有期労働契約の法規制を求める決議 -雇用の安定と均等待遇実現のために-

2010/11/13

1 一昨年のリーマンショックを契機に、我が国でも非正規雇用の労働者が次々に職場を失い、その地位の不安定さが顕わになった。本来は、労働契約の原則は、直接雇用・無期雇用であるべきだが、規制緩和の大合唱の下、有期契約労働者や派遣労働者が増大し、貧困・格差が広がったことは動かし難い事実である。この原因の一つとなった派遣法については改正の動きが起き、派遣法改正案が現在も国会において審議中である。しかし、派遣労働もパート労働も有期雇用が多いことからすれば、非正規雇用の問題を抜本的・根本的に解決するには、有期労働契約の規制なくしてはなし得ない。有期契約労働者は、無期契約労働者に比べて著しく雇用が不安定であり、労働条件も無期契約労働者と比べると著しく低い。ところが、労働実態は無期契約労働者と異ならない場合も多く、無期契約労働者との間で、不合理な格差が生じている。

これは企業が労務費の削減を目的とし、有期雇用によって解雇規制を免れ、雇用調整を容易にするという目的によって生じている。にもかかわらず、我が国では、有期労働契約のかかる不合理・不適正な濫用的な活用を防止する実定法が存在せず、雇止めの判例法理が存在するだけで、事実上、野放し状態である。

2 日本労働弁護団は、20091028日、「有期労働契約法制立法提言」(以下「立法提言」)を発表し、有期労働契約に対するあるべき立法的規制を打ち出した。また、昨年の総会で「非正規・不安定雇用労働者の権利確立をめざす」アピールを採択し、有期労働契約の問題を含め、不安定雇用労働者の権利確立に向けて尽力することを表明した。

2010317日、厚生労働省労働基準局長の委嘱を受けた有期労働契約研究会が発表した「中間取りまとめ」に対する意見を、同年430日に発表し、労働契約法の大幅な改正を具体的に示す、より抜本的な提言をなすよう求めたところである。

そして、同年910日、上記有期労働契約研究会が最終報告書を発表した。同報告書は、「中間取りまとめ」に比べれば、有期労働契約の問題点について、有期労働契約の不合理・不適正な利用があるという現状を認めた上で規制の必要性を検討している点で評価できるものの、具体的な法制度の方向性を明確に打ち出すには至らず、検討されている規制内容も未だ不十分なものである。今後、1年をかけて労働政策審議会で審議が行われるが、労政審で有期契約労働者の雇用の安定、均等待遇を実現する抜本的な立法が検討され提案されるべきである。なお、多様な正社員形態を容認しつつ、整理解雇要件を緩和する動きがあるが、このような動きには強く反対するものである。

3 日本労働弁護団は、無期雇用・直接雇用が原則を確立すべく、有期労働契約の不合理・不適正な利用を防止する有期労働契約法制の一日も早い確立を求めるために取り組みを強める。

そこで、次の事項の法制化を早急に求める。

① 有期労働契約締結事由の規制(入り口規制)

② 無期労働者・有期労働者間における均等待遇の実現

③ 有期労働契約の利用可能期間制限の導入と違反の場合の無期雇用へのみなし規定

④ 判例上確立している雇止法理の法文化

4 冒頭でも述べたとおり、有期労働契約の規制なくして、非正規雇用問題の解決はない。日本労働弁護団は、一日も早く有期雇用労働者の雇用の不安定さの解消と均等待遇を実現するため、有期労働契約法制の立法を求め、ここに決議するものである。

20101113

  日本労働弁護団第54回全国総会