有期労働契約に関する改正労働契約法の正しい運用とさらなる有期労働契約規制を求める決議

2012/11/10

 有期労働契約に関する改正労働契約法の正しい運用とさらなる有期労働契約規制を求める決議
 2012年8月3日、有期労働契約に関する労働契約法一部改正の法律案が成立した。この改正法は、有期契約労働者の雇用の安定と不合理な処遇改善に向けて積極的な面も有している。この改正法を正しく運用し、積極的に活用する取り組みが必要である。
 まず、有期労働契約が無期労働契約へと転換する規定(改正法新18条)が設けられたという積極的な面がある。5年の通算契約期間は長すぎるが、5年が経過しない期間であっても、この規定の趣旨を生かし、無期雇用へと転換するよう労使協議を開始し、活用すべきである。また、労働契約の期間の定めを理由とする不合理な処遇格差を禁止する規定(改正法新20条)については、使用者に対してその規定の正しい理解を周知徹底するとともに、労働者側においては、この規定を活用して、有期契約労働者の不合理な労働条件格差を是正する積極的な取り組みが求められる。
 他方、この改正によって、無期労働契約への転換を避けるため、使用者が5年の通算契約期間到達前に有期契約労働者を雇止めし、雇用を不安定にさせるおそれがある。しかしながら、そもそも改正法が無期労働契約への転換の制度を設けた趣旨は、有期契約労働者の雇用の安定を図ることにあるのであって、無期転換制度の適用を逃れるために、雇止めを行うことは改正法の趣旨に真っ向から反し、断じて許されない。このような雇止めは、改正法により実定法化された雇止め法理(改正法現18条・新19条)により無効とされるべきである。われわれは改正法の正しい理解を広く周知徹底し、制度導入により雇止めが誘発される事態が生じないように取り組みを強めなければならない。また、本改正で導入された、通算契約期間に算入されない空白期間は、無期労働契約への転換を避けるための潜脱手段として悪用することは許されない。
 本法改正は、これまで日本労働弁護団が繰り返し求めてきたいわゆる「入口規制」を導入しなかった点や、通算契約期間に算入されない空白期間を導入した点など、まだまだ不十分なものにとどまっている。本改正によっても、有期契約労働者の雇用の安定と不合理な処遇が抜本的に改善されることは期待できない。今後も引き続き有期労働契約の入口規制など実効性ある有期労働契約規制が実現されるよう強く求めていかなければならない。
 以上のとおり、日本労働弁護団としては、今回の改正法の正しい理解を周知徹底させるための取り組みを強めると同時に、改正法を活用して有期契約労働者の権利擁護のための活動を一層強める決意である。また、今後も引き続き、入口規制導入などなど実効性ある有期労働契約規制が実現されるよう強く求めていく所存である。
                    2012年11月10日 日本労働弁護団第56回全国総会