかけたいという思いで過労死防止法を作ることができた。
働き方改革、残業上限が80時間100時間と聞いて驚いた。過労死ラインではないか。国がこうした時間を示す。繁忙期だから体がロボットのように丈夫になるのか。そうではない。こうした働き方を合法化するのは企業利益のために命を投げうてという意味合いではないか。
夫を過労死で失った人は、安い賃金で子どもを二人三人を育てながら、労災申請で苦労する。そうした苦労をたくさん見てきた。たくさんの泣き寝入りもいる。証拠がない。だれも本当のことを言ってくれない。圧倒的に多い。さらに、会社のために一生懸命にがんばって来た人が、裁判をすると、会社の態度はガラッとかわる。適当に寝てたなどという主張をしてくる。
夫を過労自殺で亡くした。夫、息子、娘をなくす。ほかのご家族が大変な状態で働いている。一人失って大変な思いをしている。
長時間労働を美徳とする日本の働き方、やめようじゃありませんか。
そうしたことをする企業は犯罪です。私たちのような思いをする遺族をこれ以上作らないでください。
それぞれの立場の方が、過労死をなくすためにそれぞれ進めてほしい。幼い子供が二次被害を受けている。何の罪もない人も自責の念に駆られる。悲劇をこれ以上増やさないように、若者が夢や希望をもって働ける社会に。過労死のない社会に近づけていくためともにがんばりましょう。
【森岡孝二関西大学名誉教授のお話】
過労死が日本の職場の課題。過労死家族の会の方とワークルール教育をしている。
ワークルールを学んで、おかしいと声を上げるだけでも違うが、それだけでは過労死はなくせない。労働時間をきちんと規制する。戦後70年、長時間労働に追いやっていくアクセルが次々に仕掛けられてきたが、効き目のあるブレーキは一度たりともかかってこなかった。
残業80時間、100時間上限ということを法律にうたうことは、かえって36協定が目一杯のものになっていき、現状を追認することにつながる。エグゼンプション、高度プロも入れた法改正になれば、また半世紀、同じ苦しみを繰り返すことになる。運動を盛り上げて、実効性のある長時間労働規制を求めていきましょう。
【労働組合からの発言】
・連合 黒田さん
長時間労働の是正は急務。連合は実効性のある規制を求めている。上限規制をこの機会に実現したい。長時間労働を助長させる高度プロフェッショナル制度、裁量労働制については撤回すべき。一人一人が生き生きと健康に働き続けられる労働時間制度を目指すべき。解雇の金銭解決制度の議論も本格化している点も見逃せない。広く社会に訴えていきたい。ツイッターの取り組みで、もしも定時に帰れたら、というキャンペーンをしている。取り組みに対する疑問のつぶやきもあるが、900を超えるツイートがあつまった。インターバル規制、上限規制を求めるフォトメッセージを集める取組もしている。
・全労協 柚木さん
例外が当たり前になっている日本の現状。政府案は若い人の命を奪うもの。絶対ゆるしてはいけない。11時間のインターバル制度が必要。残業についても、育児や介護ができるように。本当に女性活躍をしたいなら、8時間働いたら帰れる、普通に暮らせることを考えるべき。2000時間も働かなければいけない日本はおかしい。
・全労連 伊藤さん
労働組合の責任。過労死を生んだ職場の同僚は何をやってるんだ、という問題も隠れている。まともな規制をかける動きがあるが、残業代で暮らしているから困るという声も正直でている。しかし、奴隷労働から逃れるようにしてなくなっている同僚を生んでいる我々はなんなんだと。賃上げと労働時間規制をきちんとやる。格差是正も労働組合がこれまでやってこられなかった。これも一緒にやっていこうと議論している。何十年も放置されてきた問題、人の命、仕事の質の問題。働かない決断をしようと、話しあっている。ネット署名もやっている。
「高プロ・裁量労働制の規制緩和に反対し、真に実効性ある長時間労働規制を求める院内集会」アピール
日本社会に蔓延している長時間労働が引き起こす最大の問題は、数多くの労働者の命と健康を奪っているということである。2014年6月20日に「過労死等防止対策推進法」が満場一致で可決、成立したが、これは何よりも過労死・過労自死が蔓延する社会を変えたいという、数多くの過労死等の家族と市民の切実な声を受け止めた結果に他ならない。にもかかわらず、「過労死等防止対策推進法」が施行された後も、一向に過労死等の命と健康の被害は無くならない。このことは、本集会に寄せられた当事者の声で改めて確認された。
長時間労働の弊害は、労働者の生命と健康被害にとどまらない。長時間労働は男性を職場に縛り付ける一方で、女性を家庭に縛り付けて真の女性の活躍を阻害し、家事や育児に関わりたいと考える男性の家庭での生活時間を奪ってきた。さらには労働者が地域社会で活動する機会をも奪っている。
政府が「働き方改革」として長時間労働の是正に取り組む方針を掲げるのも、このような長時間労働による様々な弊害を、ようやく認識したからであろう。本集会に寄せられた当事者の声に真摯に耳を傾ければ、今求められているのは、日本の雇用社会から過労死・過労自死を根絶するとともに、労働者にゆとりのある生活時間を取り戻せるような、厳格且つ実効性のある労働時間規制であることは明らかである。
ところが、現在報道されている政府が検討している長時間労働の規制策は、労働基準法を改正し、時間外労働の上限を原則として「月45時間」「年間360時間」と規定するものの、その一方で企業の繁忙期に対応できるよう6か月は例外を設け、「月最大100時間」「2か月平均80時間」の時間外労働を認めるものになっている。私たちも、長時間労働を是正するために労働基準法を改正し、36協定でも超えることができない時間外労働の上限を定め、違反企業に罰則を科すことは賛成である。しかし、「月最大100時間」「2か月平均80時間」という例外は、厚生労働省が定めた「脳血管疾患及び虚血性心疾患等の認定基準」に達するものであり、到底認めることはできない。これでは過労死・過労自死の根絶どころか、労働者の命と健康を守ることができず、労働者の十分な生活時間を確保できない。
しかも、現在国会で継続審議となっている「労働基準法改正案」で政府が導入しようとしている「高度プロフェッショナル制度」は、一部の専門職の労働者を労働基準法の労働時間規制から適用除外とするホワイトカラー・エグゼンプションであり、さらに改正案は企画業務型裁量労働制度も大幅に拡大するものとなっている。これらの改正は労働時間規制を大きく緩和するものであり、長時間労働を助長するものに他ならない。政府の労働時間政策は完全に矛盾し、破たんしている。
わが国の雇用社会に蔓延する長時間労働をなくすために真に実効性のある規制は、労働時間の上限規制はもちろん、勤務間インターバル規制を導入し、使用者に罰則付きで全ての労働者の労働時間記録義務を課する労基法の改正である。
我々は、日本社会で働く全ての労働者の命と健康を守り、生活時間を取り戻すため、政府が国会に提出し継続審議となっている「労基法改正案」を白紙に戻し、真に実効性ある長時間労働規制を強く求める。
2017年2月10日
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