技能実習制度拡充等に反対する決議

2014/11/8

技能実習制度拡充等に反対する決議

安倍政権は、2014年6月24日に閣議決定した「『日本再興戦略』改訂2014―未来への挑戦―」(以下、「日本再興戦略改訂」という。)で、「外国人材の活用」を打ち出した。その柱のひとつとして、技能実習制度の拡大を挙げている。また、これに先立ち、同年4月4日に、2020年度までの緊急措置として、技能実習制度の枠組みを使って建設分野の外国人労働者受入れることを閣議決定し、更に、「日本再興戦略改訂」において、造船業についても同様の受入れを行うことを決めた。

1 技能実習制度の拡大に反対し、制度の廃止を求める

  そもそも、現行の技能実習制度には、根本的な問題がある。第1の問題点は、技能・技術等の移転を通じた国際貢献という制度目的安価な労働力の確保のために使われているという実態とが乖離しており、そこから、労働者としての権利保護がなされていないことである。第2の問題点は、技能実習生に雇用主変更の自由がないため、構造的に雇用主への強い従属関係が生じていることである。第3の問題点は、送出し国での保証金・違約金契約等により、日本国内で事実上、権利主張ができないこと、送出し機関、監理団体による中間搾取的なコストが生じることである。技能実習生には、日本国内では労働法が適用されても、実際には権利行使することが極めて困難になっている。

法務大臣の私的諮問機関である第6次出入国管理政策懇談会の下に設けられた外国人受入れ制度検討分科会は、制度の根本的問題点を認識しながら、制度の廃止するのではなく、対象職種の拡大、実習期間の3年から5年への拡大、受入れ枠の拡大等、制度の拡大に踏み切る報告書を提出し、「日本再興戦略改訂」もこの方針を採用した。

人権・権利侵害の問題に対しては、「管理監督体制の抜本的強化」を打ち出しているが、前述した制度自体に内在する根本的問題がある以上、「管理監督体制の抜本的強化」を行っても、人権・権利侵害の問題は解決しない。

技能実習制度に内在する根本的問題を解決するためには、制度を廃止すべきであり、制度の拡大などすべきでない。未熟練外国人労働者を受入れるならば、技能実習制度によるのでなく、外国人労働者の権利保障を図る制度を構築したうえで行うべきである。

 

2 技能実習制度の枠組みを使った建設・造船分野の外国人労働者の受入れに反対する

  2014年4月4日、内閣官房において開催された「建設分野における外国人材の活用に係る緊急措置を検討する閣僚会議」において、建設分野等において外国人労働者を受け入れるという緊急措置が取りまとめられた。具体的には、2020年度まで、建設分野の外国人技能実習修了者に「特定活動」の在留資格を付与し、元技能実習に最大2~3年間の在留を認めるというものである。そして、「日本再興戦略改訂」はこれを確認した上で、造船業にも同様の緊急かつ時限的措置を講ずることを決めた。

しかし、根本的に問題のある技能実習制度の枠組みを使った外国人労働者の受入れを行えば、技能実習生と同様の人権・権利侵害が行われることは必然である。具体的には、労働者としての受入れであるにもかかわらず、雇用主変更の自由に制限があり、また、送出し国での保証金・違約金契約等により、日本国内で事実上、権利主張ができない危険、送出し機関、監理団体による中間搾取的なコストが生じることに対する十分な対策もなされていない。

未熟練外国人労働者を受け入れるのであれば、その権利保障を図る制度の構築が必要不可欠であり、根本的な問題のある技能実習制度の枠組みを使った受入れをすべきではない。また、国民的議論を経ないで、閣議で政策を決定し、大臣告示等のみで制度をつくることにも問題がある。

 

安倍政権の外国人労働者受入れ政策は、外国人労働者の人権・権利擁護制度を作ることなく、安価な労働力を導入するための拙速で安易な政策である。日本労働弁護団は、技能実習制度の廃止を求め、同制度の拡大に強く反対する。また、同制度の枠組みを使った建設・造船分野の外国人労働者の受入れに強く反対する。そして、外国人労働者の権利擁護のための闘いを行っていくことをここに決意する。

2014年11月8日

日本労働弁護団第58回全国総会