国鉄分割・民営化採用差別事件を早期に全面解決することを求める決議

2008/11/15

 

国鉄分割・民営化採用差別事件を早期に全面解決することを求める決議

 1987年4月1日に国鉄が分割・民営化されてから21年が経過した。
 国鉄の分割・民営化は、「戦後政治の総決算」「構造改革」を唱える中曽根内閣が推進したものである。今では、そのねらいが、国民の共有財産である国鉄を、25兆5000億円もの長期債務を国民に負担させた上で、利益優先の財界に売り渡すということと、国鉄におけるたたかう労働組合を弱体化させ、わが国における労働組合運動に重大な打撃を与える「国家的不当労働行為」にあったことは、誰の目にも明らかとなっている。
また、国鉄・民営化は、その後の「リストラ・首切り」の先駆けともなったことが指摘されなければならない。
 ところが、政府が、「組合所属を理由に差別はしない」「一人も路頭に迷わせない」と確約したにも関わらず、分割・民営化に反対した労働組合に所属していたことを理由にJR各社への採用を拒否された国労、全動労組合員ら1047名は未だその権利も名誉も回復されていない。

 周知のとおり、2003年12月22日、最高裁は、3対2の1票差ながら、国鉄改革法23条の解釈によってJR各社の使用者性を認めず、JR各社に対して採用手続のやり直しを命じた中央労働委員会の救済命令を取り消した。
 これにより、法律上は、不当労働行為に対する救済としてJR各社に職場復帰を求める道は閉ざされた。しかし、1047名の労働者は、雇用と年金の問題を含めた全面解決を求めつつ、採用差別を行った国鉄の責任を問うため、その地位を承継している独立行政法人鉄道建設・運輸施設整備支援機構を被告とする損害賠償請求訴訟を提起し、たたかいを続けている。
 損害賠償請求訴訟では、消滅時効を理由に請求を棄却した東京地裁民事第19部の不当判決もあるものの、国鉄の不当労働行為=不法行為の事実を正しく認定し、金500万円の慰謝料ないし金550万円の慰謝料および弁護士費用の限度ではあれ、損害賠償を命じた同地裁民事第36部(鉄建公団訴訟)、第11部(全動労訴訟)の判決も勝ち取られ、重要な成果を上げている。これら訴訟の控訴審をはじめ、その余の国労組合員542名が原告の同地裁第11部の訴訟など一審係属事件も審理は大詰めを迎えている。
 日本労働弁護団は、裁判所が、国鉄の責任を明確にし、責任に応じた賠償を正しく命じるよう、重大な関心をもって注視している。

 他方、分割・民営化から21年を経て、差別され、不採用とされた労働者の高齢化も進み、家族も含めて厳しい生活を強いられていることも考えると、この採用差別事件の解決をこれ以上長期化させることは人道上も許されない。ILOも、日本政府に対し、早期解決を促す8次に亘る勧告を出している。また、採用差別の早期解決を求める地方自治体の議会決議、意見書は755自治体、1130本にのぼる。

 分割・民営化という時の政府の政策の下で引き起こされた採用差別事件は政府の責任で解決されなければならない。
 日本労働弁護団は、「鉄建公団訴訟」の控訴審(東京高裁第17民事部)で、南裁判長が、解決に向けて当事者の話し合いを提案したことにも鑑み、政府と支援機構に対し、誠実な交渉によって、一日も早く正義と道理に適った全面解決を図ることを強く求めるものである。

2008年11月15日

日本労働弁護団 第52回全国総会