雇用の分野における女性活躍推進の方向性に関する声明

2024/6/28

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雇用の分野における女性活躍推進の方向性に関する声明

2024年6月28日
日本労働弁護団幹事長 佐々木 亮

2019(令和元)年に女性活躍推進法等改正法が成立したが、男女間の賃金格差は依然として大きく、女性管理職の割合も国際的に見るとその水準は低く、ハラスメント関係の相談件数も益々増加傾向にあり、女性労働者を取り巻く問題は山積している。

こうした状況を踏まえ、厚生労働省は、2024(令和6)年2月29日、「雇用の分野における女性活躍推進に関する検討会」(以下「検討会」という。)を立ち上げ、同年5月31日には「論点整理(試案)」(以下「論点整理試案」という。)、同年6月11日には「論点(案)」(以下「論点案」という。)を公表した。

まず、論点案では女性活躍推進法の延長が挙げられている。当弁護団も、2025(令和7)年度までの時限立法である女性活躍推進法の延長に反対するものではない。もっとも、すべての女性が輝くためには、すべての就業状態・ライフステージにある女性が、安定した雇用の下、差別のない職場で働き続けられる就業環境の整備が不可欠である。そうした観点による実効的な対策が行われない限り、冒頭で指摘した問題は解消されない。

男女間賃金格差の是正に関しては、各企業における男女間の賃金格差や労働条件格差、女性の就業環境上の問題点を明らかにしたうえで、企業にも自主的な改善を求めていくことが重要であり、そのためには、情報公開の範囲を思い切って拡大すべきである。具体的には、「女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供」に関する項目及び「職業生活と家庭生活との両立」に関する項目のすべてを必須の公表対象項目にすべきである。少なくとも、男女別の採用における競争倍率、男女の平均継続勤務年数の差異、男女別の育児休業取得率、育児休業から復帰後1年間の就労継続の有無、雇用管理区分ごとの労働者の一月当たりの平均残業時間、有給休暇取得率、管理職に占める女性労働者の公表は直ちに必須とすべきである。また、論点案12頁でも指摘されているように、男女間賃金格差の要因分析のためには説明欄の活用が重要である。

企業の課長相当職以上の管理職に占める女性の割合は2022(令和4)年度で12.7%であり(厚生労働省「令和4年度雇用均等基本調査」)、国際的にもその水準の低さは顕著である。職場環境の整備にあたって当事者の声を反映させるためにも、意思決定の場に女性労働者を参画させねばならず、女性管理職割合の向上は急務である。さらに、女性管理職割合の向上は、仕事と育児・介護を両立できる環境とセットで検討しなければならない。現在の長時間労働による働き方を変えていかない限り、現実に家庭責任を負わされがちな女性労働者が管理職を務めることなど困難であり、この点の是正策も併せて講じることが必須である。

女性の正規雇用の割合が20代後半頃から下がる「L字カーブ」の解消は進んでおらず、依然として女性労働者の過半数を非正規労働者が占めている。こうした現状を踏まえると、正規・非正規労働者の大きな格差を存続させることは女性活躍を阻害する要因といえる。そのため、非正規労働者の待遇改善や、正規労働者への登用拡大といった対策が求められる。当弁護団は、女性労働者が置かれた現状に目を向け、当事者の声を反映した、真に女性の活躍推進に資する実効的な法整備が行われることを求める。

 以上