マツダ事件裁判闘争を支援する決議

2013/11/9

マツダ事件裁判闘争を支援する決議

 

 山口地方裁判所(裁判長山本善彦,裁判官松永晋介,同林﨑由莉子)は,2013313日,労働者派遣による就労と,サポート社員という名称による派遣先での直接雇用を交互に繰り返すことによって派遣可能期間を潜脱していた事案について,派遣労働者と派遣先であるマツダとの黙示の労働契約の成立を認める判決を下した。

 偽装請負や違法派遣の場合に,労働者が受入企業との間に黙示の労働契約が成立するとして争ったケースは,これまでにも多数存在する。しかし,20091218日の松下PDP事件最高裁判決が,派遣法違反の事実を認めつつも,「特段の事情のない限り,そのことだけによっては派遣労働者と派遣元との間の雇用契約が無効になることはない」と述べ,結論的にも黙示の労働契約の成立を否定したため,その後の下級審判決は,この最高裁判決を引用しながらも,同判決の指摘する「特段の事情」を十分に検討することなく,安易に黙示の労働契約を否定するという傾向にあった。

 これに対し,山口地裁は,サポート制度の利用等によって常用代替防止という派遣法の根幹を無視する取扱いを派遣先・派遣元が協同で組織的に行っていたことを重視し,松下PDP事件最高裁判決を踏まえた上で,同判決のいう「特段の事情」を認めて派遣労働契約を無効とし,その結果,派遣先との黙示の労働契約の成立をも認める判断を下したのである。

 労働者派遣法は,一定の場合に限って直接無期雇用の例外を認めたにすぎないのであるから,派遣法を潜脱するやり方で恒常的業務に派遣を利用することは決して許されず,その場合,指揮命令する企業が雇用責任を果たすべきことは,当然のことである。本判決は,マツダの雇用責任を認めることによって,そのことを再確認した点で,社会的にも大きな意義を有するものである。マツダ事件弁護団がこのような判決を勝ち取ったことは,派遣先との直接雇用を求めて闘っている全国の労働者に大きな希望を与えるものであり,その成果は極めて大きい。

 同事件は会社側が控訴をし,現在,広島高等裁判所に係属中である。松下PDP事件最高裁判決を正しく踏まえて,今後,偽装請負・違法派遣下にある労働者が派遣先との直接雇用を勝ち取るために,山口地裁の判断を控訴審でも維持することが必要不可欠である。そこで,日本労働弁護団は,マツダ事件における今後の裁判闘争を総力をあげて支援し,違法派遣・偽装請負の受入企業に雇用責任を認めさせる闘いを進めていくことをここに決議する。

2013119

日本労働弁護団 第57回全国総会