旧松下PDP事件最高裁判所の不当判決に抗議する
2009/12/21
旧松下PDP事件最高裁判所の不当判決に抗議する
2009年12月21日
日本労働弁護団
幹事長 水口洋介
2009年12月18日、最高裁判所は、いわゆるPPDP(旧松下PDP)偽装請負事件について、旧松下PDPの雇用責任を認めた大阪高等裁判所2008年4月25日判決を破棄し、被上告人である吉岡力氏の労働契約上の地位確認請求を棄却する不当判決を下した。
大阪高等裁判所は、旧松下PDPが労働者を受け入れるために締結していた契約は、脱法的な労働者供給契約であり、職業安定法44条及び公序良俗に反して無効であるとした。そして、旧松下PDPと吉岡氏の間には事実上の使用従属関係があり、黙示の労働契約関係が成立しており、旧松下PDPの解雇ないし雇止めを権利濫用として無効とした。
ところが、最高裁判所は、旧松下PDPが吉岡氏を受け入れたことを「労働者派遣法の規定に違反していたといわざるを得ない」としながら、「労働者派遣法の趣旨及びその取締法規としての性質、さらには派遣労働者を保護する必要性等にかんがみれば、仮に労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合においても、特段の事情のないかぎり、そのことだけによっては派遣労働者と派遣元の雇用契約が無効になることはない」とし、さらに旧松下PDPが吉岡氏の採用に関与しておらず、給与等の額を事実上決定していた事情もうかがわれないとして、両者間に「雇用契約関係が黙示的に成立したものと評価できない」とした。そして、最高裁は、旧松下PDPが吉岡氏との間には、あくまで平成18年1月31日までとする有期雇用契約が成立しただけだ、として雇用契約上の地位確認請求を棄却したのである。
しかしながら、労働者派遣法に違反して労働者を受け入れているにもかかわらず、受入企業の雇用責任を認めない最高裁判所判決は、違法な偽装請負を行った企業の労働者切り捨てを容認するものであり到底認められない。このような司法判断は、労働者の雇用安定という社会的要請を否定するものであり、司法の使命を放棄するものにほかならず、ここに強く抗議する。現在、全国各地で派遣労働者の地位確認を求める訴訟が提起されたたかわれている。このたたかいにより、必ずや不当な最高裁判決がのりこえられると確信するものである
他方、最高裁判所は、旧松下PDPが吉岡氏をリペア作業に従事させたこと及び雇止めをしたことが吉岡氏の労働局申告に対する報復であるとして、旧松下PDPに損害賠償の支払いを命じた。これは最高裁判所も旧松下PDPの不法行為責任を厳しく断罪したものにほかならず、旧松下PDPが企業としての責任を免罪されたものではないことは明白である。私たち日本労働弁護団は、旧松下PDPが吉岡氏の要求を受け入れて速やかに解決することを強く求める。
同時に、本事件につき最高裁判所が労働者派遣法に違反している事実を認めながら、派遣先と吉岡氏との間の雇用契約関係を認めなかったことは、現行の労働者派遣法が労働者保護の役割を果たしていないことを改めて明らかにしたものと言える。現在、労働者派遣法の改正が審議されているが、私たち日本労働弁護団は、登録型派遣の禁止、製造業派遣の禁止、違法派遣についての派遣先の直接雇用責任を明確化する等の派遣労働者保護の観点に立った労働者派遣法の抜本的改正を求めるものである。
以上