女性の活躍推進新法に関する決議
2014/11/8
政府は「日本再興戦略」改訂2014の中で、女性の活躍推進へ向けた目標として、2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にすることを掲げ、2014年10月17日、「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案」を国会に提出した。働く女性の権利向上が遅々として進まず、同法案に関する同年9月30日付労働政策審議会(雇用均等分科会)報告(建議)においても、「均等法制定から30年経つが、現在もなお、採用・配置・育成等、あらゆる側面において男女間の実質的格差が残っている」とされるところ、「女性の活躍推進」という取組の方向性自体は評価できるものであり、真の男女平等実現に向けて上記目標はぜひ達成されるべきである。
本法律案は、常時雇用する労働者の数が301人以上の事業主に行動計画策定義務や女性の活躍に関する情報の提供義務を負わせているものの、一律の数値目標は見送られ、具体的な行動計画・目標の内容も現状把握のための情報公表項目も明記されておらず、実効性に欠けることは明らかである。常時雇用する労働者の数が300人以下の事業主に至っては、これらの措置を講じる努力義務しか負わない。このままでは政府自身のKPI(成果指標、Key Performance Indicator)である「2020年に指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という目標も実現できないことは明白である。指導的地位への登用推進を現実化するためには、一律の数値目標を設けるとともに、全事業主に共通した項目の公表を義務づけ、目標不達成の場合の制裁規定を置くなど、具体的かつ実効的な内容の法的枠組の構築がなされなければならない。そもそも、女性の活躍を真に阻む要因である性別役割分担意識の解消、長時間労働の是正といった就労環境改善の視点が欠かせない。
むしろ、すべての女性が輝くためには、すべての就業状態・ライフステージにある女性が安定した雇用の下、差別のない職場で働けるよう就業環境の整備が必要である。しかし、本法律案の内容では指導的地位に就くことが可能な、男性と同様に無制限に働くことが出来る一部の女性労働者しか「恩恵」を受けることはできず、ジェンダー平等、格差是正のための取組もない。働く女性の過半数を非正規労働者が占めるところ、政府は雇用の安定を図るどころか、不安定雇用の典型である派遣労働者の増加が確実に予想される派遣法改悪法案、長時間労働を助長する「新たな労働時間制度」の導入など「女性の活躍推進」とはベクトルが真逆の労働法制改悪法案・政策を次々と打ち出している。
日本労働弁護団は、拙速で形ばかりの新法を制定するのでなく、女性労働者が置かれた現状に目を向け、当事者の声を反映した、真に女性の活躍推進に資する法整備が行われることを求め、女性の活躍推進と逆行する労働法制改悪に強く反対する運動を継続していくことをここに決意する。
2014年11月8日
日本労働弁護団第58回全国総会