「過労死防止基本法」の早期制定を改めて求める決議
2012/11/10
「過労死防止基本法」の早期制定を改めて求める決議
日本労働弁護団は、2008年11月15日、第52回全国総会において、我が国の労働現場における過酷な長時間労働を強く規制し、労働者の命と健康を護り、過労死等を根絶するため、「『過労死等防止基本法』の制定と長時間労働の規制強化を求める決議」を行った。
その後、全国過労死を考える家族の会と過労死弁護団全国連絡会議の呼びかけで2011年11月18日、「ストップ!過労死 過労死防止基本法制定実行委員会」が結成されて、「過労死防止基本法」の制定に向けて力強く運動が推し進められており、法律の制定を求める署名は30万人を超え、4回開かれた院内集会にも、衆参・超党派の多くの国会議員が参加し、また、マスメディアでもこれらの運動や取り組みが大きく取り上げられ、「過労死防止基本法」の制定に向けた世論は増すばかりである。
しかるに、この間、我が国における労働環境は改善するどころか、過酷な長時間労働は蔓延し続け、労働者の命と健康が蝕まれ、過労死や過労自殺が後を絶たない。厚労省が2012年6月に発表した2011年度の「脳・心臓疾患と精神障害の労災補償状況」でも、過労死など、脳・心臓疾患に関する事案の労災補償の請求件数は898件で、前年から96件増えて2年連続で増加し、精神障害に関する事案の労災補償の請求件数は1272件で、前年から91件増えて3年連続で過去最高を記録した。また、この内、自殺(未遂を含む。)に係る精神障害の労災補償の請求件数は202件で、これも前年から31件増えて3年連続で増加を続けている。
過労死や過労自殺は、懸命に働いてきた労働者の生命・自由・幸福追求に対する権利を奪い、また、その遺族の生活を破壊し、その幸福追求権も大きく侵害されることとなる。我が国の労働現場における長時間労働に対する規制を強化し、過労死・過労自殺を根絶することを目的とした「過労死防止基本法」の制定は急務である。
日本労働弁護団は、ここに改めて、①過労死をなくすことを国が宣言し、②そのための国・自治体・事業主の責務を明確にし、③国は過労死に関する調査・研究を行うとともに総合的な対策を行うことを柱とする「過労死防止基本法」の早期制定を強く求めるものである。また、過労死等の被害者やその家族、過労死弁護団、過労死防止基本法制定実行委員会、更には、過労死の根絶を願う労働組合や市民団体とも広く協力して、法律制定に向けて強く行動していくことを決意するものである。
2012年11月10日
日本労働弁護団 第56回全国総会