特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の政省令等に関する意見書

2024/3/21

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特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律の政省令等に関する意見書

2024年3月21日
日本労働弁護団
会長 井上 幸夫

第1 はじめに

2023年4月28日、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「法」という。)が成立し、現在、法の政省令や指針等について、厚生労働省と公正取引委員会において検討が進められている。

法は、「労働者」として扱われていない就業者の就労環境等を一定程度改善しうるものであるが、何よりも行われるべきなのは、いわゆる偽装フリーランスを労働者として保護することである。以下では、その点を指摘したうえで(第2)、現在検討されている政省令や指針等の不十分な点、改善すべき点をあげる(厚労省における検討について第3、公正取引委員会における検討について第4)。

 第2 労働者としての権利を実現する対策が求められる

2023年4月28日、特定受託事業者に係る取引の適正化等に関する法律(以下「法」という。)が成立したが、参議院内閣委員会(令和5年4月27日)で重要な附帯決議がされている。その内容は、「労働関係法令の適用対象外とされる働き方をする者の就業者保護の在り方について、本法の施行状況や就業実態等を踏まえ、本委員会において参考人から出された現場の意見も参考にしながら、労働者性の判断基準の枠組みが適切なものとなっているか否かについても不断に確認しつつ検討し、必要な措置を講ずること。」というものである。

本来は労働関係法令の保護の対象となる「労働者」に該当するにもかかわらず、「労働者」として扱われていない、いわゆる偽装フリーランスが多数存在する。請負、委託などの形式をとることによって、労働関係法令を脱法する非労働者化の取扱いに対しては、現状、十分な対策が取られていない。本来「労働者」である者を非労働者として扱うことは、労働基準法に定めた最低限の労働条件の実現を妨げ、団体権・団体交渉権・団体行動権という労働基本権を侵害するものとして、それ自体が重大な人権侵害である。

特に、今日では、新しいテクノロジーを活用した非労働者化はいっそうあからさまに、かつ巧妙に行われている。にもかかわらず、技術革新と結びついた非労働者化につき、行政・司法・立法における対応は遅々として進んでいない。労働基準法上の労働者に関する1985年の労働基準法研究会報告は、今日でも実務上、労働者性の判断基準として参照されることが多いが、報告書作成当時の裁判例を整理して判断要素を列挙したものであり、今日的な課題に十分機能していない。今日の働き方に即した労働者性の判断基準を再整理するとともに、労働者性の推定規定などの効果的な法技術の採用が切実に求められている。

ILOは、2006年の雇用関係に関する198号勧告において、加盟国に対して雇用関係にある労働者を保護するための政策として、雇用関係が存在することについて、被用者と自営業者とを効果的に区別する指針を設けるとともに、「自営を偽装した雇用」(ディスガイズド・エンプロイメント=偽装雇用)に対する雇用関係に対処することを求めている。そして、同勧告は、加盟国に対して、「雇用関係の存在についての決定を容易にするため、この勧告に規定する国内政策の枠組みにおいて、次の可能性を考慮すべきである。」とし、「一又はそれ以上の関連する指標が存在する場合には、雇用関係が存在するという法的な推定を与えること。」等の可能性も考慮することを求めている。諸外国においても、労働者性の判断基準について議論がされ、行政機関による積極的な履行強制や、労働者性の推定規定を含む立法の試みが進められている。

我が国においても、労働者性の推定規定(労働者みなし規定も含む)の創設を含め、自営を偽装した雇用を撲滅するための効果的な対策をすべきである(以上、日本労働弁護団第66回全国総会「労働者性の推定規定の創設など『自営を偽装した雇用』に対する効果的な対策を求める決議」(2022年11月12日)も参照。)。

第3 特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会における議論について

1 はじめに

 厚生労働省は、2023年9月11日、特定受託事業者の就業環境の整備に関する検討会を設置し、同検討会において、法の特定受託業務従事者の就業環境の整備(第三章)の政省令の内容や指針について検討を進めており、同検討会は2024年2月16日の第7回まで開催されている。

同検討会で示されている「これまでの議論を踏まえた政省令等の論点と方向性について」(以下「政省令等の論点と方向性」という)や「これまでの議論を踏まえた指針の論点と方向性について」(以下「指針の論点と方向性」という)などについて、特定受託事業者の就業環境の整備を実現するうえで、次のとおり、不適切ないし不十分な点がある。

