三重県知事に対する公益委員再任についての申し入れ書

2008/4/18

 

申   入   書

三重県知事 野呂 昭彦 殿

2008年4月  日

日本労働弁護団 会長 宮里 邦雄

第1 申し入れの趣旨
 西澤博弁護士を三重県労働委員会の公益委員に再任しないよう申し入れる。

第2 申し入れの理由

  1. はじめに
     日本労働弁護団は、1957年に結成された法律家団体で、現在全国約1500名の弁護士から組織されており、憲法で保障された労働者と労働組合の権利擁護を目的として活動しています。
  2. 現在、三重県労働委員会の公益委員に選任されている西澤博弁護士は、県内にある楠井法律事務所に所属しています。
     楠井法律事務所に所属している弁護士は、「ユニオンみえ」が申し入れた団体交渉において、使用者側の代理人となり、「ユニオンみえ」と団体交渉に出席しています。
     しかるに、「ユニオンみえ」と対立する使用者側の代理人として直接交渉している弁護士と同一の事務所である楠井法律事務所に所属する西澤博弁護士は、「ユニオンみえ」が申立人となっている不当労働行為救済命令申立事件において、公益委員として事件の審査に関与しています。
  3. 確かに、西澤博弁護士が審査に関与した当該不当労働行為救済命令申立事件については、申立前も含めて、西澤博弁護士が所属する楠井法律事務所所属の弁護士は代理人とはなっていません。
     しかし、西澤博弁護士が所属する楠井法律事務所の所属弁護士は、「ユニオンみえ」の団体交渉について使用者側代理人として直接交渉をすることが頻繁にあることからすれば、たとえ当該不当労働行為救済申立事件については所属事務所の弁護士が代理人となっていないとしても、西澤博弁護士が「ユニオンみえ」申立にかかる不当労働行為救済命令申立事件に関与することは、公益委員としての職務を中立かつ公正に行うことについて、重大な疑念を与えるものです。
     西澤博弁護士は、公益委員として求められる中立性や公正さを確保するために、「ユニオンみえ」が労働委員会に申し立てた不当労働行為救済命令申立事件については、公益委員として審査に関与すべきでないことは明らかです。
    日本弁護士連合会の「弁護士職務基本規程」57条は、共同事務所における職務規律について、「所属弁護士は、他の所属弁護士が、第27条第28条の規定により職務を行い得ない事件については、職務を行ってはならない。」と定めており、第27条5項は、「仲裁、調停、和解斡旋その他の裁判外紛争解決手続機関の手続実施者として取り扱った事件」について、職務を行うことを禁じています。これらの規程の趣旨からも、西澤博弁護士は公益委員として関与すべきではなかったといえます。
     西澤博弁護士は、「ユニオンみえ」の不当労働行為救済命令申立事件について、自らの立場に十分考慮を払い、率先して回避(労働委員会規則39条)をしなければならなかったにもかかわらず、回避をしないで事件に関与し続けたことは、労働委員会制度への信頼を損なうものであり、ゆゆしきことと言わねばなりません。西澤博弁護士の公益委員としての資質に重大な疑念があると言わざるをえません。
  4. 日本労働弁護団は、西澤博弁護士が引き続き公益委員を続けることは、公益委員に求められる中立性や公正さの要請に反するものであり、ひいては団結権侵害の救済機能を持つ労働委員会制度に対する信頼を損なうものであると考え、同弁護士を、再び公益委員として任命されることのないよう厳重に申し入れます。

以上