労働者派遣制度の改正について公益委員案に反対する声明
2013/12/18
労働者派遣制度の改正について公益委員案に反対する声明
2013年12月18日
日本労働弁護団会長 鵜飼良昭
本年12月12日に開催された第201回労働政策審議会職業安定分科会労働力需給制度部会において、労働者派遣制度の改正について報告書骨子案(公益委員案)が公表された(以下「公益委員案」)。
現行の労働者派遣法が派遣期間制限のない業務を専門26業務に限定して、その他の一般業務については原則1年最長3年までに派遣可能な期間を制限しているのに対し、公益委員案は、専門26業務という区分を廃止したうえで、派遣禁止業務(港湾、建設、警備など)を除いて全ての職種と業務において無期雇用派遣については派遣期間制限を撤廃し、有期雇用派遣については派遣労働者個人単位では3年を上限としながら、人を入れ替えれば無期限に派遣労働を利用することができるものとなっている。
しかも、有期派遣3年を超えて「同一の組織単位」で継続して受け入れる場合の派遣先における常用代替の防止措置について、過半数労働組合又は過半数労働者代表の意見を聴取するだけでよいものとしており、同部会事務局が12月4日に出した期間制限のあり方に関するB案(労使委員会が反対の場合一旦受入れ終了)よりも後退したものとなっている。これでは全く常用代替防止の歯止めがかからず、派遣先労働者の反対があっても派遣先の意向だけで有期雇用派遣も永続的に受け入れることができる制度となっている。また、部・課を異動させれば、意見聴取すら不要となるものである。
結局、公益委員案は、派遣労働を使用する側からみて、全ての職種と業務で何の規制もなく派遣労働者を無期限に使えるようにするものであり、常用代替防止という法の根幹の趣旨を捨てて、派遣労働をほぼ完全に自由化するものに他ならない。公益委員案に基づく法改正がなされれば、これまでより格段に派遣労働を利用しやすくなり、日本の雇用社会に派遣労働者がますます増大することが懸念される。
一方、派遣労働者の賃金などの処遇格差の改善については、労働者側が求めている均等待遇原則の導入を見送り、賃金を上げる具体的措置は何ら取られていない。派遣労働者のキャリアアップを行い、正社員への転換を促すような実効的な具体策もない。これでは、派遣労働者は生涯低賃金に固定され、不安定な働き方を続けるしかなくなってしまう。今回の改正案は、既に日本の雇用社会において4割を超えようとしている非正規労働者をますます増大させ、正規雇用と非正規雇用の格差を拡大させるだけである。
日本労働弁護団は、このような公益委員案に断固反対するとともに、我が国の労働者、労働組合ほかのあらゆる国民各層に労働者派遣法改悪の危険性を訴えるものである。