2 法第13条(妊娠、出産若しくは育児又は介護に対する配慮)について

(1) 「政令で定める期間」について

法第13条における妊娠、出産等に対する配慮の対象となる「継続的業務委託」については、「政令で定める期間」以上の契約の継続が必要とされる。「政省令等の論点と方向性」では、その「政令で定める期間」について、「継続的業務委託の期間を6か月以上とすること」を挙げている(5頁)。しかし、6ヶ月より短い継続的業務委託であったとしても、育児介護等をしている特定受託事業者の就業環境整備の必要性は変わることはない。「政令で定める期間」については、特定受託事業者の就業環境の整備という目的に照らしても、さらに短い期間とするべきである。

(2) クーリング期間について

法第13条は、その対象とする「継続的業務委託」について、「契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む」ものとしている。この点、「政省令等の論点と方向性」は、「2以上の業務委託契約を締結する場合に契約の更新と認められる空白期間は、1ヶ月未満とすること」(5頁)としている。

しかし、2以上の業務委託契約を締結する場合の一律の空白期間を設けることで第第13条の適用がされないとする定め(クーリング期間の定め)は設けるべきではない。クーリング期間を設けることによって、契約締結の時点をクーリング期間後にすれば容易に法第13条の適用を免れることができ、クーリング期間を短い期間とすればその危険はより高まり、第13条の実効性が欠ける結果となりかねない。

(3) 契約更新について

また、「政省令等の論点と方向性」は、「2以上の業務委託契約を締結する場合に契約の更新と認められるための同一性の要件については、2以上の業務委託契約の両当事者が同一であり、かつ、その給付又は役務の提供の内容が一定程度の同一性を有していると言えることが必要とする。」(5頁)としている。

しかし、この案は、契約の更新を狭く捉えすぎており、妥当ではない。法第13条が一定期間以上の業務委託を対象とする趣旨の一つには、特定業務委託事業者と特定受託事業者との間で一定期間以上の取引関係があることで、育児介護等と両立した働き方を調整できる関係が生まれることが挙げられている(衆議院・内閣委員会・令和5年4月5日・宮本政府参考人答弁)。そして、契約の当事者が同一であれば、業務内容の同一性がなくとも、育児介護等と両立した働き方を調整できる関係が生まれることに変わりはない。そのため、「契約の更新」は、業務内容の同一性は求めず、両当事者が同一である契約であれば該当するというべきである。

(4) 「育児」の範囲について

「指針の論点と方向性」は、法第13条の配慮の対象となる「育児」は、「小学校就学の始期に達するまでの子を養育することを指し」(5頁)とする。しかし、育児と仕事やキャリア形成の両立を果たすためには、少なくとも小学校6年生までの期間は柔軟な働き方が必要な場面が出てくると想定されることから、対象年齢は小学校6年生まで引き上げるべきである(日本労働弁護団「仕事と育児・介護の両立支援対策についての報告書に対する意見書」2024年2月2日)。

(5) プライバシーに係る情報共有について

法第13条は、特定受託事業者からの「申出」に応じた配慮を定めている。この点、「指針の論点と方向性」は、「申出の内容等には特定受託事業者のプライバシーに属する情報もあることから、当該情報の共有範囲は必要最低限とするなど、プライバシー保護の観点に留意すること。」(6頁)とする。しかし、情報の共有範囲が必要最低限であるかどうかの判断を特定にさせるのは、特定受託事業者が共有を想定していなかった範囲まで共有されてしまい、特定受託事業者のプライバシーを害するおそれがある。そのため、共有範囲については特定受託事業者と協議のうえ画定することとすべきである。

(6) 不利益取り扱いの例示について

「指針の論点と方向性」(8頁)では、「法第13条における申出及び配慮の趣旨を踏まえれば、特定業務委託事業者による次のイ及びロに掲げる行為は望ましくない取扱いであることに留意する必要がある。」として、以下を挙げる。

 

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「イ 特定受託事業者からの申出を阻害すること。

(例)

① 申出に際して、膨大な書類を提出させる等の特定受託事業者にとって、煩雑又は過重な負担となるような手続を設けること。

② 特定業務委託事業者の役員又は労働者が、申出を行うことは周囲に迷惑がかかるといった申出をためらう要因となるような言動をすること。

ロ 特定受託事業者が申出をしたこと又は配慮を受けたことのみを理由に契約の解除その他の不利益な取扱いを行うこと。

契約の解除その他の不利益な取扱いとなる行為には、特定受託事業者が申出をしたこと又は配慮を受けたことのみを理由として、例えば、次に掲げるものを行うことが該当する。

(例)

