「解雇の金銭救済制度」導入ありきの議論に反対する幹事長声明を出しました

2019/3/18

日本労働弁護団はこれまで解雇の金銭救済制度導入に一貫して反対してきました。2018年6月に厚生労働省が設置し、導入ありきで議論を進めている「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」に対し、この度、緊急幹事長声明を出しました。どうぞご高覧下さい。

ダウンロードはコチラ(PDF)

「解雇の金銭救済制度」導入ありきの議論に反対する緊急声明

2019年3月18日
日本労働弁護団
幹事長 棗 一郎

 厚生労働省は、2018年6月12日に、「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的論点に関する検討会」(座長:岩村正彦東京大学教授。以下、「論点検討会」という。)を設置し、現在、労働法、民法及び民事訴訟法の研究者6名により、解雇の金銭解決制度に関する議論が進められている。

 論点検討会の目的は、「解雇無効時の金銭救済制度に係る法技術的な論点について議論し、整理を行う」ことにあるとされており(第1回論点検討会「開催要項」参照)、金銭解決制度の導入の是非や必要性については、論点検討会の後、同検討会での論点の整理を踏まえ、労働政策審議会において議論することが想定されている。

 しかし、これまで厚労省事務局が提示した各資料や同検討会での委員の議論をみると、解雇の金銭解決制度を導入することを前提にした法的問題点の整理となっており、立法化に向けての土台作りをしているものと容易に推察することができる。しかも、現在の議論は、検討会の目的である論点の整理を超えて、各論点における複数の選択肢から、どの考え方や制度を採用するべきかという議論にまで踏み込んでおり、検討会の本来の目的を大きく逸脱するものである。

 現在の議論状況からすると、今後、論点検討会では、解雇の金銭解決制度を導入する場合の方式や法的問題点を克服するための議論を行い、制度導入を前提とした報告書が取りまとめられる可能性が非常に高い。

 解雇の金銭解決制度は、2003(平成15)年及び2005(平成17)年の検討時に導入が困難とされ、また、2015年10月29日から2017年5月29日まで20回にわたって開催された「透明かつ公正な労働紛争解決システム等の在り方に関する検討会」においても、導入について委員のコンセンサスが得られなかったのであるから、そもそも同制度の検討を続ける必要性は全くない。ましてや、労使が不在の検討会で導入を前提とした議論を行い、制度の方向性を決めることなど論外である。

 日本労働弁護団は、これまでも、2015年11月7日付「『解雇の金銭解決制度』の法制化に断固反対する決議」、2016年11月4日付「『解雇の金銭解消制度』は不要であり導入に強く反対する」幹事長声明、同月12 日付「解雇の金銭解決制度の導入に強く反対する決議」等において、解雇の金銭解決制度を導入する必要性は全くないこと、仮に同制度が導入されれば、不当解雇が誘発されたり、使用者のリストラの武器として使われたりする可能性が高いこと、経営側の本音は使用者申立権を認めることにあり、ひとたび同制度が導入されれば、いずれ使用者側にも申立権が拡大される可能性が高いことなどを繰り返し指摘してきたところである。

 日本労働弁護団は、上述した観点から、改めて解雇の金銭解決制度の導入に断固として反対するとともに、論点検討会における制度導入を前提とした議論を直ちに中止することを求める。

以 上