均等・均衡待遇の原則を実現するパートタイム労働法改正を求める決議

2012/11/10

  均等・均衡待遇の原則を実現するパートタイム労働法改正を求める決議
1 厚生労働省労働政策審議会は、2012年6月21日、「今後のパートタイム労働対策について」の建議を発表した。この建議の主な内容は、パートタイム労働者の均等・均衡待遇の確保のために、(1)「パートタイム労働法第8条については、①3要件から、無期契約要件を削除するとともに、②職務の内容、人材活用の仕組み、その他の事情を考慮して不合理な相違は認められないとする法制を採ること」、(2)「パートタイム労働法9条第2項について、削除すること」、そして、(3)「通勤手当は、パートタイム労働法第9条第1項の均衡確保の努力義務の対象外として例示されているが、これを見直し、一律に均衡確保の努力義務の対象外とすることは適当ではない」というものである。
2 この建議の内容は、パートタイム労働法(以下、「現行法」という)8条を、有期労働契約に関する改正労働契約法新20条(有期を理由とする不合理な労働条件の禁止)と同様の法文へ改正しようとするものである。そこで、具体的な法文としては、例えば、「短時間労働者の労働条件と通常の労働者の労働条件の相違が、労働者の職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度)、人材活用の仕組み(職務の内容及び配置の変更の範囲)その他の事情を考慮して、不合理と認められるものであってはならない。」となることが予想される。いわば、現行8条の差別禁止規定を削除し、現行法9条と統合し、「不合理な労働条件の禁止」規定に改正しようというものである。
3 しかしながら、現行法8条は、異なる雇用形態における「差別的取扱い禁止」を定めた画期的な意義を有する規定である。この差別的取扱い禁止規定を、不合理な労働条件の禁止規定に変更する必要はない。現行法8条は、無期契約要件を削除するとともに、全雇用期間において人材活用の仕組み・運用の同一性を求める要件も削除すべきである。そして、通常の労働者と職務内容の実質的な同一性で足りると改正すべきである。
   次に、努力義務にとどまる現行法9条については、建議が提案するように不合理な労働条件の相違を禁止する私法的効力を有する規定に改正すべきである。そうすれば当然、通勤手当等の賃金も対象となる。この場合に、通常労働者との労働条件の格差の合理性に関する主張・立証責任は使用者が負担すべきである。そこで、具体的には、「当該労働条件の相違は、労働者の業務の内容及び当該業務に伴う責任の程度(職務の内容)、当該職務の内容及び配置の変更の範囲その他の事情を考慮して合理的なものでなけらばならない」との法文にすべきである。
4 パートタイム労働者は850万~900万人にのぼり、非正規労働者全体(1700万人~1800万人)のおよそ半分を占めている。過去においてはパートタイム労働者は家計補助的労働者と位置づけられていたが、現在は、多くのパートタイム労働者は家計を支える役割を担っている。また、男女平等実現の観点からも、女性が多いパートタイマー労働者の適正な労働条件を確保し、差別的取り扱いを禁止する必要性は高い。
  日本労働弁護団は、2013年1月の通常国会において、真に均等・均衡処遇の確立に資するパートタイム労働法改正が実現するよう強く政府に求めるものである。
                                                                  2012年11月10日
                                                       第56回日本労働団総会