① 契約の解除を行うこと。

② 報酬を支払わないこと又は減額を行うこと。

③ 給付の内容を変更させること又は給付を受領した後に給付をやり直させること。

④ 取引の数量の削減

⑤ 取引の停止

⑥ 就業環境を害すること。」

しかし、上記は、いずれも、特定受託事業者の第13条に基づく配慮を求める権利を侵害する違法なものというべきであり、「望ましくない取扱い」ではなく、「違法行為」として明記すべきである。

2 法第14条について

(1) はじめに

法第14条は、ハラスメント対策に係る体制整備を定めるものであるところ、具体的には厚生労働省大臣の定める指針で示されるものとされている(参議院内閣委員会・2023年4月25日・宮本政府参考人答弁)。そして、「指針の論点と方向性」で示されている指針案(以下「フリーランス指針案」という)は、パワーハラスメントに関する記載事項について、「事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(以下「パワハラ防止指針」という。)を基本的に引き写しにした内容となっている。当弁護団がかねてから指摘してきたとおり、パワハラ防止指針自体がハラスメントを助長しかねないものを含んでおり、見直しがされる必要があることから(日本労働弁護団「パワハラ指針案及びセクハラ指針改正案に対する意見書」2019年12月10日)、フリーランス指針の制定を契機に抜本的に見直しをすべきである。

また、フリーランス指針案は、セクハラやマタハラについても、「事業主が職場における性的な言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(平成18年厚生労働省告示第615号)」(以下「セクハラ防止指針」という。)及び「子の養育又は家族の介護を行い、又は行うこととなる労働者の職業生活と家庭生活との両立が図られるようにするために事業主が講ずべき措置等に関する指針(平成21年厚生労働省告示第509号)」(以下「マタハラ・ケアハラ防止指針」という。)を引き写した内容となっているが、セクハラ防止指針及びマタハラ・ケアハラ防止指針が、平成18年や平成21年といった10年以上も前の内容であり、セクハラやマタハラに対し厳しく対処すべきという社会の在り方の変化に対応していない不十分なものとなっている。そのため、フリーランス指針の制定を契機として、セクハラ防止指針及びマタハラ・ケアハラ防止指針も改正されるべきである。

(2) 「業務委託に関して行われる」について

法第14条は、「業務委託に関して行われる」ハラスメントの防止対策を対象としている。この点、フリーランス指針案は、「「業務委託に関して行われる」とは特定受託業務従事者が当該業務委託に係る業務を遂行している場所又は場面で行われるものをいい、当該特定受託業務従事者が通常業務を遂行している場所以外の場所であっても、当該特定受託業務従事者が業務を遂行している場所については、含まれる。」(10頁)とする。

しかし、パワハラ・セクハラ・マタハラ・ケアハラは、必ずしも「業務を遂行する場所」で起こるとは限らず、業務時間外に就業場所とは全く異なる場所で起きることもある。例えば、労働者に関するパワハラの裁判例でも、居酒屋で暴行や暴言が行われたケース、休日に呼び出したり使い走りを命じたりしたケース、勤務時間外に家の掃除や家事をさせたりデート中の被害者を呼び出すなどのいじめを行ったケースにおいても、使用者の責任や労災が認められている。よって、このように業務時間外や就業場所とは異なる場所におけるハラスメント行為についても、特定業務委託事業者は防止措置を講ずべきである。そのように定義付けなければ、「業務を遂行する場所」のみの対策でよいと誤解し、業務時間外でのハラスメント防止対策を怠っていた事業者が、裁判に訴えられれば使用者責任・債務不履行責任を問われるという、使用者にとっても不幸な事態が生じかねない。指針には、「業務委託に関して行われる」を「仕事上の人間関係が現に及びまたは及びうる場所」と定義し、業務時間外や就業場所とは異なる場所におけるパワハラなどについても「業務委託に関して行われる」に当たり得ることを明記すべきである。

(3) セクハラについて

フリーランス指針案では、「対価型セクシュアルハラスメント」の典型例として、「ロ 特定業務委託事業者の雇用する労働者が事業所内において日頃から特定受託業務従事者に係る性的な事柄について公然と発言していたが、抗議されたため、当該特定受託業務従事者の報酬を減額すること。」を挙げる(12頁)。

