労働者派遣法の抜本改正を求める労働弁護団アピール

2010/3/5

「非正規・不安定雇用労働者の権利確立をめざす」アピール

 労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律等の一部を改正する法律案要綱(以下、「要綱」という)が労働政策審議会で承認され、今後法律案が国会に上程される予定である。周知のとおり、労働者派遣法は、1985年に制定された以降今日まで、規制緩和を重ねてきた。要綱は、これまでの規制緩和を見直し、労働者保護の観点から規制強化に踏み込む内容も含むものであり、一定の評価ができるものである。しかし、この間に露呈した現行労働者派遣法が孕む構造的問題を解消するにはなお不十分なものであると言わざるを得ない。

 本来、雇用は、直接・無期限であることが大原則であり、間接雇用・有期雇用は、それを客観的に必要とし、かつ合理的にする正当な理由がある場合に限り例外的に許されるものでなければならない。このような観点から、私たちは、次のとおり労働者派遣法が改正されるよう求めるものである。

 ①登録型派遣は、本来全面的に禁止されるべきであり、仮に例外を認めるとしても、例外とされている「専門26業務」の範囲を厳格に限定すべきである。②常用型派遣についても、派遣対象業務や利用事由を限定すべきである。また、「常時雇用する労働者」の定義については「期間の定めのない雇用契約を締結した労働者」と法律上明記すべきである。③製造業務派遣は本来全面的に禁止されるべきであるが、仮に常用雇用の労働者派遣を禁止の例外とするとしても、雇用安定確保の見地から、期間の定めのない雇用契約に限定すべきである。④直接雇用申込みのみなし規定については、みなし規定の実効性を確保するためには、要綱の挙げる5つの場合は例示列挙と明示すべきである。また、派遣先の主観的要件は不要とすべきである。直接雇用後の労働条件についても、比較可能な派遣先の期間の定めのない契約の労働者との均等待遇を原則とすべきである。少なくとも、当該派遣労働者の既存の労働条件を下回ってはならない旨の規定を設けるべきである。⑤日雇い派遣は、要綱の例外を許容する基準が不明確であり、脱法的拡張解釈の危険が高い。日雇い派遣は、賃金や雇用期間のみならず、社会保障の受給資格が得られない等の弊害があまりに大きい。雇用期間2ヶ月以内の労働者派遣は、例外を許容することなく全面的に禁止すべきである。⑥派遣労働者と派遣先労働者との「均衡」待遇に「配慮」するという規定では、労働条件の均衡確保の実効性に乏しい。労働条件の「均等」を「義務」化する規定を設けるべきである。⑦派遣元による中間搾取と派遣労働者の貧困化を阻止するためには、マージン率についての公開及び労働者への明示を義務づけるだけでは不十分であり、上限規制をすべきである。⑧いわゆるグループ企業派遣が常用代替の温床となっていることに鑑み、グループ企業派遣については、少なくとも5割以下に規制すべきである。⑨労働者の採用に派遣先が関与することは、労働者派遣法の構造に反するものである。期間を定めないで雇用される労働者であっても、派遣先が派遣労働者を特定することを目的とする行為を禁止する現行法を維持するべきである。⑩派遣労働者の団結権及び団体交渉権を実効化するためにも、派遣先の団体交渉応諾義務を明記すべきである。また、派遣先責任の抜本的強化を図るため、賃金未払に関する派遣元との共同責任化、派遣先による中途解約の場合の残存期間の賃金相当額支払義務、労災補償責任の共同責任化等の規定を設けるべきである。⑪派遣労働者の雇用の安定は緊急の課題であるから、どんなに遅くとも改正法公布の日から1年以内の日を施行日とすべきである。

 われわれ日本労働弁護団は、派遣労働者保護の法改正を目指して全力を挙げて取り組むとともに、派遣労働者の権利擁護を実現するたたかいを支援するものである

2010年3月5日
日本労働弁護団