憲法改悪に反対する意見書を発表しました

2018/11/19


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日本労働弁護団では、現政権の憲法改正案に反対する意見書をこの度発表しました。何故反対するのか、この改正案は労働者や様々な職場にどのような影響を及ぼすのか述べています。
下記に掲載しましたので是非ご一読ください。

文書ファイルのダウンロード(PDF)

安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する意見書

2018年11月17日
日本労働弁護団
会長 徳住堅治

意見の趣旨

 日本労働弁護団は、自衛隊員及び様々な職場の労働者を危険にさらし、労働者の権利侵害が生ずるおそれを飛躍的に増大させる、安倍政権による憲法改悪に断固反対する。

理 由

第1 自民党憲法改正推進本部の改憲案
 自民党憲法改正推進本部は、2018年3月、改憲4項目について「条文イメージ(たたき台素案)」を発表した。憲法改正案を臨時国会に提出すると総裁選で公約し三選された安倍総理大臣は、9月20日、「総裁選で結論が出た以上は一致結束して進んでいくのが自民党の伝統だ」と語り、その後も様々な機会で憲法改正を強力に進める意思を明らかにしている。
 自民党の発表した「条文イメージ」では、憲法9条については、以下の条文を憲法に加えるものとしている。

【第9条の2】
(第1項)前条の規定は、日本の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
(第2項)自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。

 また、いわゆる「緊急事態条項」を創設するとして、以下の条文を憲法に加えるものとしている。

【第64条の2】
 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員の通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の3分の2以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
【第73条の2】
(第1項)大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
(第2項)内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。

第2 安倍政権のもとでの憲法改悪に反対する
 日本労働弁護団は、憲法で保障された労働者と労働組合の権利を擁護する目的で結成された団体として、労働者と労働組合の権利を脅かすことにつながる安倍政権のもとでの改憲に断固反対する。
 以下、今回の改憲案につながる安保関連法に対する労働弁護団の取り組みを紹介した上で、その理由を述べる。

1 安保関連法に対する労働弁護団の取り組み
⑴ 「安全保障法案」の廃案を求める緊急アピール
 日本労働弁護団は、2015年7月17日「自衛官の法的地位との関係から『安全保障法案』の廃案を求める緊急アピール」を発表した。
 安保関連法に反対した理由は、①安保関連法は憲法9条を逸脱する違憲立法であり、それに従うことは自衛官の憲法尊重擁護義務(99条)に反すること、②集団的自衛権行使は従来の政府見解に基づいた自衛官の同意の範囲を逸脱するものであること、③集団的自衛権の行使のために出動を命じた自衛官に対していかなる措置により安全配慮義務を尽くすのか検討されていないこと、という点である。
⑵ 緊急電話相談会の実施
 また、2015年9月12日及び15日には、自衛隊員・家族のための安保法施行・緊急電話相談会を実施した(自衛官の人権弁護団・北海道と共催、改憲問題対策法律家6団体連絡会の協力)。
 全国から合計14件の相談があり、いずれも家族から、夫や息子、恋人が海外で殺し殺される危険にさらされることへ不安を訴えるものであった。
⑶ 自衛隊員への呼びかけ「君死にたまふことなかれ」
 安保関連法が強行採決された2015年9月19日には、声明「自衛隊員の皆さんへ呼び掛けます『君死にたまふことなかれ』」を発表し、自衛隊員に対し、①「新たな法律により追加された外国のための防衛出動命令」が発せられたときにはこの命令に服従するとの同意書や誓約書等の提出を求められてもこれを提出しないこと、②「新たな法律により追加された外国のための防衛出動命令」が発せられても、これには従わないことを呼びかけた。

