社会保険庁職員の身分保障を求める決議
2008/11/15
社会保険庁職員の身分保障を求める決議
- 福田内閣は、2008年7月29日、「日本年金機構の当面の業務運営に関する基本計画」を閣議決定した。この「基本計画」は、社会保険庁を廃止して、日本年金機構を設立し、年金業務を移行させるに当たってのものであるが、この中で、社会保険庁の職員の採用に当たっては、「懲戒処分を受けた者は、機構の正規職員及び有期雇用職員には採用されない。」として、過去に懲戒処分を受けた職員は、画一的に全員採用しない方針が定められている。機構に採用されなかった職員について、麻生新総理大臣は、厚生労働省等への配置転換や民間への再就職のあっせんを行うが、最終的には分限免職もありうると国会答弁している。
- 社会保険庁職員は国家公務員である。国家公務員は、国家公務員法により、法律又は人事院規則に定める事由による場合でなければ、その意に反して、免職されることはないこととされている(75条)。
機構に採用されないことによって、分限免職することは、法律に定められた事由に該当せず、明らかに国家公務員の身分保障原則に反するものである。特に機構は、社会保険庁職員以外の職員を1000人程度も新規採用する方針であり、身分保障原則に反するものであることはより明らかである。 - 機構による社会保険庁職員の採用・不採用の基準は、公正なものでなければならない。機構による社会保険庁職員の採用は、社会保険庁が担っていた事業の承継に伴うものであるから、新たな新規採用という性質のものではなく、職員の「選択」という実質を持つものである。この選択の基準が公正でなければならないのは自明の理である。
また社会保険庁職員の立場からすれば、機構への不採用は不利益取扱に他ならないから、分限や懲戒に準じるものとして、国家公務員法上、公正が求められるのは当然である(74条)。
そして、懲戒処分の理由、対象となった行為を行った時期、懲戒処分の種類、懲戒処分を受けた時期などを一切問題とすることなく、懲戒処分歴があるということのみをもって、画一的に不採用とするのは、明らかに不公正な基準である。 - 過去に懲戒処分を受けているということは、当該対象行為について、すでに不利益処分を受けているということである。過去に懲戒処分を受けていることを理由に、新たに不採用という不利益処分を課すのであれば、それは二重処分を行うに等しいものであり、許されないと言わざるを得ない。
また厚生労働省は、「機構」の採用審査に反映させるため、外部専門家による「服務違反調査委員会」を立ち上げ、同委員会は全国社会保険職員労働組合及び全厚生職員労働組合に対し、勤務時間内組合活動の有無を調査するとして、1997年4月以降の組合活動の詳細について説明を求める文書を発出した。労働組合に対するこのような調査活動は、労働組合の団結権に対する重大な侵害行為であるから、直ちに中止・撤回されるべきである。 - 年金業務の適正化は実現されなければならない課題であるが、そのことと職員採用基準の決定は、明確に峻別されなければならない。
国家公務員の身分保障原則及び雇用保障法理などの労働法理に反する違法な方針が直ちに撤回され、社会保険庁職員の身分保障がなされることを求める。
2008年11月15日
日本労働弁護団 第52回全国総会