しかし、「労働者が事業所内において日頃から特定受託業務従事者に係る性的な事柄について公然と発言していた」こと自体がセクハラに該当するものであり、報酬の減額のみがセクハラかのような記載は著しく不適切である。「労働者が事業所内において日頃から特定受託業務従事者に係る性的な事柄について公然と発言していた」こともセクハラに該当することを明記するか、他の事例に変更すべきである。

次に、「「環境型セクシュアルハラスメント」とは、業務委託に関して行われる特定受託業務従事者の意に反する性的な言動により特定受託業務従事者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」(12頁)とする。

しかし、「看過できない程度の支障」が生じなければセクハラの対象に含まれないというのは限定し過ぎである。看過できる程度の支障と看過できない程度の支障をいかに区別するかも不明である。このような指針はいたずらにセクハラの範囲を制限するものであり、当該記載は「能力の発揮に悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で支障が生じること」とすべきである。

また、フリーランス指針案では、環境型セクシャルハラスメントの典型例として以下を挙げる(12頁)。

「イ 就業場所において特定業務委託事業者の雇用する労働者が特定受託業務従事者の腰、胸等に度々触ったため、当該特定受託業務従事者が苦痛に感じてその就業意欲が低下していること。

ロ 元委託事業者の雇用する労働者が当該元委託事業者の事業所において就業する特定受託業務従事者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布したため、当該特定受託業務従事者が苦痛に感じて仕事が手につかないこと。」

しかし、典型例として、「腰、胸等に度々触った」こと及び「特定受託業務従事者に係る性的な内容の情報を意図的かつ継続的に流布した」ことを挙げるのは、腰や胸に「度々」触らなければセクハラに該当せず、特定受託業務従事者に係る性的な内容の情報を「意図的かつ継続的に」流布しなければセクハラに該当しないかのような誤解を与えるため著しく不適切である。そのため、「度々」という記載、「意図的かつ継続的に」という記載は削除すべきである。

(4) マタハラについて

フリーランス指針案では、「イ 特定受託業務従事者が、①妊娠したこと、②出産したこと、③妊娠又は出産に起因する症状により業務委託に係る業務を行えないこと若しくは行えなかったこと又は業務の能率が低下したこと(以下「妊娠したこと等」という。)に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「状態への嫌がらせ型」という。))の典型例として、以下を挙げる。

「イ 妊娠したこと等のみを理由として嫌がらせ等をするもの

客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなものが該当する。特定受託業務従事者が妊娠したこと等により、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動又は契約に定められた業務に従事させないことをいう。以下同じ。)をすること(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者等に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。」(13頁)

しかし、「特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなもの」は、セクハラについて限定し過ぎているのと同様の問題があるから、当該記載は「言動を受けた特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で支障が生じるようなもの」とすべきである。

また、当該典型例のうち、「特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動又は契約に定められた業務に従事させないことをいう。以下同じ。)をすること(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者等に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。」は、「繰り返し又は継続的」に嫌がらせをしていなければマタハラに該当しないと誤解を与えかねず、また、「当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者等に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む」は、意に反することの明示がなければマタハラに該当しないかのような誤解を与えるもので、著しく不適切である。そのため、当該記載は、「特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、嫌がらせ等(嫌がらせ的な言動又は契約に定められた業務に従事させないことをいう。以下同じ。)をすること。」とすべきである。

次に、フリーランス指針案では、「ロ 特定受託業務従事者が、妊娠若しくは出産に関して法第13条第1項若しくは第2項の規定による配慮の申出(以下「配慮の申出」という。)をしたこと又はこれらの規定による配慮を受けたこと(以下「配慮を受けたこと」という。)に関する言動により就業環境が害されるもの(以下「配慮申出等への嫌がらせ型」という。)」の典型例として以下を挙げる(13~14頁)。

「イ 配慮の申出を阻害するもの

客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の配慮の申出が阻害されるものが該当する。

①~② 略

③ 特定受託業務従事者が配慮の申出をしたい旨を特定業務委託事業者の雇用する労働者に相談したところ、繰り返し又は継続的に申出をしないよう言うこと(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)

④ 特定受託業務従事者が配慮の申出をしたところ、特定業務委託事業者の雇用する労働者が、繰り返し又は継続的に当該申出を取り下げるよう言うこと(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)」

ロ 配慮を受けたことにより嫌がらせ等をするもの

客観的にみて、言動を受けた特定受託業務従事者の能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなものが該当する。

