会社に確認したところ、「解雇する」とのことでした。「労働基準法どおりの解雇予告手当は支払う」と言われてしまいました。もうどうしようもないのでしょうか?

2016/10/9

解雇をするには合理的理由が必要です。

解雇は、使用者側からの一方的な労働契約解除ですが、解雇をするには合理的理由が必要になります。

労働契約法(平成20年3月1日施行)の第16条では、「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。」と定められました。

この規定は、それまで労働基準法第18条の2に規定されていた条文を、移したものです。そして、この規定は、これまでに多数の裁判例で確立されていた解雇権濫用法理を、法律上明定したものです。

労働基準法20条1項には、解雇予告のことが定められています。労働者を解雇しようとする使用者が、この規定を守らねばならないことは当然ですが、この規定を守っていればすべての解雇が法的に有効だと思うのは間違いなのです。この規定を守っていても、やはり解雇が有効であるためには、合理的な解雇理由が必要なのです。

まずは使用者に解雇理由を説明させましょう。

従って、使用者に解雇理由を明らかにさせましょう。その際に、「リストラだから」とか「不況で苦しいから」という一般的・抽象的説明に終わらせないようにしましょう。具体的な理由を説明させましょう。例えば、勤務成績不良が理由だと言われた場合は、いつのどのようなことが勤務成績不良にあたるのか具体的に説明を求めましょう。

使用者による解雇理由の説明は記録に残るようにしましょう。場合によっては、使用者に配達証明付き内容証明郵便を送って解雇理由の説明を求め、使用者から郵便で回答してもらうのもよいでしょう。

このような解雇理由を明確にさせる過程で、解雇の合理的理由がないことが明らかになる場合があります。合理的理由といえるかどうか自分ではわからない場合には、行政や労働組合の労働相談窓口、弁護士などに相談してみましょう。

なお、使用者が説明した解雇理由に反論するために、出勤退勤の記録(タイムカード等)や休暇取得の記録(休暇届等)や業務記録(営業日報、週報、月報、スケジュール管理表、目標実績管理記録等)が有効に使える場合がありますので、これらのものの控えや写しを残すことができる場合は、普段から確保しておくことが必要です。

また、使用者は通常は就業規則に解雇事由や懲戒解雇事由を定めているので、普段から就業規則の写しを確保しておくことも大切です。使用者は就業規則を変更することがありますが、労働者としては変更後の就業規則だけでなく、変更前のものも確保しておくべきです(変更後のものが適用されない場合があるので)。

整理解雇の場合には4つの要件をみたすことが必要です。

解雇理由が、経営悪化などの使用者側の経営事情にある場合は、整理解雇と呼ばれ、以下の4要件を満たす場合以外は、解雇権濫用となって、解雇は法的に無効となります。

  1. 人員削減の必要性が存在すること
  2. 解雇を回避するための努力義務がつくされていること
  3. 解雇される者の選定基準及び選定が合理的であること
  4. 解雇手続が妥当であること(労働者に対する説明、労働組合との協議など)

平成15年労基法改正にあたり、衆参両院の厚生労働委員会は附帯決議を行っています。そのうち参議院厚生労働委員会の附帯決議では、「使用者に対し、東洋酸素事件(東京高裁昭和54年10月29日判決)等整理解雇4要件に関するものを含む裁判例の内容の周知を図ること。」について、適切な措置を講ずることを政府に求めています。

そもそも法令で解雇が禁止されている場合もあります。

労働基準法、労働組合法、雇用機会均等法などの法令には、解雇が禁止される場合がいくつか規定されています。これに違反する解雇は、解雇権濫用かどうか問題にすることなく、法的に無効です。

(ただし例外も定められていますので詳しくは条文で確認して下さい)

  • 業務上の傷病による休業期間及びその後の30日間は、解雇できない(労基法19条)。
  • 産前産後の女子が労基法65条によって休業する期間及びその後30日間は、解雇できない(労基法19条)。
  • 国籍、信条、社会的身分を理由とする解雇をしてはならない(労基法3条)。
  • 労働者が労基法違反の事実や労働安全衛生法違反の事実を労基署や労働基準監督官に申告したことを理由として解雇してはならない(労基法104条、労安法97条2項)。
  • 労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたこと、またはあっせんを申請したことを理由として解雇してはならない(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律4条3項、5条2項)。
  • 女性労働者が都道府県労働局長に紛争解決の援助を求めたこと、または調停を申請したことを理由として解雇してはならない(男女雇用機会均等法12条2項、13条2項)。
  • 労働組合の組合員であること、労働組合に加入したり、結成しようとしたこと、労働組合の正当な行為をしたことを理由とする解雇は、不当労働行為になり(労組法7条1項)、また憲法28条の団結権等の保障を内容とする公序良俗に違反し、無効。
  • 解雇について、労働者が女子であることを理由として、男子と差別的取扱をしてはならない(男女雇用機会均等法8条1項)。
  • 女子が婚姻し、妊娠し、出産し、又は労基法65条の産前産後の休業をしたことを理由として解雇してはならない(男女雇用機会均等法8条3項)。
  • 育児休業・介護休業の申出をしたこと、育児休業・介護休業をしたことを理由とする解雇はできない(育児介護休業法10条、16条)。

法的に有効な解雇と無効な解雇の見分け方の要点は、上に述べたとおりです。では、法的に無効な解雇を強行された場合、どうすればよいでしょうか。

自分で交渉する。労働組合に加入して団体交渉する。労政事務所に相談して解決をあっせんしてもらう。裁判を起こす。その他いろいろ方法はあります。どの方法をとるのが良いのかは事案ごとに異なりますし、あなたが何を目標にするのかによっても異なります。詳しいことをお知りになりたい方は、労働弁護団発行の「労働相談実践マニュアル」をご覧下さい。