違法な指導を行う社会保険労務士へ監督の要請
2015/12/19
日本労働弁護団は、2015年12月8日、6団体【日本労働弁護団、過労死弁護団全国連絡会議、全国過労死を考える家族の会、ブラック企業被害対策弁護団、ブラック企業対策プロジェクト、NPO法人POSSE】の連名で、厚生労働大臣に対して、新たな過労死や若者の「使い捨て」を引き起こすような法的助言を使用者に対して行っている社会保険労務士が放置されないように、積極的に監督責任を果たすよう要請しました。
要請内容は、以下の通りです。
2015年12月18日
要請書
厚生労働大臣 塩崎 恭久 殿
日本労働弁護団
過労死弁護団全国連絡会議
全国過労死を考える家族の会
ブラック企業被害対策弁護団
ブラック企業対策プロジェクト
NPO法人POSSE
(連絡先):日本労働弁護団
〒101-0062 東京都千代田区神田駿河台3-2-11 連合会館4階
TEL: 03-3251-5363 FAX: 03-3258-6790
日本労働弁護団事務局長 嶋 﨑 量
第1 要請の趣旨
私たちは、労働者の権利擁護、過労死防止、いわゆる「ブラック企業」被害救済等の労働問題に取り組む団体です。
現在、厚生労働省が精力的に取組んでいる過労死防止対策や若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対応に関して、企業に違法不当な指導を行う社会保険労務士の存在が、大きくメディア等で取り上げられております。
私たちは、新たな過労死や若者の「使い捨て」を引き起こすような法的助言を使用者に対して行っている社会保険労務士が放置されないように、厚生労働大臣に対して、積極的に監督責任を果たすよう要請します。
第2 要請の理由
現在、マスメディアなどにおいて、木全美千男社会保険労務士(愛知県社会保険労務士会所属・23880043)の非違行為が取り上げられ、社会問題化しております。
上記社会保険労務士は、2015年11月24日、ブログで「第40回 社員をうつ病に罹患させる方法」題する記事(本書面別紙に添付)を投稿して、インターネット上で全世界に公開しました(現在は削除されています)。このブログ記事では、社労士としてクライアントを獲得するために執筆されたものであり、労働者を「なんとかうつ病にして会社から追放」するための具体的方法として、「適切合法なパワハラを行って下さい。適切にして強烈な合法パワハラ与えましょう」と教唆されています。
また、ブログ記事では、「万が一本人が自殺したとしても、うつの原因と死亡の結果の相当因果関係を否定する証拠を作っておくことです。なぜなら因果関係の立証は原告側にあり、それを否定する証拠を作成しておくことは、会社の帰責事由を否定することになるからです。」と労働者を自殺に追い込むことも厭わない旨の記載までなされています。
この行為の目的は、労働者を「うつ病にして会社から追放」するという異常なものであり、社労士法1条が定める「労働・・・に関する法令の円滑な実施に寄与」「事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資する」という目的から真っ向から反するものであって、社労士の信用又は品位を著しく損なうものになっています。
このように、労働者を「うつ病にして会社から追放」することは、厚生労働省において精力的に取り組まれている過労死防止や労働者のメンタルヘルス対策に真っ向から反し、若者使い捨てが疑われる企業に違法行為を教唆する、極めて悪質なもので、到底放置できません。
かかる行為は、使用者に違法行為を奨励し、さらには当該違法行為を理由とする責任追及を免れる証拠作りまで指南することで、自らの顧客獲得に向けた営業を公にするもので、極めて公共性の高い社会保険労務士の信用と品位を著しく害するものであり、日本の労使関係全体を著しく歪めるものです。
現在、「ブラック社労士」なる言葉が用いられる程、社会保険労務士が、業として使用者に対して違法行為を教唆することで、労働者をうつ病に罹患させるなどにより若者使い捨てが引き起こされ、さらには過労死をも引き起こす事態が広く認識されています。
したがいまして、このような一部の悪質な社会保険労務士の存在がこれ以上放置されないように、厚生労働大臣において、その監督責任を果たす積極的な取組を要請します(社会保険労務士法24条など)。
以 上
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