特定業務受託事業者が配慮を受けたことにより、特定業務委託事業者等が当該特定受託業務従事者に対し、繰り返し又は継続的に嫌がらせ等をすること(当該特定受託業務従事者がその意に反することを当該特定業務委託事業者又はその雇用する労働者に明示しているにもかかわらず、更に言うことを含む。)。」

しかし、上記で述べたのと同様に、「繰り返し又は継続的に」でなければマタハラに該当しないかのような誤解を与え、特定受託業務従事者が意に反することを明示していなければマタハラに該当しないかのような誤解を与えるものであり、著しく不適切であるから、当該記載は削除すべきである。また、「能力の発揮や継続就業に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じるようなもの」のうち「重大な悪影響」や「看過できない程度の支障」というのも限定が過ぎることは上記のとおりであり、削除すべきである。

(5) パワハラについて

ア  「取引上の優越的な関係を背景とした」

フリーランス指針は、法第14条第1項第3号の「取引上の優越的な関係を背景とした」言動について、「業務委託に係る業務を遂行するに当たって、当該言動を受ける特定受託業務従事者が当該言動の行為者とされる者(以下「パワーハラスメントの行為者」という。)に対して抵抗又は拒絶することができない蓋然性が高い関係を背景として行われるもの」を指す(14~15頁)とする。

しかし、「抵抗または拒絶できない蓋然性が高い関係」とは、大きな力関係の差を必要とする定義であり、「抵抗できない関係ではない」としてパワハラから除外される危険性がある。また、特定受託事業者がパワハラを訴えた際に、「抵抗または拒絶できない関係ではないからパワハラには当たらない」との特定業務委託事業者からの反論を許すことになる。

これまで、労働者の場合、「優越的」(優位性)とは、職務上の地位に限らず、人間関係や専門知識など様々な優位性が含まれるなど広く解釈されてきた。「抵抗または拒絶できない蓋然性が高い関係」との定義は、これまでの解釈を否定し、パワハラの範囲及び特定業務委託事業者の責任を大幅に限定するものであり、大きな問題がある。

本来、業務上の相当な範囲を超え特定受託事業者の就業環境を害する行為は、優越的関係の有無にかかわらず防止すべきであるから、「優越的な関係」という要件自体が法改正によって削除されるべきである。また、「優越的な関係」という要件が文言上要求されているとしても、その意味するところは、能力・資格・実績・成績などの個人的能力、容姿や性格、性別、性的指向・性自認など、あらゆる要因から事実上生じた人間関係を広く含む概念であることを指針で確認すべきである。

パワハラが法律で定義されたことにより、逆に保護対象範囲が狭められるとか、パワハラではないとの不適切な認識を与えることになってはならない。

イ  「業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えた」言動

フリーランス指針は、法第14条第1項第3号の「業務委託に係る業務を遂行する上で必要かつ相当な範囲を超えた」言動とは、「社会通念に照らし、当該言動が明らかに特定業務委託事業者の業務委託に係る業務を遂行する上で必要性がない、又はその態様が相当でないもの」を指すとする(15頁)。

しかし、「明らかに」必要性がないという限定を加えることは、明らかとまではいえずとも必要性を欠くものについてパワハラに該当しないということになり、必要性限定しすぎであってパワハラを助長しかねない。

また、フリーランス指針案は、上記に該当する典型例として、以下を挙げる(15頁)。

「イ 業務の遂行上明らかに必要性のない言動

ロ 業務の目的を大きく逸脱した言動   」

しかし、上記で述べたことと同様に、業務遂行上「明らかに」必要性のない言動、業務の目的を「大きく」逸脱した言動というのは限定が過ぎるものであり、パワハラを助長しかねず、当該限定は削除すべきである。

ウ 「就業環境を害する」

フリーランス指針案は、法第14条第1項第3号の「就業環境を害する」とは、「当該言動により特定受託業務従事者が身体的又は精神的に苦痛を与えられ、特定受託業務従事者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じることを指す」(15頁)とする。

しかし、上記のとおり、「能力の発揮に重大な悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で看過できない程度の支障が生じること」は、「看過できない程度の支障」が生じなければパワハラの対象に含まれないというのは限定し過ぎである。看過できる程度の支障と看過できない程度の支障をいかに区別するかも不明である。このような指針はいたずらにパワハラの範囲を制限するものであり、当該記載は「能力の発揮に悪影響が生じる等当該特定受託業務従事者が就業する上で支障が生じること」とすべきである。

