違法派遣・偽装請負等の受入れ企業に対し雇用責任を果たすことを求める闘争を支援する決議

2010/11/13

                                                                                 
 最高裁判所は、2009年12月18日、いわゆる旧松下PDP事件について、旧松下PDPの雇用責任を認めた原審大阪高等裁判所判決を破棄自判し、被上告人の労働契約上の地位確認請求を棄却する判決を下した。
 この旧松下PDP最高裁判決は、受入れ企業である旧松下PDPが労働者派遣法に違反して労働者を受け入れていることを認めつつも、原審が認めた黙示的な雇用関係の成立を否定しているが,これは労働者派遣法に違反して労働者を受け入れた受入れ企業の労働者切り捨て行為を免責するのみならず、かかる違法行為によって不安定な地位に置かれた労働者を救済するという裁判所本来の使命を放棄するものであって、到底容認できない。
 しかしながら、この旧松下PDP最高裁判決は、労働者派遣法に違反する労働者派遣が行われた場合において労働者と派遣先との間での黙示の労働契約成立に関する一般的判断基準を示したものではなく、事例判決として黙示の労働契約成立を否定したにすぎない。したがって、本来この旧松下PDP判決は、全国で多数提起されている非正規・不安定雇用労働者の直接雇用を求める裁判に、一般的な黙示の労働契約成立に関する基準として影響を与えるものでもない。
 にもかかわらず、全国の下級裁判所において、この旧松下PDP最高裁判決のとった黙示の労働契約を否定する結論のみを金科玉条の如く取り扱って、直接雇用が認められないことを前提にした強引な訴訟進行が散見される。このような訴訟進行は、旧松下PDP最高裁判決が黙示の労働契約成立に関する単なる事例判決であることを見誤るものであって、到底許されない。そもそも黙示の労働契約論は,個別の事件についての事実認定の問題である。各裁判所においては、このような旧松下PDP最高裁判決の結論のみに引きずられた訴訟指揮を早急に改め、各事件の事実関係に即し慎重な審理を行い黙示の労働契約の成否について事実認定を行うべきである。
 そして、全国で提起されている違法派遣・偽装請負等の受入企業の雇用責任を果たすことを求める裁判においては、この旧松下PDP最高裁判決の不当な結論を乗り越え、雇用の大原則である直接雇用を認めさせる判決を勝ち取らねばならない。
 実際に、旧松下PDP最高裁判決が出された後も、裁判闘争を通じて直接雇用が勝ち取られたり、裁判外の闘争によって偽装派遣を行っていた企業で派遣から直接雇用への切り替えが行われるなどの闘争の成果が報告されている。
 日本労働弁護団は、このような闘争の成果に続いて全ての労働者に雇用の大原則である直接・無期雇用が実現されるように、違法派遣・偽装請負等の受入企業に対して雇用責任を果たすことを求める全国の闘争を支援することを決議する。

2010年11月13日

    日本労働弁護団 第54回全国総会