団体行動権を侵害する仮処分、損害賠償請求、刑事弾圧に抗議する声明

2012/11/10

団体行動権を侵害する仮処分、損害賠償請求、刑事弾圧に抗議する声明

 

憲法28条は、労働基本権の一つとして団体行動権を保障しており、団体行動権の中心はストライキ権である。使用者に対して劣位の立場に置かれる労働者が団結して、ストライキなどの団体行動を行うことによって、使用者との対等な地位を確保し、その生存権を守ることができるのであるから、団体行動権が極めて重要な基本的人権であることは疑いないことである。

 ところが、最近、労働組合の争議行為に対して、裁判所が、使用者の申立を受けて、抗議行動や街頭宣伝を差し止める仮処分決定が発令される例が報告されている。また、使用者に肩入れするかのような裁判所の姿勢の変化をみて、使用者が、労働組合のホームページに記載された記事や取引先への要請行動を名誉毀損、営業妨害だとして損害賠償請求をする事例、ストライキを行った労働組合及び組合役員に対する損害賠償請求をする事例が増えている。さらに、団体交渉や工場・職場での抗議行動を口実にした刑事弾圧事件も立て続けに起こっている。

 また、津地方裁判所による争議行為の差止めを認めた仮処分決定がある。2012年8月22日、津地方裁判所は、労働関係調整法による調整手続きを無視し、無審尋で、決定理由も付さずに、三重一般労働組合及び同労組鈴鹿さくら病院分会に対して、「平成24年8月17日付けストライキ通告書に基づく争議行為をおこなってはならない。」との仮処分決定を下した。

争議行為等の団体行動は、所有権や契約の自由などの市民法秩序と緊張関係に立つものであるが、憲法が団体行動権を保障していることにより、正当な団体行動を行った労働者及び労働組合について、刑事免責及び民事免責が認められる。これは、日本及び全世界の労働者が長い闘争の結果、闘い取ってきた基本的人権であり、尊重されなければならないものである。裁判官を含む国家公務員は日本国憲法を遵守することを誓約しているものであり、裁判所は憲法と法律を守るための国家機関である。裁判所みずから憲法上の権利を否定するかのような職権行使をすることは許されない。

 日本労働弁護団は、労働者・労働組合の権利を擁護する法律家団体として、裁判所による不当な規制に強く抗議し、裁判所、警察、使用者に対し、労働基本権の尊重を求める。

2012年11月10日

日本労働弁護団総会