エ パワハラに該当しない例について

フリーランス指針案では、パワハラに該当しない例を挙げている(16~18頁)。しかし、これまで当弁護団が指摘してきたとおり(日本労働弁護団「パワハラ指針案及びセクハラ指針改正案に対する意見書」2019年12月10日)、パワハラに該当しない例は「弁解カタログ」となり得るものであり、該当しない例を記載することは著しく不適切であり、削除すべきである。

3 第16条について

(1) クーリング期間について

法第16条第1項は中途解除等の事前予告義務を定める。第6回検討会の「これまでの議論を踏まえた政省令の論点と方向性について」は、「法第16条における「契約の解除(契約期間の満了後に更新しない場合を含む。)をしようとする場合」について「○継続的業務委託に係る契約であって最後の契約期間満了後の一定期間(契約の更新と認められる空白期間の上限)内に次の契約を締結しない場合には、「契約を更新しない」状態であると評価されうることとなる。」とする(3頁)。

しかし、契約の更新と認められる空白期間の上限(クーリング期間)を設けると、当該クーリング期間を空けての契約の再締結によって容易に規制を免れることができ、かつ、規制を免れるためにクーリング期間内の契約更新が控えられることで、当該期間は契約が締結できず新たな報酬が得られないなど特定受託事業者の不利益となりかえない。そのため、クーリング期間は設けるべきではない。

この点、「政省令等の論点と方向性」では、クーリング期間の記載が削除されたが、クーリング期間が不要であることは維持すべきである。

(2) 予告義務について

「政省令等の論点と方向性」は、「「契約の不更新をしようとする場合」に30日前の予告を義務づけていることを踏まえれば、不更新をしようとする意思をもって「契約を更新しない」状態となる場合のみ予告を義務づけることとし」、「(契約の不更新をしようとする場合に該当しないと考えられる例)」として、「断続的な業務委託契約であって、特定業務委託事業者が次の契約申込を行うことができるかが明らかではない場合(※)」「なお、(※)の場合について、次の契約申込みを行わないことが明らかになった時点でその旨を伝達することが望ましいとしてはどうか。」(4頁)とする。

しかし、当初、次の契約申込を行うことができるかが明らかではなかったとしても、契約更新をしないことが明らかになった時点で、「契約の不更新をしようとする場合」に該当するというべきであり、予告義務が課されるべきである。

(3) 理由開示の方法

法第16条第2項は、契約の解除・不更新等の理由開示を定めるが、その開示方法については「厚生労働省令で定めるところ」によるものとされている。「政省令等の論点と方向性」は、その理由開示の方法に関する「厚生労働省令で定めるところ」として規定する事項として以下を挙げる(4~5頁)。

「・書面の交付

・ファクシミリ

・電子メール等(SNSを含む。)」

しかし、理由の開示方法は、送信内容を削除が可能なSNSは含めるべきではない。SNSの中には送信を取り消す機能があるものもあり、一度開示された内容が、後から特定業務委託事業者によって削除できるとすると、特定受託事業者は手元の証拠を失うとともに、特定業務受託事業者が開示内容を変更等する危険もある。そのため、送信内容の削除が可能なSNSによって開示することは対象に含めるべきではない。

第4 「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会報告書」について

1 はじめに

2024月1月19日、公正取引委員会に設置されている「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会」(以下「検討会」という)は、法の施行に向けて政令又は公正取引委員会規則で定めることとされている事項について、「特定受託事業者に係る取引の適正化に関する検討会報告書」(以下「検討会報告書」という)を発表した。

検討会報告書は、法第2条第4項4号、法第3条第1項かっこ書、法3条第2項本文、法3条第2項ただし書、法第4条第3項、法第5条第1項柱書、法第10条において、政令・規則に委任されている各事項について、本検討会の検討結果を示しており、公正取引委員会は、報告書で示された方向性を踏まえ、具体的な規定内容を検討するとしている。

しかしながら、検討会報告書には、評価できる部分もあるものの、いわゆる「フリーランス」の多くが包含される特定受託事業者の保護においては不十分な部分が存在し、真に、フリーランスと発注会社の間における交渉力や情報収集力の格差を是正するためには、改善されなければならない。

このような観点から、本意見書では、今後の具体的な政令・規則の制定内容の検討に向けて、検討会報告書で示された方向性について、評価すべきは評価し、問題がある点についてはその旨とあるべき方向性について指摘した上で、当弁護団としてさらなる改善を求めるものである。

