労働者の権利確保に資する労働契約法の制定を求め、就業規則法制の立法化に反対する決議

2006/11/11

労働者の権利確保に資する労働契約法の制定を求め、
就業規則法制の立法化に反対する決議

  1. 労働政策審議会労働条件分科会において、労働契約法制定の論議が進んでいる。当弁護団は、94年に労働契約法制(第1次案)を公表して以来、民事法たる労働契約法の制定を強く求めてきた。
    個別労使紛争が増加する中、労働時間関係などいくつかの事項の最低基準を定める労働基準法では、労働契約の成立・展開・終了に係わる多くの紛争に対応できないことは明らかであって、労働者の権利を確保するために、民事上の強行法規を中心に構成される労働契約法が是非とも必要であるからである。
  2. しかし、今日、検討されているのは、労働契約上様々に生起しうる問題の一部にすぎないものであり、かつ、解雇事案における使用者申立の金銭解決制度や有期雇用を「良好な雇用形態」と位置付けたうえでの均衡処遇など、労働者の権利確保に資さない制度まで検討課題とされている。金銭解決制度には断固反対であり、有期を始めとする非正規雇用も均等・平等な待遇が保障されねばならない。
    当弁護団は、改めて、雇用の入口から出口までの諸問題に対する実体法・強行法を中核とした、民事法の制定を強く求めるものである。
  3. 労働契約法制定において、極めて重要な問題は、労働契約という労働者個人と使用者の間の合意に関する規律である労働契約法において、使用者が一方的に制改定する就業規則をいかに扱うかである。
    この間の審議においては、一定の条件の下に就業規則に労働契約上の効力を認める方向が提起されている。しかし、就業規則の法的性質については諸説があり、最高裁判所も判例法理の結論を納得させうる説明をなしえていないのであるから、この問題については十分な時間をかけ、議論を尽くし、コンセンサスを得たうえで立法化すべきであり、今次契約法においての立法化には反対である。
  4. 労働契約法制定の目的の1つに、労使の実質的な対等の確保がある。
    この点からは、現行の過半数代表制度、就中、過半数代表者の抜本的改革は避けて通れない焦眉の課題であり、就業規則法制の立法化の前提ともなるべき課題である。この点の抜本的改革がなされないままの労働契約法では、労使自治の美名の下、使用者の一方的契約内容決定を容認することになりかねない。
  5. 当弁護団は、労使の実質的な対等確保の視点に立ち、これに資する制度を備えた労働契約法の制定について、十分な論議がなされることを強く求める。

2005年11月11日

日本労働弁護団 第50回全国総会