「非正規・不安定雇用労働者の権利確立をめざす」アピール

2009/11/14

「非正規・不安定雇用労働者の権利確立をめざす」アピール

 我が国では、6650万人もの人々が労働によって自分あるいは家族の生活を支えている。働くことが労働者の命と人生を支えているのであり、雇用の安定はその必須の前提である。

 直接雇用・常用雇用は雇用の大原則である。有期雇用は例外とされなければならず、雇用責任が曖昧となる派遣のような間接雇用は原則として禁止されなければならない。

 しかしながら、これまで我が国では、有期労働契約を規制する法律はないに等しく、例外的な働き方として認められたはずの派遣労働は、規制緩和を重ねて野放図に拡大されてきた。そして、このような非正規雇用は、契約形態の違いを理由とする処遇差別を正当化する根拠として悪用されてきた。

 今や総労働者のうち非正規・不安定雇用労働者は4割近くに達しているばかりか、その賃金は、正規労働者と比較して極めて低賃金かつ劣悪な労働条件を強いられている。

 日雇い派遣問題に象徴されるワーキングプアの問題は社会問題となり、派遣切り・年越し派遣村問題の報道は、問題の深刻さと、その原因が企業の利潤追求に偏った姿勢及び不十分な法規制にあることを広く世に伝えた。

 格差と貧困の要因に、非正規・不安定労働者の増大があることは明らかであり、労働のありようの改善は、社会的・政治的に重大な政策課題となっている。このような状況で、労働者派遣法については、民主・社民・国民新党3野党(当時)の派遣法改正案が上程されるに到り、総選挙を経て3党連立政権の政策合意にもその内容が引き継がれた。

 派遣労働者保護の観点に立った労働者派遣法の抜本的改正は、まさに緊急且つ焦眉の課題であって、これを早急に実現することが必要である。

 しかしながら、労働者派遣法の抜本改正のみで、非正規・不安定雇用労働者が置かれている状況を全面的に解決できるわけではない。非正規・不安定雇用労働者の権利確立のためには、期限の定めのない直接雇用でなければならないこと、雇用形態による処遇差別があってはならないこと、の原則を踏まえた法規制が不可欠である。加えて、実態は労働契約でありながら、請負などの形式をとることによって使用者としての責任を免れるという脱法行為が横行している現状を踏まえ、これらの契約形式で就労する労働者にも労働法の保護を及ぼす必要がある。

 日本労働弁護団は、昨年の総会において、「実効性ある派遣労働者保護を実現できる労働者派遣法改正を求める決議」を採択し、派遣法抜本改正を求める取組を行ってきたが、、去る10月28日には「有期労働契約立法提言」を公表し、有期労働契約に対する法規制のあり方を提言した。非正規・不安定雇用労働者の権利確立を目指す取組は、いま様々なレベルで拡がっており、政権交代という新たな情勢のもと、大きく前進しつつある。

 我々は、労働者・労働組合の権利擁護を目的とする法律家団体として、非正規・不安定雇用労働者の権利確立を目指すたたかいを支援し、これに連帯するとともに、ナショナルセンター、労働組合、その他多くの団体・組織とひろく連携・協力しつつ、現下の最重要課題である非正規・不安定雇用労働者の権利確立を目指して全力を挙げて取り組むものである。

2009年11月14日
日本労働弁護団 第53回全国総会