2 法第3条第1項による委任事項(業務委託をした場合に明示しなければならない事項)について

(1) はじめに

法第3条第1項では、業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合は、直ちに、公正取引委員会規則で定めるところにより、特定受託事業者の給付の内容、報酬の額、支払期日その他の事項を、書面又は電磁的方法により特定受託事業者に対し明示しなければならないこととされている。

(2) 評価できる点

検討会報告書は、明示事項の基本的な方向性として、「本法第3条は、業務委託をする際に発注者側に当該業務委託契約の内容を明示させることによって、発注者とフリーランスとの間のトラブルを未然に防止する趣旨で規定されたものであるところ、下請法においても、同様に、トラブルの未然防止の観点から、発注時の取引条件等を記載した書面の交付を義務付けている。少なくとも下請法第3条の書面の記載事項…とされている項目については、本法においても明示事項とすることが適当と考えられる。」としており、この点は評価できる。

(3) 問題点

ア 明示事項とした上で、ガイドライン及びモデル契約書で方向性を示すべきであること

もっとも、検討会報告書は、「原材料等を有償支給する場合の、その品名、数量、対価及び引渡しの期日並びに決済期日及び決済方法」、「納品・検収方法」、「交通費、宿泊費、材料費等の諸経費」、「違約金等」、「知的財産権の帰属」、「業務委託事業者…の…実際の氏名」、「その他の項目(業務委託に係る契約の終了事由、中途解除の際の費用、業務委託事業者の住所、やり直しが生じ得る場合の条件・範囲等)」については、明示事項として義務付けることが必要とまでは考えられないとしている。

しかし、実務上、形式上業務委託契約とされている、いわゆる「フリーランス」と発注事業者との間で、諸経費の負担、契約の終了事由などをめぐり、既に法的紛争が発生している。そうすると、トラブルを未然に防止するためには、あらかじめ上記各事項についても明示しておくべきである。

検討会報告書も懸念しているとおり、明示事項としてしまうことにより、かえって、契約書のひな形を用意することが多い発注事業者側に、一方的に、有利な内容の条項が入れられてしまうという問題の発生が危惧される。かかる問題に対しては、業種ごとの契約のひな形を作成する、ガイドラインにおいて、発注事業者に一方的に有利な条項を入れてしまうことは本法の趣旨に反するなどの方向性を示すことで、悪しき内容が明示されることを防ぐことができると考える。

たとえば、知的財産権の帰属については、「知的財産取引に関するガイドライン」において、中業企業からそのノウハウを召し上げることを制限すべきであるとの方向性が示されており、具体的に、「オープンイノベーション促進のためのモデル契約書」において、当該契約により生じた知的財産権は中小企業(スタートアップ)に帰属する旨の契約書のひな形が公開されている。

このような中小企業における施策を参考に、本法においても、明示事項とした上で、ガイドラインと契約書のひな形により、あるべき方向性を規定していくべきである。

イ 紛争解決の観点から業務委託事業者の氏名・住所は必ず明示すべき

検討会報告書は、「業務委託事業者及び特定受託事業者の名称については、…実際の氏名までも明示事項として義務付けることが必要とまでは考えられない。」「業務委託事業者の住所、やり直しが生じ得る場合の条件・範囲等)については、…明示事項として義務付けることが必要とまでは考えられない。」としている。

たしかに、近時、フリーランスと発注事業者との取引は、SNSなどを通じてインターネット上で行われる事例も多く、取引上、氏名及び住所の開示が必須とはいえない。しかしながら、実際の氏名と住所が明らかでなければ、一度紛争となってしまい、SNSなどでの連絡も拒否されてしまえば、それ以上、交渉を続けることは困難となってしまう。まして、司法手続を利用することは著しく困難となってしまう。

現状、SNSなどの個人情報開示は厳格な基準が設けられており、SNSなどの情報から、取引の相手方を特定することを困難である。

したがって、このような紛争解決の観点から、特定受託事業者の保護のため、業務委託事業者の実際の氏名・住所を明示事項とするべきである。

少なくとも、特定業務委託事業者は、法人、もしくは、個人であっても従業員を使用するものであり、一定の規模で事業を運営しているものであることから、実際の氏名・住所を明示することとしても、プライバシーの問題は生じないはずである。

3 法第5条第1項柱書による委任事項(本法第5条の規定の対象となる業務委託の期間)について

(1) 期間を1か月としている点は適当である

法第5条では、特定業務委託事業者が特定受託事業者に対し、業務委託をした場合にしてはならない行為を定めている。この規定の対象となる業務委託は、「政令で定める期間以上の期間行うもの(当該業務委託に係る契約の更新により当該政令で定める期間以上継続して行うこととなるものを含む。)」に限定されている。

