ワークルール教育推進法の制定を求める決議

2013/11/9

ワークルール教育推進法の制定を求める決議

 近年、雇用形態の複雑化・多様化や非正規労働者の増加、ブラック企業の横行が、様々な労働トラブルを生み出し、深刻な社会問題となっている。その中で、労働トラブルの解決を一層困難にしているのは、ワークルール」すなわち働くこと・働かせることに関するルール及びこれらのルールを実現するための諸制度に関する労使双方の知識不足、理解不足である。

労働者及び使用者が、ワークルールの正確な理解を深め、かつその理解に基づいた適切な行動をとり得る能力を身につけることが、労働者にとっては自らの権利と生活を守ってワークライフバランスを実現することにつながり、使用者にとっては円滑かつ適切な企業活動を確保することにつながる。

これまで、このワークルールの教育は、各教育機関、教員有志、労働組合、NPO等によって先進的な実践が行われてきた。日本労働弁護団員も、職場、学校などへの講師派遣など、ワークルール教育の取り組みを行ってきた。しかし、我が国の労働者、職場を巡る深刻な現状は、そうした有志による局地的な取り組みだけでは、ワークルール教育のこれ以上の普及・推進が困難であることを示している。

憲法27条(勤労の権利)、26条(教育を受ける権利)、11条(基本的人権の尊重)からすれば、働くことに関する教育を受けることもまた、侵すことのできない国民の基本的権利である。すなわち、国は、国民に対して、働くことについての十全な教育を行うべき憲法上の責務を負っているのである。

消費者教育について消費者教育推進法ができたように、国は、ワークルール教育の推進についても基本法を制定すべきである。基本法によって国、地方公共団体等の責務を明らかにし、十分な財政上の措置のもと、学校、大学、事業所、地域におけるワークルール教育に関する施策を総合的かつ計画的に推進し、健全で安定した労働関係の形成をはかるべきである。

労働者がバラバラにされ、孤立させられている今の時代においてこそ、国が責任をもってワークルール教育を推進することが何よりも求められている。

日本労働弁護団は、本年104日、ワークルール教育推進法の制定を求める意見書を発表し、ワークルール教育推進法制定に向けた取り組みを開始した。

我々は、この総会決議を契機として、ワークルール教育推進法制定に向けた取り組みを一層強化すると共に、職場や学校などにおけるワークルール教育への協力を一層進めていくことをここに決議する。

2013119

日本労働弁護団第57回全国総会