長時間労働是正に関する安倍総理の発言に対する幹事長声明
2016/4/27
長時間労働是正に関する安倍総理の発言に対する幹事長声明
2016年4月27日
日本労働弁護団
幹事長 棗一郎
2016年3月25日に開催された第6回一億総活躍国民会議において、安倍総理は、長時間労働は仕事と子育ての両立を困難にし、少子化や女性の活躍を阻む原因となっていると指摘した上で、長時間労働を是正するため、労基法36条に基づく労使協定(36協定)のあり方を見直し、労働時間の上限値を設けることなどを検討する旨表明した。
ところが、これまで実際に安倍政権が労働時間法制に関して推進してきた政策は、労働時間規制の大幅な緩和であり、長時間労働を是正するどころか、逆に長時間労働を助長するものとなっており、上記発言をにわかに信用することはできない。
すなわち、既に安倍政権が昨年の第190回国会に提出し継続審議となっている「労働基準法等の一部を改正する法律案」は、裁量労働制を大幅に拡大するとともに高度プロフェッショナル制度(いわゆるホワイトカラー・エグゼンプション)を導入し、労働基準法に定める労働時間規制の適用を排除することで、労働時間規制を大幅に緩和しようとしている。これらの規制緩和により日本の職場ではますます長時間の過重な労働が増え、労働者の健康被害が増大することが懸念される。
2014年度の過労死等による脳・心臓疾患事案の労災補償状況は、ここ5年間横ばいの状態で一向に件数が減る気配はなく、精神障害事案の労災申請件数、支給決定件数は、ともに過去最多を記録している。このように、過労死・過労自殺の悲劇が止まない現状において、労基法改正による労働時間規制の緩和を行えば、さらに過労死・過労自殺が増えることは誰の目にも明らかであり、今求められている政策は労働時間規制の緩和などではなく、労働時間規制の強化であることは明らかである。
したがって、真に安倍総理が長時間労働を是正しようと考えるのであれば、継続審議となっている「労働基準法改正案」を直ちに撤回すべきであり、同時に以下のような日本労働弁護団が提言する立法政策をとるべきである。
すなわち、当弁護団は、2014年11月28日に「あるべき労働時間法制の骨格(第一次試案)」を発表し、長時間労働を抑制するための合理的な規制方法として、①労働時間の量的上限規制(1週の上限労働時間55時間まで、年間の上限残業220時間まで)と合わせて②勤務間インターバルの導入(勤務開始時時点から24時間以内に連続11時間以上の休息時間の付与)を立法化すべきであることを提言した。長時間労働を是正するというのであれば、これらの立法政策を直ちに実現すべきである。
当弁護団は、冒頭のような第6回一億総活躍国民会議における安倍総理の発言を受けて、改めて労働者の命と健康を重大な危険にさらすことになる安倍政権の労基法等の改正案に対して断固反対し、労働組合等の関係諸団体とともに、その導入を阻止するために行動していくとともに、労働時間の上限規制及びインターバル制度の導入など長時間労働を抑止し労働者の命と健康を守るための諸規制の導入を強く求めていくことをここに表明する。
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