この「政令で定める期間」について、検討会報告書は、「本法第5条の規定の対象となる業務委託の期間(特定業務委託事業者が業務委託をした日を「始期」、特定業務委託事業者が業務委託に係る給付を最後に受領することとなる日を「終期」とする期間)は「1か月」とする方向とすることが適当である」であるとしている。

そもそも期間を定めるべきかを別とすれば、期間を定めるとすれば、検討された期間のうち、最も短いものである1か月が適当である。したがって、この点で検討会報告書は評価できる。

(2) 契約更新について

法第5条の「当該業務委託に係る契約の更新」について、契約の更新に伴う「空白期間」(連続する前後の業務委託に期間的空白がある場合にどの程度の期間的空白まで「当該業務委託に係る契約の更新」と認められるか)という問題がある。

この点につき、検討会報告書は、「一定の空白期間が存在する場合であっても契約の更新とすること及び当該空白期間は固定した日数とするなど分かりやすいものとすること」としている。検討会報告書は、具体的な空白期間を明示してはいないが、法の潜脱を防ぐため、仮に設定するとしても、空白期間は、長く設定すべきである。具体的には、少なくとも、直近の契約の契約期間の半分以上の空白期間が必要であるとすべきである(労契法18条2項参照)。

また、「契約の同一性」(連続する前後の業務委託がどの程度同一であれば「当該業務委託に係る契約の更新」と認められるか)という問題がある。

この点につき、検討会報告書は、「契約の同一性に関する判断基準をガイドライン等で明確化することが期待される。」とするのみで、具体的な判断基準を明示してはいない。しかしながら、検討会において一部から出された意見のとおり、「給付内容の同一性の判断が困難なことも考えられるため、混乱を防ぐ観点からは、同じ委託事業者からの業務委託であれば原則として「当該業務委託に係る契約の更新」と認めるべきである。

4 法第3条第1項かっこ書(電磁的方法)について

本法第3条では、業務委託事業者は、特定受託事業者に対し業務委託をした場合に、直ちに、明示事項を書面又は電磁的方法で明示しなければならないとされている。

この「電磁的方法」について、検討会報告書は、「SNSも含めて電磁的方法を広く認めることが適切であると考えられる。」「送信データを事後的に削除できる媒体を使用する際の留意点(明示事項が示された際のメッセージのスクリーンショット機能を用いた保存等を受注者側で行うことの推奨等)をガイドライン等で明らかにするとともに、アカウントの利用停止という状況が発生した場合に採り得る対応を当事者間で取り決めておくことが望ましい旨をガイドライン等で明らかにすることが期待される。」としている。

しかしながら、報告書自身も問題点を認識しているとおり、削除できるような方法やアカウント停止で閲覧できなくなる方法による明示では、一度紛争が行った際に紛争解決の指針として参照することが困難となってしまうおそれがある。ガイドラインで方向性を示すのでは不十分であり規則上明文で排除すべきである。

5 法第3条第2項ただし書(特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合)について

法第3条第2項ただし書は、特定受託事業者からの書面交付要求があった場合であっても、業務委託事業者は、「特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合」には書面交付を拒否することができるとしている。

この「特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合」について、検討会報告書は、「①特定受託事業者が自らの意思で電磁的方法による明示を希望し、それに業務委託事業者が応じたにもかかわらず、その後、当該特定受託事業者が合理的な理由なく改めて書面の交付も求める場合及び②特定受託事業者の求めに応じて既に業務委託事業者が書面の交付を行った場合(複数回の書面交付請求があった場合)が考えられる。」「前記①及び②に加えて、書面を交付することなく電磁的方法により業務委託に係る手続が完結する場合も特定受託事業者の保護に支障を生ずることがない場合に含めることが考えられる。」としている。

しかしながら、法3条による明示事項が記載された書面の重要性と、書面の発行の手間とを比較したときに、前者が後者よりも優越的することは明らかである。したがって、上記①及び②の場合は、いずれも書面交付すべきであり、書面交付不要なのは、害意を持って要求するなど特段事情のある場合に限るべきある。

実際、下請法においては、書面交付が原則とされているのであり、法においても、特定受託事業者からの求めがあった場合に書面交付を拒むことができるのは限定的に解するのが相当である。

以上