労働者派遣法政省令の改正に対する声明

2012/7/11

労働者派遣法政省令の改正に対する声明

2012711

日本労働弁護団 

幹事長 水口洋介

 

1 201275日、労働政策審議会職業安定分科会(大橋勇雄分科会長)は、改正労働者派遣法の施行に伴う政省令改正要綱案について概ね妥当とする同分科会労働力需給制度部会の報告を了承し、諮問していた小宮山洋子厚生労働大臣に答申した。

この改正要綱案の中には、日雇派遣の禁止の例外となる業務として17.5業務を認め、また、日雇派遣の禁止の例外となる場合として、日雇労働者が60歳以上の者や学生である場合、日雇労働者の収入額が500万円以上である場合、日雇労働者が主たる生計維持者でない場合(世帯収入が500万円以上である者に限る)を認めるなどの規定が置かれている。

しかしながら、法律上原則禁止とされた日雇派遣を、政省令でこのように例外を広範に認めることは、その法律の規定を全く骨抜きにするものであって許されない。そもそも、日雇派遣は不安定雇用の局地であり、本来であれば全面的に禁止されるべきものである。また、職業紹介で対応できることであるから、政令で日雇派遣禁止の例外を認める必要性にも乏しい。日本労働弁護団は、このような法律の規定を全く無意味にする政省令を定めることに反対する。

2 また、同年510日、労政審職業安定分科会は、労働者派遣法40条の211号の政令で定める業務として、「非破壊検査用の機器の運転、点検又は整備の業務及び水道施設、下水道又は一般廃棄物処理施設(ごみ処理施設にあっては、一日当たりの処理能力が十トン以上のものに限る。)の管理に関する技術上の業務を加えること。」を妥当とするとの答申を行った。

  この政令改正は東日本大震災からの復興・復旧のために必要とのことからのものであるが、上記業務の全てに専門性が要求されるわけではなく、派遣可能期間の制限を撤廃することにより規定の趣旨である常用代替の防止が損なわれるおそれが非常に大きい。

  そもそも、上記業務は今まで専門26業務に含まれておらず、派遣労働者数も非常に少数であった。つまり、直接雇用若しくは少なくとも職業紹介で対応できることである。また、東日本大震災からの復旧・復興のためであれば、1年ないし3年程度の時限的な措置とすべきであり、派遣可能期間を撤廃する必要性はない。「震災復興」の名の下に専門26業務の規制をなし崩しにする政令改正を行うことは許されない。

3 今国会において、派遣労働者の低労働条件と不安定雇用を是正して派遣労働者の保護と雇用安定を図るために労働者派遣法が改正された。このような中で、いわゆる専門26業務の範囲を拡大し、日雇派遣の禁止の例外を広範に認めることは時代に逆行し、労働者派遣法改正の立法事実にも反するものであって許されない。

日本労働弁護団は、雇用は直接無期が大原則であるとの観点から、今後も労働者派遣制度を縮小し禁止するように強く求めていくものである。