2 改憲案は、安保関連法を合憲とするものである
⑴ 従前の政府見解
 2014年7月1日以前の日本政府の集団的自衛権に関する見解は、①日本に対する急迫不正の侵害があること、②これを排除するために他の適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力行使にとどまるべきことの三要件を満たした場合にのみ自衛の措置が認められるのであって、いわゆる集団的自衛権(自国と密接な関係にある外国に対する武力攻撃を、自国が直接攻撃をされていないにもかかわらず、実力をもって阻止すること)の行使は、この三要件とくに①の要件を満たさず、憲法上許されないというものであった(1972年10月14日政府見解)。
⑵ 2014年7月1日の閣議決定及び安保関連法の制定
 この政府見解を転換し、一定の場合に集団的自衛権の行使も憲法上認められるとの解釈変更をしたのが安倍政権である。すなわち、2014年7月1日閣議決定は、「安全保障環境の変化」を根拠として、「他国に対して発生する武力攻撃であったとしても…日本の存立を脅かすことも現実に起こり得る。」と指摘した上、武力行使を認める要件として①密接な関係にある他国への武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険があること、②国民を守るために他に適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力行使であること、という新三要件を定立した。この新三要件は、他国への武力攻撃への反撃を認めるという点でまさに集団的自衛権の行使を容認するものであって、1972年見解を180度転換したものに他ならない。
 かかる解釈変更に基づき、その他の自衛隊の危険な活動をも拡大して制定されたのが安保関連法である。このような集団的自衛権の行使等を容認する閣議決定及びそれに基づく安保関連法は違憲であるというのが憲法学者や弁護士など法律家の圧倒的多数の見解であり、日本労働弁護団も当然その立場に立つものである。
⑶ 安保関連法を合憲とするための改憲
 安保関連法という違憲立法が成立・施行され、立憲主義の観点から法的不安定な状況が現実に存在するもとで、安倍政権が目指す9条改正は、その条文案からすれば単に「自衛隊を書き込むだけ」などというものではない。
 それはまず、安保関連法を合憲化するという意味を持つものである。改憲案9条の2第1項の条文案の「必要な自衛の措置」というのは極めて漠然としているが、ここでの「自衛の措置」には、当然にも上記新三要件①で定められた存立危機事態における「防衛出動」(自衛隊法76条1項2号)、すなわち同事態における集団的自衛権の行使が含まれることになるからである。なお、「必要な自衛の措置」の意義は、安倍総理大臣自身が国会答弁で集団的自衛権の行使も含むことを認めている。

3 改憲案は、全面的な集団的自衛権さえ認めるものになる
 さらに、自民党改憲素案は、安保関連法における新三要件すら乗り越えて、「国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置」との大義名分のもと、存立危機事態に限定されない全面的な集団的自衛権に基づく武力行使を憲法上認めることさえも意味する。
 すなわち、改憲案9条の2第1項は「前条の規定は、・・・必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として・・・自衛隊を保持する」と定めようとするが、ここでは自衛のための武力の行使やそのための実力組織(戦力)が、憲法上認められることになる。そして戦争は常に「自衛」戦争として行われるのであり、集団的自衛権も「自衛権」であって、「必要な自衛の措置」という文言は、これら全てを含むことになろう。そこにはもはや、安保関連法で想定される「日本の存立を脅かし、国民の生命、自由及び幸福追求の権利を根底から覆す明白な危険」という限定すらなく、アメリカ等の密接な他国が攻撃されれば、日本も全面的な集団的自衛権の行使が可能となり、「自衛」のための戦争をする「自衛隊」という名の戦力が、正面から認められることになる。

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 これにより、戦争の放棄、戦力の不保持と交戦権の否認を規定する憲法9条1項2項が空文化されてしまうことになる。かかる改憲は、アメリカの戦争への日本の参加の歯止めを失わせ、米軍と一体化した海外への派兵及び武力行使を憲法上無制約に可能とし、日本の戦争参加に大きく道を開くことにつながる。
 この9条改憲に加え、自民党改憲案の緊急事態条項の、「大地震その他の異常かつ大規模な災害」は「武力攻撃災害」を排除しておらず、自然災害のみならず武力攻撃発生等に際しても、「法律の定めるところにより」内閣に「政令制定」という形での立法権の付与を認めることになりかねない。しかも、この政令について、内閣は「事後的に国会の承認を求めなければならない」(改憲案73条2項)とはされているものの、国会の承認が得られない場合の効力については何ら規定がなく、国会が歯止めとして機能することは何ら担保されていない。
 安倍政権が狙うのは、集団的自衛権の行使等を容認した安保関連法を合憲とするのみでなく、従来の安保法制が認めていた以上の、全面的な集団的自衛権の行使をも憲法上認めることによって、日本国憲法の三原則である平和主義を具体化する憲法9条1項2項を空文化した上、内閣の権限を強化して憲法や国会の制約もなく戦争参加を可能にするための憲法改正に他ならない。

