公立学校への一年単位の変形労働時間制導入に反対する集会アピール

2019/11/25

公立学校への一年単位の変形労働時間制導入に反対する集会アピール

 公立学校の教員に1年単位の変形労働時間制(以下「本制度」)を適用できるようにすることを含む「公立の義務教育諸学校等の教育職員の給与等に関する特別措置法」(給特法)の改正案の審議が進められている。

 そもそも公立学校の教員については、給特法において給料月額4%に相当する教職調整額を支給する代わりに、時間外勤務手当及び休日勤務手当を支給せず、いわゆる超勤4項目(①校外実習等、②学校行事、③職員会議、④非常災害等)を除いては時間外労働を命じることはできない建前になっている。そのため、恒常的な時間外労働が生じているにもかかわらず、これらは「労働」ではなく教員の自発的な業務遂行であるとされ、このことから使用者による労働時間管理が疎かになり、教員に過大な業務を命じることにつながり、長時間労働が蔓延している。

 このような状況で導入されようとしている本制度は総量としての労働時間を削減する効果はなく、むしろ繁忙期の所定労働時間が増えることで、これまでよりも繁忙期の労働時間が増大し、過労死等のリスクが一層高まることが懸念される。さらに、本制度が導入されることにより、給特法及びそれに基づく現状の抜本的な見直しと改善という、本来行われるべきことが後回しにされるおそれがある。

他方、政府与党は、夏休み期間中などに休日をまとめ取りできるようにするために本改正が必要であるという。しかし、現在の法制度においても休日のまとめ取りをすることは可能であり、それを促進するためにはそのための法律や条例の改正を行えばよく、本制度を導入する必要性は認められない。

 加えて、本改正案では、労基法上の1年単位の変形労働時間制が要件とする労使協定ではなく、条例により適用対象等を定めることとなっており、当事者である教員の意向にかかわらず一方的に所定労働時間を割り振りすることが可能となる。労基法は労働条件の最低基準を定めるものであるところ、本制度は、労働者の意見を反映させるために労使協定の締結を要件とした労基法の趣旨を没却するものであり、公立学校の教員に最低基準を下回る働かせ方を強いるものであるといえる。さらに、労基法の規制を緩和した本制度の導入を一たび許せば、今後他の公務労働者・民間労働者にも同様の規制緩和が波及するおそれもある。

 このような問題だらけの本制度導入に対しては、現場の教員をはじめ多くの労働者から反対の声が上がっているが、国会では現場の声を十分に聴くこともなく、本制度を導入する必要性・相当性が全く明らかにされないまま審議が進められている。しかし、上記の問題点からすれば本制度を導入すべきでないことは明らかであり、真に行うべき制度改善から目をそらしているに過ぎない。

 私たちは、本制度の導入に反対するとともに、教員の長時間労働是正のために必須となる業務負担軽減や教員の増員への取り組みを強め、給特法の見直しを含めた抜本的な制度改善を行うことを求める。

2019年11月24日 集会参加者一同