「労働審判制度運用に関する要望書」

2009/6/17

労働審判制度運用に関する要望書

最高裁判所事務総局行政局 御中
各地方裁判所 御中

2009年6月17日
日本労働弁護団
幹事長 小島 周一

労働審判制度が開始され3年を経た。この間、日本労働弁護団ならびに所属弁護士も、この制度の普及および定着のために努力してきたところである。
言うまでもなく、労働審判は、単に調停の成立による解決のみを目指す制度ではなく、「事件を審理」し、その解決に至らない場合には、「当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判」を行うものである(法1条)。
しかし、近時、一部の審判官によっては、当事者双方の主張及び証拠の整理や争点についての審尋を含めた「事件を審理」することなく、また審判委員会としての合議のための時間を割くこともなく、いきなり調停手続を行うなどの例が見受けられる。
このような手続のあり方は、労働審判制度の趣旨に沿うものではなく、労働審判を民事調停と同じように取り扱うものにほかならない。
そこで、調停・審判の適正と納得性を高め、この制度の本来の趣旨にもとづくより適正かつ充実した運用を図るため、下記の点につき、要望する次第である。

1. 審判官は、この制度が「事件を審理」し、調停が成立しない場合には「当事者間の権利関係を踏まえつつ事案の実情に即した解決をするために必要な審判」(法1条)を行う手続であることを踏まえて争点及び証拠の整理を行った上で、手続を指揮すること。
2. 労働審判委員会は、当事者間の権利関係を踏まえ、合議を尽くした上で、調停案の提示や審判告知を行うこと。また、その際、認定事実及び法律関係を丁寧に説明するとともに、必要な事案については、定型文言だけでなく、この認定事実及び法律関係を、審判書または口頭告知の場合の期日調書中に、「理由の要旨」として記載すること。

以上