4 安倍政権による改憲は、労働者を危険にさらす
⑴ 自衛隊員の人権
 安倍政権が行おうとしている憲法改悪は、自衛隊員をより一層危険にさらすことになる。
ア 安保関連法による任務の拡大にともなう危険の増加
 安保関連法が施行されたことにより、自衛隊の任務は大きく拡大している。
 例えば、旧自衛隊法3条は、「国の安全を保つため、直接侵略及び間接侵略に対し日本を防衛すること」を自衛隊の主たる任務としていたが、同条から「直接侵略及び間接侵略に対し」の部分が削除された。また、集団的自衛権の行使容認により、防衛出動(自衛隊法76条)が可能な要件として、日本に対する武力攻撃が発生または発生する明白な危険が切迫していると認められる事態に加えて、「日本と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより日本の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態」が加えられた(同条1項2号)。そのほか、自衛隊の武器等防護のみならず、米軍等の外国軍隊の武器等を守るために自衛隊員が武器を使用することができるようになり(自衛隊法95条の2)、あるいは、重要影響事態法及び国際平和支援法によって戦闘地域・非戦闘地域の区別なく「現に戦闘が行われている現場」以外であれば他国軍への後方支援・協力支援のために海外派兵できるようになった。
 このように、安保関連法の施行により自衛隊の任務は大きく拡大し、その分、自衛隊員が直面する危険性は格段に増大している。
 そればかりか、改正PKO協力法は、新たな国際平和協力業務として安全確保業務(住民保護や保安維持等の活動)や駆け付け警護(武装勢力等に襲われた活動関係者の救出等の活動)を新設し、その任務遂行のための強力な武器使用を認めるなどと規定した。この改正法に基づく南スーダンへの自衛隊PKO派遣において、2016年11月、自衛隊の部隊等に「駆けつけ警護」の新任務が付与され、また新設された「宿営地共同防護」(宿営地を他国部隊と連携して守ること)の規定が適用された。しかも、破棄したとされながらも後に公開された「日報」(南スーダン派遣施設隊 日々報告)によれば、2016年7月、陸上自衛隊が駐留していたジュバ市内において「戦闘が生起」し、「流れ弾には注意が必要」とされるほか、連日に渡り「宿営地周辺より射撃音を確認」するという危険と隣り合わせの状況が報告され(上記報告第1639号)、実質的に戦闘状態にあったことが認められる。このような状況において「駆けつけ警護」等の新任務を与えられたということは、その後、活動関係者(NGO職員等)や宿営地に対する攻撃がなされた場合には、当該勢力との間で交戦することとなった可能性を意味しており、自衛隊員がさらされた現実的な危険性は、これまでのPKO派遣とは異質のものであった。
イ 改憲による自衛隊・自衛隊員の任務のさらなる拡大とその正当化
 安倍政権による改憲は、違憲とされる安保関連法の下で拡大されたこれらの自衛隊の任務について憲法上のお墨付きを与え、さらに全面的な集団的自衛権の行使等を憲法上認めることにより、その一層の拡大を図るものである。
 自衛隊員は、命令に背いた場合には罰則が科され、例えば防衛出動命令に背けば7年以下の懲役又は禁錮に処される可能性がある(自衛隊法122条)。この命令が違憲立法に基づくものであれば、当該命令に応じる法的義務が否定されることになるため自衛隊員がこれを拒否することも可能であるし、そもそも違憲性が疑われている命令を出すことや、命令を拒否した者に罰則を科すこと自体に抑制的となることも考えられる。
 しかし、当該命令が憲法上も根拠を有することとなれば命令違反は罰則の対象となり、罰則を科すことにも躊躇いはなくなるであろう。違憲性が疑われている現在においても、実際に命令を受けた場合にこれを拒否することは実際上困難であるところ、さらに刑罰による強制をもって他国の戦争に介入すること等を命じることは許されるべきでない。自衛隊員は任務に伴い自らの生命・身体に危険が生じることについて同意しているが、少なくとも安保関連法の成立以前は、集団的自衛権の行使を違憲とする従前の政府見解を前提として当該危険について同意していたに過ぎないことからすれば、なおさらである。
ウ 「自衛隊員のため」という欺瞞
 安倍総理大臣は、「自衛隊の違憲性を払拭する」として自衛隊員の権利や誇りを守るために改憲するかの如く述べている。しかし、上記で述べたとおり、安保関連法を合憲化し、さらにそれ以上の全面的な集団的自衛権の行使まで認める改憲によって、自衛隊員の生命・身体が脅かされる可能性が飛躍的に高まるのは明白である。生命・身体の安全が守られることは人権保障の根幹であって、欺瞞的な改憲により自衛隊員の人権を損なうことは絶対に許されない。
⑵ 様々な職場における労働者の人権侵害
 安保法制を合憲化し、際限のない集団的自衛権行使の道を開くことによって大きな影響を受けるのは、自衛隊員だけではない。以下のように、様々な職種に従事する労働者は、有事法制を中心として戦争への協力や国民保護のために業務命令を受け、あるいは事実上強制されて危険な業務に従事することが想定される。そして、安保関連法の実施、さらには9条改憲によって、戦争やその後方支援、国民保護関連活動など、その機会と危険が大きく広がっていくことが危惧される。
