「秘密保全法」制定に強く反対する

2013/10/4

「秘密保全法」制定に強く反対する

2013年10月4日

                日本労働弁護団 会長 鵜飼 良昭

 

 安倍自公政権は、今秋の臨時国会で「秘密保全法」の制定をめざしている。「秘密保全法」は、①国の安全、②外交、③公共の安全及び秩序の維持の3分野を対象として、非常に広範囲にわたる行政に関する情報を「特別秘密」に指定し、「特別秘密」を故意または過失により漏えいさせる行為、「社会通念上是認できない行為を手段として特別秘密を取得する行為」(「特定取得行為」)を厳しく罰するものである。また、「秘密保全法」は、「特別秘密」を管理するために、「特別秘密」と接する本人及び「本人の身近にあって、本人の行動に影響を与えうる者」の秘匿性の高いプライバシー情報や思想・信条を調査することができる「適性評価制度」を規定している。さらに、「故意の漏洩」と「不正入手」については、「未遂」「教唆」「扇動」「共謀」も処罰の対象としている。

 すでに、日弁連、各単位弁護士会、労働組合、市民団体、マスメディアなどが、「秘密保全法」制定に強く反対する声明を出しており、「秘密保全法」のいう「特別秘密」および「特定取得行為」の概念が過度に広範かつ漠然不明確であり、憲法上保障された知る権利、取材活動、報道活動等の重大な侵害となり、「適性評価制度」については、プライバシーや思想・信条の自由に対する重大な侵害を招くと強く批判している。「秘密保全法」は、民主主義国家の基盤である「情報公開」、「報道の自由」、「知る権利」を侵害する憲法違反の法律であることは明らかである。

 また、「秘密保全法」は労働者の権利をも大きく脅かすものである。直接的には、公務員、独立行政法人、行政機関から事業委託を受けた民間企業、大学等の研究機関等の労働者が処罰の対象になる。事業委託を受けた労働者は「適性評価制度」により、プライバシーや思想・信条が調査対象となり、それによる人権侵害を受けることになる。それだけでなく、調査によって得られた情報によって、差別を受けるなど二次的な人権侵害の可能性もある。

 さらに、取材の自由、報道の自由が制約されることによって、マスメディアで働く労働者の権利が侵害され危険が高い。たとえば、原発問題は上記③に該当するとして、原発に関わる情報が「特別秘密」とされる可能性は十分にある。そうなれば、原発労働者の労働環境に関する取材活動及び報道活動が規制されることになる。

 以上のとおり、「秘密保全法」は、国民の基本的人権を侵害し、労働者の権利も脅かすものである。日本労働弁護団は、労働者の権利擁護に取り組む団体として、「秘密保全法」の法制化に強く反対するものである。

以上