(決議)労働裁判改革を求める決議
2003/11/8
労働裁判改革を求める決議
1 司法制度改革審議会は2001年6月12日意見書において「労働関係事件の総合的対応強化」(①審理期間の半減と法曹の専門性強化、②雇用・労使関係の専門的知識経験を有する者が関与する労働調停の導入、③労働委員会の救済命令の司法審査のあり方、労働参審制の導入の当否、労働事件固有の訴訟手続の要否について検討)を提起し、これに基づき、司法制度改革推進本部労働検討会の検討は大詰めを迎えている。
2 労働検討会が本年夏に発表した「中間取りまとめ」は、労働参審制は将来の課題として先送りにし、労働事件固有の訴訟手続は訴訟実務の運用の改善を図るとして制度改革を提起せず、救済命令の司法審査のあり方についても審級省略や実質的証拠法則の問題はさらに検討されるべき課題として先送りするなど、極めて不十分な内容である。
3 他方、「中間取りまとめ」が提起した「労働審判制」は、その具体的な内容次第では個別労働事件において簡易な手続による救済を求める労働者にとっては迅速で実効性のある制度となりうるものである。提起された「労働審判制」は、裁判官と雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者とが合議により事件を審理するというものであり、地方裁判所における非訟手続として審判を行い、3回程度の期日で事件の処理が図られるような手続きがイメージされている。
日本労働弁護団は、「労働審判制」の具体化にあたっては、権利義務関係を判断したうえで労働者が求める救済を命じる、実効性があり重みのある制度とするよう求める。使用者の同意がなければ手続が進行しないとか、権利義務関係の判断をせずに解決案を提示したり、復職を求める労働者に対して金銭解決を決定することなどがあってはならない。
4 アクセス検討会において検討されている弁護士報酬敗訴者負担制度は、資力のない市民・労働者にとっては訴訟を提起することを萎縮させ、裁判所を利用することをより一層困難とする。日本労働弁護団は、このような弁護士報酬敗訴者負担制度を労働訴訟に導入することは絶対に認めることはできない。
なお、労働基準法や労働組合法等の法規違反に該当する賃金不払いや不当労働行為等に係わる労働訴訟は、単に原告労働者の利益にとどまらない公益的訴訟の性格を有しているから、より裁判所を利用しやすくして労働者の権利の確保を図ることによって「法化社会」を実現するために、原告労働者が勝訴した場合には被告に弁護士費用を負担させる片面的負担制度を導入すべきである。
5 日本労働弁護団は、労働者の権利が実効的に実現・救済されるために適正かつ迅速な労働裁判が行われるよう、労働裁判の制度改革の実現を引き続き求めるとともに、全国各地の労働裁判を担当する裁判官が適正かつ迅速な訴訟指揮を行い憲法13条、14条、27条、28条等の理念と労使関係の実情をふまえた適正な判断を行うよう求める。
2003年11月8日
日本労働弁護団第47回全国総会