ア 自衛隊法による業務従事命令(自衛隊法103条)
 これは、武力攻撃事態等における防衛出動(自衛隊法76条1項1号)があった場合、防衛大臣による告示地域において、都道府県知事が、防衛大臣等の要請に基づき、当該地域内にある医療、土木建築工事又は輸送を業とする者に対して、当該地域内における同種の業務で防衛大臣等が指定したものに従事することを命ずることができるとするもので、医療従事者等に対し、防衛大臣等が同種の業務、たとえば戦争による負傷者の看護を行うことを対象労働者に行わせることを可能にするものであり、医療、土木建築工事又は輸送を業とする者を危険な業務に従事させることが想定される。
 事実、医療従事者のうちには、公用令書によって戦地での業務を命令される危険性を訴える者もいる(中野千香子「戦争法制と医療従事者」『労旬』1855+56、p.34)。
 そして、これらの業務従事命令を執行するのは、実際には自治体職員が行うことになるため、民間業者やその雇用労働者との厳しいやりとりが強いられる自治体職員にも強い精神的負荷がかかることが予想される(福田護「戦争法制の労働者の視点からの制度分析」『労旬』1855+56、p.23)。
イ 武力攻撃事態対処法等に基づく措置
 同法において、地方公共団体や指定公共機関(各種独立行政法人、日本銀行、日本放送協会、日本郵便、全国的ないし広域的な規模の放送事業者、電気・ガス事業者、航空運送事業者、鉄道事業者、電気通信事業者、旅客・貨物運送事業者、海運事業者等)は、武力攻撃事態等への対処に関し、必要な措置を実施する責務を有する(同法5条・6条)ところ、かかる「必要な措置」の中核をなす「対処措置」(同法2条8号)には役務の提供も含まれる。そして、かかる対処措置については、行政による代執行による実施も可能である。
 このように、地方公共団体や指定公共機関に従事する労働者は、武力攻撃事態等において、国に指定された役務の提供を、望まないにもかかわらず行わされ、危険な業務に従事させられるおそれがある。
ウ その他の事業者、労働者の動員
 そのほかにも、国民保護法等には、公共的な事業を中心に、労働者を動員し、業務を命じる等の多数の制度がある。
 例えば、国民保護法に基づく運送の求めに応じる義務(同法71条他)、電気・ガス・水道事業者の措置義務や、運送事業者等の措置義務、医療機関である指定機関について医療の確保措置義務が定められている(同法134~136条)。
 かかる法令の定めに基づき、通信事業者は、危険な場所等への通信機器の設置協力等も定められているため、その下請け事業等で働く労働者も含め、有事・戦争体制に加担させられる危険を訴える者もいる(宇佐美俊一「戦争に情報通信労働者は協力しない」『労旬』1855+56、p.36)。さらに、航空労働者も、避難民の輸送等に民間航空機も用いられることや、空港が反撃にさらされる可能性を危惧している(津惠正三「航空産業を世界に脅威をもたらす産業に変質させないために」『労旬』1855+56、p.40)。
 また、基地労働者、さらには報道や教育に従事する労働者など多くの労働者が動員されることが予定されている。特に、報道、出版等においては、先の大戦の経験からも明らかなように、指定公共機関としての職務に加え、有形無形の統制が加えられ、自身の良心に反する業務に従事させられるおそれがある。
 上記の制度のうちには、法文上、個別的自衛権の行使にかかる場合である武力攻撃事態等に限定されているものもあるが、安倍総理大臣自身が、「現実の安全保障環境を踏まえれば、存立危機事態に該当するような状況は同時に武力攻撃事態等にも該当することが多い」と述べている(2015年7月15日衆議院平和安全法制特別委員会における答弁)ように、集団的自衛権の名のもとに海外での戦争参加が常態化すれば、上述した各労働者への影響は顕在化する。その上、集団的自衛権の行使を全面的に認める改憲がなされれば、新三要件に基づく存立危機事態に限られず集団的自衛権が行使されることとなり、自衛隊員や、その他の労働者の動員の危険は一層深刻なものとなる。かかる動員下において、「国益」の名のもとに労働者の基本的権利は後景に追いやられることになるであろう。
エ 労働組合が統制され労働者の権利が奪われた戦前の教訓
 振り返れば、1938年に制定された国家総動員法によって、労働者が戦争のための資源と位置づけられ、戦争体制の確立のために、労働者の権利を守る法律が無力化され国家統制されていった。1940年にはほとんどの労働組合が解散させられ、同年、大日本産業報国会が結成された。この大日本産業報国会は、550万人もの労働者を組織するものであったが、その実態は労働運動を排除したうえでの労働者、労働組合の国家的統制にあった。戦時体制の確立のために労働者の団結権、団体行動権は否定され、労働運動は壊滅した。そして、日本はアジア・太平洋戦争へと突入していくこととなった。さらに、1942年、大日本産業報国会は大政翼賛会の傘下となり、戦争遂行のための国家統制が一層進められていったのである。
 私たちは、労働者・労働組合が国家権力によって総動員され、戦時体制に組み込まれ、戦争遂行に協力させられた過去の苦い歴史を忘れてはならない。

