労働者派遣法の大改悪に反対する決議

2014/11/8

労働者派遣法の大改悪に反対する決議

 

 本年929日、安倍内閣は労働者派遣法の「改正」案を閣議決定し、臨時国会に提出した。この法案は、いわゆる専門26業務に該当するかどうかの区分によって派遣先の派遣受入可能期間の制限に差異を設ける現行制度を廃止する。そして、業務に関わらず、無期雇用派遣や60歳以上の派遣労働者等については、派遣先の派遣受入期間の制限を無くす。また、有期雇用派遣についても、「同一の組織単位」における同一の派遣労働者の派遣受入期間の上限を3年としながらも、派遣先が3年ごとに過半数労働組合等の意見聴取さえ行えば同一の事業所において引続き派遣労働を利用できるとされ、派遣先は、派遣労働者を入れ替えることにより永続的に派遣労働を利用できる制度となっている。これは、派遣労働の完全自由化を認めるに等しく、派遣労働の恒常的利用が拡大し、常用代替防止という法の趣旨は完全に有名無実化することが明らかな間接雇用促進法である。

 他方で、この法案は、派遣労働者の処遇改善について均等待遇原則の導入は見送られ、僅かに派遣元の説明義務や派遣先の情報提供の配慮義務等を課すだけである。もともと現行法の均衡待遇の配慮義務は何らの私法的効力が無く実効性がないが、これら僅かばかりの説明義務や配慮義務を新設したとしても、派遣労働者の処遇改善のための実効性が何らないことは明らかである。更に、この法案が定める派遣受入期間に達した派遣労働者に対する雇用安定措置も実効性がないものばかりである。

 この法案が成立すれば、正社員から派遣労働への置換えが進み、既に日本の雇用社会において約4割を占める非正規労働者をますます増大させながら、正社員と派遣労働者の賃金等労働条件の格差は放置されたままとなる。そして、低賃金で生活に困窮し不安定雇用に怯える労働者は声を上げることもできず、労働条件が更に劣化していく「雇用のデフレスパイラル」を招くものとなる。

更に、雇用が不安定で低賃金の女性の派遣労働者が増えることになり、安倍政権が掲げる「女性の活用」とも真っ向から矛盾するものである。

 日本労働弁護団は、日本の雇用を根底から破壊する派遣法大改悪に断固反対し、日本の労働者や労働組合と広く連帯して、最後までこの法案の廃案を求めて闘う決意である。

 

2014118

日本労働弁護団 第58回全国総会