「日本版ライドシェア」の急速な拡大に反対する緊急声明
2025/1/23
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「日本版ライドシェア」の急速な拡大に反対する緊急声明
2025年1月23日
日本労働弁護団 幹事長 佐々木 亮
大阪府は、2025年4月から開催される大阪・関西万博による交通需要の増加等に対応することを目的に、大阪市、国土交通省と「万博開催期間中における日本版ライドシェア勉強会」を開催し、2024年12月19日、日本版ライドシェアを、大阪・関西万博期間中、大阪府域全域で24時間、運行可能とする方針を発表した。そして、同月20日には、国土交通省物流・自動車旅客課長が「地域公共交通会議等において協議が調った場合の日本版ライドシェアの営業区域等の取り扱いについて」において、日本版ライドシェアについても「タクシーと同様に協議が調った期間や区域の範囲内において営業区域外旅客運送を実施することを可能とする。」と発した。
そもそも、日本版ライドシェアが、いわゆる二種免許を必要としない一般ドライバーが自家用自動車によって有償旅客運送をすることを許容しており、いわゆる「白タク」を事実上合法化するものに他ならないこと、また、特に2014年以降、車両台数規制等を通じたタクシー運転者の労働条件改善を図ってきた政策の流れに反し、事実上野放図な規制緩和を容認するもので、タクシー車両を必要以上に増加させ、ひいてはタクシー運転者の地位や労働条件を悪化させる可能性があることは、すでに当弁護団が発した声明(2024年2月26日付「『ライドシェア』解禁に反対する緊急声明」、同年4月18日付「『ライドシェア』の実施及び法制化に反対する声明」)において指摘したとおりである。
大阪・関西万博開催期間中、大阪府全域において24時間、日本版ライドシェアの運行を可能とする方針は、大阪・関西万博期間中の大阪府内では、「公共の福祉のためにやむを得ない場合」にのみ例外的に自家用自動車によって有償旅客運送をすることを許容する道路運送法78条3号の規制を完全に排除していわゆる「白タク」を合法化するものであって、法の支配の観点からも断じて容認できない。また、大阪府内のタクシー運転者ではない自家用車による営業車を過大に増加させる可能性を否定できず、タクシー運転者の労働条件が悪化すること、さらには、交通の安全性にも悪影響があることを否定できない。当弁護団は、大阪府、大阪市、及び、国土交通省に対して、大阪・関西万博開催期間中における日本版ライドシェア実施の方針を速やかに撤回するよう求める。
ところで、日本版ライドシェアは、2024年3月29日に「法人タクシー事業者による交通サービスを補完するための地域の自家用車・一般ドライバーを活用した有償運送の許可に関する取扱いについて」(令和6年3月29日 国自安第181号、国自旅第431号、国自整第282号)(なお、この通達の法的問題点については、すでに当弁護団が発した声明において指摘したとおりである。)が発せられて以降、雨天や酷暑が予想される場合、大型イベントの開催に伴い一時的な移動需要の増加が予想される場合、また、鉄道等公共交通機関に遅延が生じた場合にも実施できるよう、さらには、一定の場合に配車アプリを使わないで実施することも許容する物流・自動車局旅客局長による事務連絡が次々と発せられている。このような行政の権限による無限定な対象範囲の拡大は、「公共の福祉のためにやむを得ない場合」にのみ例外的に自家用自動車によって有償旅客運送を許容するという法の趣旨を没却するものであるだけでなく、先に指摘した、これまでのタクシー事業に対する再規制の政策の流れにも反するものであるというほかない。
当弁護団は大阪・関西万博開催期間中における日本版ライドシェア実施の方針の速やかな撤回に加え、改めて、日本版ライドシェアの実施に反対するとともに、あらゆる「ライドシェア」の解禁の動き、及び、その法制化に断固反対する。
以上