第3 安倍政権に憲法改正を議論する資格はない
1 国民の声を押し切り強行する手法の数々
 安倍政権は2014年7月1日の閣議決定により、それまで歴代の内閣が憲法9条のもとでは国際法上の集団的自衛権の行使は認められないとしてきた憲法解釈を変更した上、2015年9月には多数の国民の反対の声を押し切って安保関連法を強行採決し、自衛隊が海外で武力行使できる道を開いた。憲法を改正できるのは主権者たる国民だけであり(憲法96条)、国民の承認を得ない一方的な解釈改憲は国民主権を踏みにじる暴挙であった。
 その一方で、安倍政権は、派遣法を拡大し、労働時間規制の適用を受けない高度プロフェッショナル制度を創設し、裁量労働制の拡大や解雇の金銭解決制度の導入を画策するなど、労働者を保護する規制を「岩盤規制」として敵視し、労働者が戦後日本国憲法のもとで勝ち取ってきた基本的権利を侵害する規制破壊を次々と実施している。しかも、「立法事実」すなわち法律を必要とする根拠が存在しないことが明らかになっても法案をごり押しし、野党が指摘する具体的な問題点にも全く耳をかさず、まともな議論をせずいわゆる「ご飯論法」と呼ばれるような論点そらしをし続けた上に強行採決するというのがこの間の安倍政権のやり方である。
このような、議論や適正手続きを軽視し民主主義を愚弄する安倍政権に、そもそも憲法改正を提案する資格などない。
2 真の狙いを隠す詐欺的な手法
 安倍総理大臣は、今回の改憲案について、「違憲と言われる自衛隊員がかわいそうだ」「自衛隊の違憲性を払拭する」などという情緒的理由を挙げ、自衛隊員の権利や誇りを守るための改憲であり、単に憲法に自衛隊を明記するだけで何も変わらないかのような言説を振りまいている。
 しかし、実際には何も変わらないどころか、自民党改憲案は、上記で述べたとおり、安保関連法を合憲化し、さらにそれ以上の全面的な集団的自衛権の行使すら認めるものである。このような改憲によって、自衛隊員の生命・身体が脅かされる可能性が飛躍的に高まるのは明白である。
 今回の改憲の真の狙いは、集団的自衛権の行使が違憲ではないことを憲法上明確にし、戦争の放棄、戦力の不保持と交戦権の否認を規定する憲法9条1項2項を空文化することによって、専守防衛の国是を変更するというものである。これは、日本が戦後73年間にわたり築いてきたこの社会の土台そのものを転換することを意味する。
 この真の狙い、重大な意味を国民に何ら説明することなく、あたかもこれまでと何も変わらないかのように国民をだまして改憲を実現しようとしているのが現在の安倍政権である。真の狙いを隠し、国民に正確な情報を提供しないままなし崩し的に、情緒的に改憲を実現しようとする安倍政権に、国民の人権保障を定めた国の最高法規である憲法をいじる資格はない。

第4 全ての労働者、労働組合のみなさん
 自衛隊や安全保障に対する考え方には様々な立場がある。
 しかし、現在の安倍政権のもとでの憲法改悪は現場の労働者にとって極めて重大な悪影響を及ぼすものである。様々な立場や意見の相違を尊重しながらも、安倍政権のもとでの憲法改悪に反対するという一致点で労働者・労働組合が団結することこそ今最も重要である。
 戦争中に壊滅した労働運動は、戦後「平和なくして労働運動なし。」というスローガンを掲げて再出発した。改めて我々は歴史の教訓に深く学び、二度と戦争の惨禍を繰り返さないために、そして、働く者にとってかけがえのない労働運動を守るために、安倍政権による憲法改悪を止めなければならない。
 日本労働弁護団は、労働者・労働組合の権利擁護の観点から、労働者・労働組合のみなさんとともに、安倍政権による憲法改悪を阻止するために尽力する決意である。

以上

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