男女雇用機会均等法の実効的な改正を求める決議

2013/11/9

男女雇用機会均等法の実効的な改正を求める決議

 

1 女子差別撤廃条約の批准に伴い1985年に制定された「雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律」(以下「均等法」という)はその後、2度の改正(1997年、2006年)を経て見直しの時期に入っているところ、労働政策審議会雇用均等分科会は2013927日「今後の男女雇用機会均等対策について(報告)」(以下「報告書))を公表した。報告書の内容は、均等法の改正を事実上見送り、「指針」や「省令」に若干の修正を加える程度に留まっている。男女差別の抜本的解消に向けた取組としては極めて表層的で不十分なものと言わざるを得ない。

2 均等法は、2006年改正により女性のみなら男女双方を保護の対象とする性差別禁止法となり、雇用の全ステージにおける性差別的取り扱いが禁止され、事業主に対してセクシュアルハラスメントに関する措置義務が課されるなど漸進が図られてきた。

しかし、①性差別禁止規定(均等法第5条、第6条)は「同一の雇用管理区分にあること」が適用の前提とされていること(厚生労働省告示第614号)、②均等法第7条で禁止される「間接差別」は厚生労働省令で定める3事例に限定されていること、③性差別禁止の対象事項に「賃金」が含まれていないこと、④性差別禁止規定に違反した場合の労働契約法上の効果が明記されていないことなど、その規定に構造的欠陥がある。その結果、事業主は雇用形態や雇用管理区分を区別することで容易に均等法の適用をすり抜けることができてしまう。また、男女間に明確な格差が生じている場合であっても、個人的な能力不足、適性の欠如が原因であるとされがちで、性差別として認められることが極めて困難である。仮に性差別が認められる場合でも差別的取扱が直ちに無効となるものではない。このように、現行の均等法は実効性を欠く。

さらに、実効性確保の観点からしても、ポジティブアクションに関する規定(第8条、第14条)も企業の自助努力が原則であり、男女差別を解消するために事業主が取り組むべき必要最低限の措置義務も課されていないこと、違反に対する制裁が不充分であるなど見直されなければならない課題が多い。

構造的欠陥の修正、実効性確保措置の強化は、法改正なくしては達成し得ない。

3 加えて、現状の日本の労働現場は長時間労働規制が不十分である。そのため男性の育児参加率が極めて低い一方、妊娠・出産や育児・介護の責任を負わされ、深夜勤や時間外・休日労働に対応できない女性を使用者が消極的に評価するきらいがあり、社内における性別役割意識も加わって、女性が十分に能力や発揮できない素地がある。そのような中、上記均等法の構造的欠陥は、労働基準法3条(均等待遇)に「性別」が含まれていないこと、同4条(男女同一賃金の原則)は性別を理由とする「賃金」差別のみを禁止していること、パートタイム労働法8条の差別禁止規定の適用範囲が極めて狭いこと、均等法と同時期に制定された労働者派遣法によって事務職等の女性の割合が高い職種を中心に正社員から派遣労働への置き換えが進んだことなどと相まって、むしろ男女差別を助長・温存し、女性が従事する労働の質の劣化をもたらしている。女性差別撤廃委員会、ILO、国連人権規約委員会などの国際機関からも繰り返し、日本の深刻な男女間賃金差別や処遇格差を抜本的に改善するためのより実効的な法改正を求められている。

4 日本労働弁護団は2006年均等法改正に先立ち2006424日付「雇用機会均等法案に対する意見」を公表し均等法の改正に向けた具体的な提言しているところであるが、男女が平等に人間らしく働きその能力を発揮し、差別是正・男女平等を実現するために、改めて、男女雇用機会均等法のより実効的かつ抜本的な改正がなされるよう求めるものである。

2013年11月9日

日本労働弁護団 第57回全国総会