「秘密保護法」制定に強く反対する決議
2013/11/9
「秘密保護法」制定に強く反対する決議
安倍自公政権は、2013年10月25日、「特定秘密の保護に関する法律(以下「秘密保護法」)」を国会に提出し、今臨時国会で成立させようとしている。「秘密保護法」は、①防衛、②外交、③特定有害活動及び④テロリズムの防止の4分野を対象として、極めて広範囲にわたる行政に関する情報を「特定秘密」に指定し、何が「特定秘密」に指定したのかを明らかにすることなく、「特定秘密」を故意のみならず過失により漏えいさせる行為(22条1、2、4及び3項)、「特定秘密を保有する者の管理を害する行為」(23条1項)等を厳しく罰するものである。さらに、「故意の漏洩」と「不正入手」については、「共謀」「教唆」「扇動」も処罰の対象としている(24条)。また、「秘密保護法」は、「特定秘密」を管理するために、「特定秘密」と接する本人及び「本人の身近にあって、本人の行動に影響を与えうる者」のプライバシー情報や思想・信条を調査することができる「適性評価制度」を規定している(12~17条)。
すでに、日弁連、各単位弁護士会、労働組合、市民団体、マスメディアなどが、「秘密保護法」制定に強く反対しているとおり、「秘密保護法」のいう「特定秘密」および「特定取得行為」の概念は過度に広範かつ漠然不明確であり、憲法上保障された知る権利、取材活動、報道活動等の重大な侵害となり、また「適性評価制度」については、プライバシーや思想・信条の自由に対する重大な侵害を招くものである。「秘密保護法」は、民主主義国家の基盤である「情報公開」、「報道の自由」、「知る権利」を侵害する憲法違反の法律であることは明らかである。
また、「秘密保護法」は労働者の権利をも大きく脅かすものである。直接的には、公務員、独立行政法人、行政機関から事業委託を受けた民間企業、大学等の研究機関等の労働者が処罰の対象になる。事業委託を受けた労働者は「適性評価制度」により、プライバシーや思想・信条が調査対象となり、それによる人権侵害を受けることになる。それだけでなく、調査によって得られた個人の思想・信条等に関する情報によって、不利益を受けるなど二次的な人権侵害の危険性が高い。
さらに、取材の自由、報道の自由が制約されることによって、マスメディアで働く労働者の権利が侵害される危険が高い。たとえば、原発に関わる情報は上記③に該当するとして、原発に関わる情報が「特定秘密」とされる可能性は高い。そうなれば、原発労働者の労働環境に関する取材活動や報道活動が規制されることになる。
国会に提出された「秘密保護法」案は、政府原案からの修正が行われ「国民の知る権利の保障に資する報道又は取材の自由に十分に配慮しなければならない。」(21条1項)との文言が追加され、「出版又は報道の業務に従事する者の取材行為については、専ら公益を図る目的を有し、かつ、法令違反又は著しく不当な方法によるものと認められない限りは、これを正当な業務による行為とするものとする。」(同条2項)が新設された。しかし、このような抽象的な配慮規定では、「知る権利」及び「報道の自由」を含めた「表現の自由」を保障することにはならない。
国際労働機関(ILO)のフィラデルフィア宣言(1944年5月10日「国際労働機関の目的に関する宣言」)は、ILOが基礎とする根本原則として「表現と結社の自由は、不断の進歩のために欠くことができない 」ことを確認している。「秘密保護法」は、この原則をも踏みにじるものである。
日本労働弁護団は、労働者と労働組合の権利擁護に取り組む団体として、基本的人権を侵害し、労働者の権利を脅かし、民主主義社会を破壊する「秘密保護法」の制定に断固反対するものである。
2013年11月9日
日本労働弁護団第57回総会